野球

メジャーリーグの敏腕エージェントが教えてくれた「一流の気遣い」

ベースボールでビジネスがわかる⑧
長谷川 滋利 プロフィール

日本人選手から相談があったら、こう答える

こうした理由から、僕はメジャーに興味のある日本人選手が相談に来た時、まず「いま日本でどれくらいもらっていて、こっちで最初のシーズンの年俸はいくらくらいを希望しているの? まずは控えでもいいから有名チームに行きたいのか、あるいは弱くてもいいからレギュラーで試合に出たいのか」という具体的なイメージを聞きます。その返答によって紹介できるエージェントも変わってきますからね。

僕の例を出すと、最初はクラヴィンにお願いしていてエンゼルスに入った。その後マリナーズに移籍して、セットアップとしてある程度、結果を出してオールスターにも出た。こうなると状況が変わってきます。

クラヴィンは優秀でしたし、ええヤツだったのでブレーンのひとりとして近くにいて欲しかったのですが、オールスター選手を扱うとなると、マーケットはローカルではなく全米になってしまうんですよね。全30球団の話を聞くためには野球専門にやっている大きな会社――僕はこの時、オクタゴンを選んだんですけど、そういう実績とネットワークがどうしても必要になってきます。

 

もう10年以上経ったので書いてもいいと思いますが、この時は確か7、8球団から話がありました。トロント(ブルージェイズ)は「シーズンを通してクローザーを任せたい」というオファーでしたし、ヤンキースからは「3ミリオン×3でどうだろう。ブルペンに入ってセットアップの前のロングリリーフをやってもらいたい」という300万ドル3年契約、総額10億円の大型契約の提案もありました。

エージェントという存在も一因ですが、メジャーのオファーはいつも具体的です。余談ですが、引退してからキャッシュマン(ヤンキースGM)に会ったとき、「お前が我々のオファーを蹴ったのは忘れないぜ」と言って笑ってました。

そうした情報をすべてもらって僕が出した結論は、「それらのオファー、特にニューヨークからのものをうまく使って、シアトルとまた契約してくれ」でした。ニューヨーク行きも頭をよぎりましたが、シアトルの街も好きでしたし、家族もいましたから。

紆余曲折の末、長谷川氏はマリナーズへ

あと、マリナーズの筆頭株主は任天堂でしたから「日本人のオレが日系企業の球団を出ていって、もしそのチームで活躍したら、球団もオレもイメージ悪くなるかもな」という総合的な判断でした。

機会があればこれのあたりの野球人生の分岐点については詳しく書きたいのですが、とにかくそうオクタゴンにお願いした結果、シアトルとは2年でしたが、1年単位で考えるとヤンキースのオファーよりもいい条件で再契約できました。僕のキャリアの中で正しくエージェントを使って契約を結んだ好例だと思っています。