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絶対ハマる!ひとり飲みにちょうどいい「老舗居酒屋」ベスト10

倉本康子と吉原信成が勝手にランキング

『おんな酒場放浪記』でおなじみの倉本康子さんと、『おつまみ横丁』や『フライパンひとつで魚料理』などの飲食系実用書を多数手がける編集工房桃庵・代表の吉原信成さん。食好き、お酒好きのお二人が、ひとり飲みにちょうどいい、老舗の居酒屋を勝手にランキング!

ひとり飲みの醍醐味

吉原 ひとり飲みは全くしないという人もいますが、私は若い頃からひとり飲みが大好き。倉本さんはいつ頃からひとり飲みを始めたのですか。

倉本 20歳のアルコール解禁と同時にひとり飲みデビューしました。もともと居酒屋さんの雰囲気が好きというのもありますが、特に老舗の居酒屋は常連さんが気さくに話しかけてくれるのが嬉しくて、よく通うようになりました。

吉原 いいお店って、従業員さんも含め、お客さんの雰囲気も良いですよね。老舗はそういう店が多い。

倉本 仕事終わりによく立ち寄るのは、富士屋本店(渋谷)です。創業130年の老舗。ビル地下の広いフロアが立ち飲みのお客さんでいっぱい。初めて行ったとき、「渋谷にこんなレトロな空間があったんだ!」って、感動しました。

吉原 階段を下りた先は別世界ですよね。富士屋本店のような賑わっている店だと酔っ払った人たちの会話が聞こえてきて面白い。上司が部下を説教していたかと思えば最後は慰めていたり、同僚同士が喧嘩して仲直りする一部始終を見られたり。

 

お店の人との相性を見極めよう

倉本 酒場では色んな人間ドラマが繰り広げられています。それを横目に、雑多ななかでひとりポツンと飲むのも、案外良いものです。

老舗の居酒屋は、常連さん専用の席が決まっていたり、独自の注文の仕方があったりと、「暗黙のルール」が存在するお店もあります。

吉原 私がよく行くのは、思い出横丁のささもと(新宿)。ここは、メニュー表がないので、最初は戸惑うかもしれません。焼き物によって特別な呼び名があったりします。あとはキャベツの煮込み串を注文すると、「帰ります」の合図になっていて、席を立たなければならないというルールがあること。

見るからにおいしそうなのでうっかり途中で注文するお客さんもいますが、気をつけないといけません。今は通い慣れましたが、最初の頃は常連さんにこっそりと注文の仕方やタイミングを教えてもらいました。

倉本 すっかり「聖地」として知られてしまった宇ち多″(立石)ですが、やっぱり一見さんには少しハードルが高いかもしれません。独特のピリっとした緊張感のあるお店です。

吉原 宇ち多″はネット上に「入店時のルール」がまとめられているほど。注文の仕方やマナーがやや難しいですが、毎回行列のできる店ですね。

こうしたルールがあると聞くと敷居が高そうに感じて敬遠しがちになるかも知れませんが、やっぱりそこでしか味わえない料理や酒、唯一無二の雰囲気があるから通いたくなる。

倉本 徐々にお店の雰囲気に溶け込んでいく楽しみもありますしね。

吉原 最初はルールが全く分からなくても、何度も通ううちにいつのまにか自分が教える側に回っているから不思議です。そのうち、店主から「吉原さん、混んできたから席をズレてくれる?」なんて常連扱いされると嬉しいものですよね。

倉本 とはいえ、一見さんでも気兼ねなく入れる老舗も沢山あります。山城屋酒場(南砂町)は、家族経営で女将さんが切り盛りしているのですが、初来店でも馴染みのお客さんかのように出迎えてくれました。

正直ビヤホール(浅草)も、女将さんが素敵なお店です。アサヒビールのお膝元の浅草ですが、女将さんの好みでサッポロビールが置いてある。銅製のビールサーバーから、薄張りのグラスに注がれるビールは格別でした。それ以上に、凛としていて、かつ気さくな女将さんの人柄に惚れてしまいました。

吉原 ひとり飲みだからこそ、お店の人の人柄って大事ですよね。

モツ煮100円!価格が昭和のままの店も

倉本 どんなに安くて美味しいお店でも、「人」が合わないなと思ったら通わなくなりますね。そういう意味で、ひとり飲みは自分のペースで動けるから気楽です。もうこの店で飲みたくないかなと思ったら、すぐに切り上げられるし(笑)。ただ、老舗は長く続いているだけあって、お店の人も魅力的なことが多いと思います。

吉原 老舗居酒屋は安さも魅力の一つです。価格設定が昭和のままのようなお店もありますよね。

倉本 あまりの安さに衝撃だったのが、牛太郎(武蔵小山)です。煮込みが100円台の値段で、そのほかのメニューもとにかく安い。趣のある老舗らしい外観で、店内も独特の雰囲気があります。

吉原 あそこには私も何度か行ってみましたが、満席で入れないことも多いです。

倉本 私は早めの時間から行くのですが、あっという間に満席になっちゃいますね。あまり混んでない昼間から飲めばお店に入れないなんてことはないし、何より酔っ払っても、まだこんな時間だって安心できるのがいい。

吉原 昼酒ならふくろ(池袋)もいいですよ。3階建てのビルが丸ごと飲み屋で、キビキビした女性スタッフの対応が気持ち良い。ひとり客が大半なので、気軽に入れますしね。

倉本 たつや(恵比寿)も朝8時から営業していますね。

吉原 開店も早いですが閉店も早朝5時までと営業時間が長い。名物の焼き鳥も美味しいですが、ここは黒ホッピー発祥の店でもあるんです。

倉本 それは知らなかった。お店ごとに歴史や特色があって、色んな楽しみ方があるものですね。

吉原 それが老舗居酒屋の魅力です。通い続ければきっと新しい発見があるはずです。

倉本康子(くらもと・やすこ)
'74年東京都出身。モデルやデザイナーとしてマルチに活躍。自他ともに認める酒好き。『おんな酒場放浪記』(BS‐TBS)にレギュラー出演中
吉原信成(よしはら・のぶしげ)
'62年東京都出身。飲食系実用書を多数手がける編集工房桃庵・代表。著書に『カクテル完全ガイド』(池田書店)などがある

週刊現代』2016年11月12日号より