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破綻国家にたかる訴訟型「ハイエナ」ファンドのエグすぎる手口

狙われたら骨の髄までしゃぶられる

米共和党のキングメーカー

米大統領選が刻一刻と近づいているが、「米共和党のキングメーカー」の異名をとるヘッジファンドのCEOが、今年、アルゼンチン政府との世紀の金融バトルを制したことは日本ではほとんど報じられていない。

この人物は、米大手ヘッジファンド、エリオット・マネジメントの創業者兼CEOのポール・シンガー氏(72)である。

ポール・シンガー氏〔PHOTO〕gettyimages

ニューヨーク生まれのユダヤ人で、ハーバード・ロースクールを卒業後、準大手投資銀行DLJ(Donaldson, Lufkin & Jenrette )の不動産部門の社内弁護士として働いたあと、30代前半で自分のヘッジファンドを旗揚げした。

Forbes誌の推定で個人資産は22億ドル(約2300億円)。息子がゲイで、同性婚法成立運動にも力を注いできた。

また共和党に対する大口献金者で、ジョージ・W・ブッシュ、ルドルフ・ジュリアーニ(元ニューヨーク市長)、ミット・ロムニーなどを支援し、ヘッジファンド業界、イスラエル、LGBT(性的少数者)などの擁護のため、強力なロビー活動も行っている。

 

ターゲットは破綻国家

エリオット・マネジメントは不良債権投資に強いヘッジファンドで、法廷闘争を得意としている。

ソブリン(国家)債務への投資では、破綻した国家の債務を額面の5%とか10%といった二束三文で買い、額面だけでなく金利やペナルティを含めた全額の支払いを求めて世界中の裁判所で訴訟を起こす。

そして勝訴判決をとると、債務国のタンカー、外貨資産、航空機、果ては人口衛星打ち上げ契約まで差し押さえ、投資額の10倍から数十倍のリターンを上げるのだ。

アルゼンチン政府との世紀のバトル

アルゼンチンがデフォルトしたのは2001年である。

エリオット・マネジメントは傘下のNML Capital Limited(以下NMLと略)を通じて、額面6億1700万ドルのアルゼンチン国債を額面の3割以下の価格(推定)で買い集めた。

同国政府は2005年と2010年に債権者に対して一方的な債務再編を通告し、それを受け入れた約92%の投資家の債権を7割以上カットした。

しかし、NMLはホールドアウト(交渉拒否)し、金利やペナルティを含む全額の支払いを求めて、ニューヨーク州南部連邦地裁に提訴した。

一方、故・ネストル・キルチネル大統領(在任2003~2007年)と、キルチネルの妻、クリスチーナ・フェルナンデス・デ・キルチネル大統領(在任2007~2015年)はNMLを始めとするホールドアウト債権者との交渉を断固拒否し、法廷内外で激しい争いが繰り広げられた。

キルチネル・フェルナンデス夫妻〔PHOTO〕gettyimages

訴訟は米最高裁までもつれ込んだが、一審、二審で敗訴したアルゼンチン政府の上訴を2014年に米最高裁が棄却したことで、NMLの勝利が確定した。

この間、NMLは下級審(一、二審)の勝訴判決にもとづいて2014年にアルゼンチン海軍の練習船をガーナ沖で差し押さえたり、キルチネル・フェルナンデス夫妻が地元の建設会社社長と結託して行った汚職により6500万ドルの国家資産が米ネバダ州の123のペーパーカンパニーに隠匿されているとして、ラスベガスの連邦地裁に情報開示と差し押さえを求めて提訴したりした(相手は「パナマ文書」のモサック・フォンセカ法律事務所の現地会社だった)。

また、アルゼンチン政府が結んだ2基の人工衛星打ち上げ契約を差し押さえようとして、ロサンゼルスの連邦地裁に提訴したり、ロビイストを雇って米国とアルゼンチンで激しいロビイング活動を行ったりもした。同社が提起した訴訟や申し立ては数十に上ると見られる。