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ビールの一気飲みを広めたのは、「あの偉人」だってご存じですか?
ドイツ愛が凄すぎて…

留学先での飲みっぷりに驚愕

居酒屋の一杯目は「とりあえず、ビール」。大きく分けると「エール」と「ラガー」の2種類があり、英国発祥のエールは2000年余りの歴史を持つ。一方、日本で最も多く飲まれているラガーが、500年前にドイツで生まれた新参のビールだということはあまり知られていない。

そもそも、ビールが伝来したのは幕末期のこと。明治政府は政治経済から生活文化まで英国をお手本としていた。ビールも同様で、当時アジアで絶大な人気を誇っていた英国・バス社のバス・ペール・エールが威風堂々と上陸する。まさに「ビールの黒船」だ。

しかし、当時の大英帝国は歴史上最も繁栄した時代で、日本の実情とあまりにかけはなれていた。そのため明治政府は農業国から成り上がったドイツに共感と親近感を持つようになる。

なかでも際だっていたのが乃木希典のドイツ贔屓だった。39歳で訪独し、翌年に帰国するや「ドイツかぶれ」状態に。

そんな乃木が盛んにやった「プロシア陸軍流のビールの一気飲み」はとんでもないインパクトだったと、一部始終が記録に残されている。

 

「(前略)乃木さんの簡単な歓迎の挨拶が終ると、乃木さんはいきなり『ビール注げ!』と号令をかけた。今まで直立不動の姿勢で立っていた兵卒がさっと一斉にビール瓶を取り上げて、グラスに注いだ。その動作が終ると、乃木さんが『ビール飲め!』の号令をかけた。

将校連はグラスを一斉に掴み一気にビールを飲み、グラスをテーブルに置いた。するとたちまち『ビール注げ!』という号令が響き渡った。兵卒がまたビールを注ぐ。『ビール飲め!』の号令で、また将校達はビールを一気に飲む―」

続々と落伍者が出たが、それでも乃木は「ビール注げ!」、「ビール飲め!」を繰り返す。十何回目かの最後まで頑張ったのは当時の文部大臣・樺山資紀と乃木だけだったとか。

決してマネしないでいただきたいが、乃木のドイツ愛、ラガー・ビール愛が生んだのが「一気飲み」のルーツである。(安)

『週刊現代』2016年11月5日号より