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大英帝国の歴史に照らせば、EU離脱は「創造的破壊」の始まりだ

悲観論が強まっているが…

イギリスの欧州連合(EU)離脱は何をもたらすのか。

6月の国民投票からほぼ4ヵ月。イギリスは単一市場から完全撤退するとの見方が強まり、経済的な視点から悲観論が強まっている。

それでも、筆者には、イギリスのEU離脱はコントロール不能となったグローバリゼーションに軌道修正を迫る「創造的破壊」となる可能性を秘めているように思えてならない。

 

ハードか、ソフトか

まずは、離脱をめぐる最新の動きを押さえておこう。

メイ英首相は10月2日、保守党の年次党大会で来年3月までにEU基本条約(リスボン条約)50条に基づき離脱を通告すると表明した。

通告後、両者は2年を目処に交渉に入るが、離脱(Brexit、ブレグジット)をめぐる最大の焦点は、イギリスが「移民管理」と「単一市場へのアクセス」のどちらを優先するかに絞られてきた。

離脱派にとっては、移民の入国を制限する権限を取り戻すことは譲れない一線である。なぜなら、国民投票が離脱の結果となったのは、EUが2000年代に入って東欧へ拡大し、イギリスへの欧州労働移民が2015年までの11年間で300万人へと3倍に急増し、国民の不満が高まったからという経緯があるからだ。

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一方で、EUはイギリスに対し、人、物、カネ、サービスの「4つの移動の自由」という欧州統合の基本理念で譲歩する姿勢は一切見せていない。

このため、イギリス国内では、移民管理が認められないなら単一市場から撤退すべきだという「ハード・ブレグジット(強硬離脱)派」と、単一市場に残ることを最優先すべきだとする「ソフト・ブレグジット(穏健離脱)派」の見解が鋭く対立しているのである。

国民投票で問われたのは離脱の是非であり、離脱の在り方までは聞いていない。離脱派はまとまりのある組織ではなかったため、離脱への青写真も示されていない。

メイ首相は党大会の演説でこの点に触れ、「我々は移民管理について自分たちで決める。移民管理を再び放棄するためにEUを離脱するわけではない」と述べ、移民管理を優先する姿勢を初めて明確にした。

これに呼応するかのように、トゥスクEU大統領は10月13日、「ハード・ブレグジットに代わる唯一の現実的な道は残留しかない」と語り、「移民管理」と「単一市場」のどちらを取るのか、イギリスに二者択一を迫った。

離脱交渉の行方をめぐっては、EU側が“超高額の慰謝料”を突きつけ、イギリスが離脱できない状況がずるずると続くというような予測も出ている。しかし、現状を見る限り、双方の交渉姿勢は単一市場からの撤退へ収斂しつつあると言えるだろう。

二つのシナリオの損得勘定

ここで簡単に、イギリスの選択肢が単一市場、関税同盟からの完全撤退に絞られつつある事情を説明しておきたい。

EUの単一市場と関税同盟は完全には一致せず、関税同盟には非EU加盟国のトルコなどが参加している。そのどちらかに残ろうとする場合、損得勘定はどうなるのかということである。

シナリオ①「EUから離脱して単一市場に残る」 → 単一市場のルールは適用されるが、新たなルール作りには参加できなくなる。ノルウェーなど非EU加盟国で単一市場に参加する国の例に従えば、EUへの拠出金を支払い続け、労働者の自由な移動も受け入れなければならない → 離脱の意味がない

シナリオ②「単一市場からは撤退するが、関税同盟には残る」 → EU域外の国々との自由貿易協定(FTA)締結などイギリス独自の通商政策が取りにくくなる → 離脱のメリットがほとんどない

こう見ると、トゥスクEU大統領が言うように、イギリスにはEUを離脱して単一市場からも撤退するか、その撤退を望まないなら、考え直してEUに残留するか、そのどちらかの道しかないように思えてくるだろう。