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過当競争で「悪徳歯科医」が急増中!金儲けのために歯を削る医者

一度抜いたら、二度と生えてこない

普通の医療以上に悪徳な治療が横行しているのが、歯科の世界だ。歯科医の数が多すぎて過当競争になっている構造問題もあり、自由診療のカネ儲け主義が跋扈している。あなたの健康を守るために知っておきたいこと。

 

歯医者はコンビニより多い

「5年前に都内の歯科クリニックで3本のインプラント治療をしました。1本50万円で、計150万円だった。しかし、治療直後から噛むと歯茎が痛むんです。以来、痛みを感じない日はなかった。なぜあんな歯医者に行ってしまったのか、ずっと後悔しています」

こう語るのは東京に住む平井澄雄さん(仮名、64歳)。平井さんはインプラントにしようか入れ歯にしようか迷っていた時期に、インターネットでインプラント治療の無料説明会があることを知り、ものは試しと出かけて行った。

「ホテルで開かれた説明会には50人ほどの人が集まっていました。

マイクを握った歯科医が、『入れ歯より最初からインプラントを入れたほうが、長期的にみればコストが安くなる。私の病院には全国から患者が集まってくる。これまで経験したインプラントの症例数は日本でもトップクラスで、失敗は一度もない』と滔々と語るのです」(平井さん)

この歯科医は自信たっぷりに次のように述べたという。

「インプラントは1本10万円くらいでやるところもあるが、安かろう悪かろうだ。無菌室で手術しないと危ないから、そうすると最低1本50万円以上はする。大学病院の歯科も信頼できない。担当が次々変わるので、責任感がない。うちはインプラントに特化しているから絶対安心です」

最後にその歯科医の書いたインプラント治療に関する本が配られ、説明会は幕を閉じた。家に帰って本を読んだ平井さんは、結局入れ歯でなくインプラントを選んだ。

「10年保証もあるということで手術を受けました。『振り込みがなければ治療はしない』と言われたので、いろいろ工面して3回に分けて振り込みました。その間に、『早く振り込んでくれ、あんただけの歯医者じゃなくて、他にも患者が待っている』と急かされました」

治療は7ヵ月にわたった。だが最後の治療が済んだ直後から、歯茎の痛みに悩まされるようになった。噛み合わせに問題が生じていると感じた平井さんは、その歯医者に相談した。

「噛み合わせが変だと訴えると、『これで合っている。私は数万本のインプラント治療をやってきて、一度も失敗していない。感覚の問題だから、そんなに変だと思うなら、精神科に行って診てもらえ』とまで言われました。10年保証だと言われていたのに、噛み合わせが悪くて痛むというのは保証の対象にならないそうです。その後何度か受診して、また10万円くらい取られました」

実は、平井さんのような歯医者に関するトラブルは珍しくない。その根底には日本における歯科医療の問題が横たわっている。何度通ってもなかなか治療が終わらない。すぐに詰め物が取れてまた入れ直し、そのたびに高額な治療費を請求される。痛くもない歯も一緒に抜かれた—このような首を傾げざるをえない治療が、日本全国いたるところでくり広げられているのだ。林歯科/歯科医療研究センターの林晋哉氏が語る。

「歯科医院の数はいまや7万件近くあり、コンビニの数(約5万件)より多い。歯科医はまさに今、過当競争の時代にあり、経営が悪化して倒産する歯科医院も少なくない。このような状況から、不要であったり、危険性が高い状況で、高額な自費治療を行う歯科医が出てきているのです」

歯科医師の数も右肩上がりで増加してきた。'82年には5万8362人だったのが、'14年には10万3972人と30年で倍近くに増えている。それでも患者の数が増えていれば問題ないが、現実はむしろ逆だ。特に若年層は予防治療への意識の高まりもあって、患者一人あたりの虫歯の本数はこの30年で約3分の1に減っており、歯科に関する医療費の総額も横ばいを続けている。