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大統領選

ヒラリーが抱える「もう一つの選挙戦」真の勝敗は連邦議会選で決まる

エレクション・デイ直前レポート

「大統領選挙」に隠れているが…

ドナルド・トランプとヒラリー・クリントンの支持率は「再捜査」問題で縮まっている。これが「もうひとつの選挙戦」に悪影響を与えれば致命傷だ。「もうひとつの選挙戦」とは連邦議会選挙、とりわけ上院選挙だ。

大統領選挙に勝利しても、議会選挙で民主党が勝てなければ、就任初日からヒラリー政権は「レームダック」政権になってしまう可能性がある。

上院選では、あの「負けたはずの男」、共和党の期待の星マルコ・ルビオも静かに復活中だ。「大統領選に敗退したら公職を去る」との約束を撤回。フロリダで再選に王手をかけている。

「もうひとつの」選挙の意味と動向を解説する。

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偶数年の11月第1月曜日の翌日の火曜日は「エレクション・デイ(Election Day)」と呼ばれる。4年に1回オリンピック年に大統領選挙が行われ、そうでない間の年を中間選挙という。

しかし、「大統領選投票日」ではなく、あくまで「エレクション・デイ」なのは、同日多数の選挙が行われるからだ。

たとえば、連邦議会選挙である。下院は2年ごとに改選なので全議席、上院も3分の1の議席が改選される。大統領選挙と同じ投票所で、同じ投票用紙(画面)で行われる。

日本でいえば、衆院選と同時に行われる最高裁判所裁判官の国民審査に似た「セット」感だが、有権者の関心事の比重からすると似て非なるものだ。

「国王」と「首相」を兼ねたような人物を選びながら、片方の院の全議席、もう片方の3分の1を改選する方式で「衆参同一選」をやっているようなものだといえば、このアメリカの「選挙の日」のインパクトをおわかりいただけるだろう。

大統領選挙の投票率を左右する

選挙直前でCNNなどの全国メディアだけを見ると大統領選挙一色だ。だが、この時期、アメリカ観光や出張のついでに大統領選挙の雰囲気でも味わえれば、という方は要注意である。オハイオ、フロリダといった「激戦州」とそれ以外の州では事情が異なるからだ。

民主党、共和党のどちらかが圧倒的に強い州に行くと、大統領選挙のCMはあまり流れていない。大半の非激戦州は、州知事選、上院選、州議会選、市議選などのローカル選挙のヤードサイン(庭に立てる紙の立て札)であふえかえっている。ニュースも地元の選挙戦ばかり。電話や戸別訪問も地元選挙の呼びかけだ。

投票所に行く「気力」、すなわち投票率は、各州・各選挙区の地方選挙の盛り上がりに左右される。地方選挙に行き、(その州ではどうせ予定調和だったりする)大統領選挙にも「ついでに」投票するという感覚の有権者は少なくない。

大統領候補2人の競争を見る「全国支持率」の何ポイント・リードというのは、指標としては参考程度の意味合いしかない。

州ごとにまず総取りで勝敗を決めてからの選挙人の「足し算」においては、各州の議会選の接戦度などが投票率にリアルな影響を持つ。「大統領選挙だけのため」に選挙に行く人は、党派的な人にはあまりいないからだ。

もし上院で多数派をとれなかったら?

今回、3つの理由で連邦議会選挙、特に多数派逆転の可能性がある上院選が注目だ。

 

1つは、ヒラリー政権が実現したとしても、その行方を握るのは連邦議会選挙の勝敗だからだ。アメリカの大統領の立法権限は極めて限られている。大統領側の政党が議会で多数派を握ってなければ、野心的な法案は何も通らない。

振り返れば、オバマ大統領の大型景気刺激策、医療保険改革法など目玉の立法成果は、すべて1期目の最初の2年間だけ。その時期だけ民主党が上下両院で多数党だったからだ。

2010年の中間選挙で民主党は大敗し、下院で少数党に転落。ティーパーティの台頭もあって、「片肺飛行」のオバマ政権は立法面で立ち往生した。さらに民主党は2014年中間選挙で、上院も喪失。オバマ政権2期目の目玉法案「銃規制」「移民改革」は実現できなかった。

このことが何を意味するか。民主党は最低、片方の院で多数派に返り咲かないと、ヒラリー政権は初日から立法面で完全に立ち往生する。いきなり「レームダック」になる。