綿矢りさインタビュー~三姉妹の日常を通じて描く「京都の現在地」

これまで書けなかった故郷を書いた

京都そのものをテーマに

―『手のひらの京』は京都に暮らす三姉妹の心の動きを、四季折々の風景を紹介しながら描いた長編小説です。今回はなぜ京都を舞台にされたのでしょうか。

京都は私の生まれ育った場所で、ずっと書いてみたい気持ちはありました。でも、これまでの小説では舞台にする必然性がなくて。京都という土地自体をテーマにすれば書けるんじゃないかと思ったんです。

私は大学進学を機に東京へ出て、一度京都に戻り、今はまた東京に住んでいます。別の街で暮らして初めて気づきましたが、京都は時間の流れがゆっくりなんですよね。

観光や伝統工芸で食べている人が多いから、人も土地も意識的に古めかしくいようとするところがある気がします。昔のものを守りつつ、抜け目なく現在を生きている。ほかにも自然の豊かさとか、子供のころはわからなかった京都の独特な面が見えてきたんです。

 

―おっとりしている長女の綾香、華やかで異性にモテる次女の羽依、ストイックで我が道を行く三女の凜。奥沢家の三姉妹も魅力的です。

両親との仲も良く、幸せに育ってきた人たちです。私が今まで書いてきた荒んだ主人公とは全然違いますね(笑)。

三姉妹の話になったのは、異なる年代の女の人が京都のいろんなスポットにいるところを書きたかったからです。私には弟しかいないので、姉妹に対する憧れもありました。それぞれ悩みを抱えているけど、1日の終わりには同じ家に帰ってくる感じがいいなと。

―綾香は30代になって結婚相手がいないことに焦りを感じていて、羽依は職場の人間関係でつまずき、凜は東京の会社に就職したいけど両親に打ち明けられない。特に羽依が「いけず」な会社の先輩にいじめられるくだりはリアルです。

「ぶぶ漬けどうですか」と言われたら、実は「帰ってほしい」という意味だ、みたいないけずはわかりやすいですけど、最近は少し変わってきている感じがします。私が思う進化形のいけずを書いてみたつもりです。

ただ羽依は言われっぱなしじゃなくて、ちゃんといけずに反抗できる人にしました。彼女のことを気にかけてくださる読者は多いですね。「次はいい男の人に出会ってほしい」とか。

―女子社員の憧れの的になっている前原という男のキャラクターは強烈でした。人あたりはいいけど、傲慢で酷薄な顔を隠している。彼と付き合った羽依がのちに語るダメな男の見分け方も説得力があります。

前原のようにプライドが高く、恋人など限られた人の前でしか見せない危険な側面を持っている人はいると思います。怖いですけど、彼の行動を描写するのはとても楽しかったですね。いい人よりも悪い人を書くときのほうが、個性のあぶり出される瞬間がたくさんあって好きなんです。

私は太宰治が好きなこともあって、男の人のダメなところを見つけると面白くなってしまうんですよ。でも周りにはダメ男をきちんと判断して避けられる女の人が多くて。ダメ男センサーが発達している人はいいなと思って、羽依が男の人の変なところを一刀両断する場面は書きました。