広島はなぜ「カープチャンネル」を開設しないのか?
ベースボールでビジネスがわかる⑦

盛況の日本シリーズをテレビ観戦した元メジャーリーガー・長谷川滋利さんの感想は「ビジネスチャンスがまだまだある」。野球中継が地上波から消えていく今こそ、コンテンツを売る好機だと長谷川さんは指摘する。

なんともったいない!

今季のプロ野球もいよいよフィナーレです。25年ぶりの悲願を達成した広島カープと、最大11.5ゲーム差を跳ね返した日本ハムの日本シリーズ。ゲームの質も高いですし、球場の雰囲気も良さそうですね。特に広島ファンで真っ赤に染まったMAZDA Zoom-Zoomスタジアムは圧巻でした。
 
その一方で、あの光景を見て僕が感じたのは、「ビジネスチャンス、ぎょうさんあるのにもったいないなあ」でした。日本シリーズというこれ以上ない魅力的なコンテンツを、もっとビジネスに生かす方法があるはずです。

せっかくですからカープを例に挙げさせてもらいます。まずは、放送権です。野球協約44条には「自由に許可する権利」が定められていますが、それによると主催試合放映権料は各球団が管理します。
 
今季のカープ主催ゲームは、全国放送のNHKとBS各局がチラホラあった程度で、あとは広島テレビや中国放送、広島ホームテレビ、テレビ新広島などの地元局がメインになっていました。それに加え、例えば中日戦はテレビ愛知に放映権を売るなど対戦相手によって分配しています。他にはCSやJ:COMなどの有料のケーブルテレビがありました。

契約の詳細などは分かりませんが、どれもいわゆる“バラ売り”で、「広島のホームゲーム全試合を生中継します」というチャンネルは存在しません。優勝決定戦を中継していたNHKの広島地区の視聴率は平均で60%、瞬間最大で71%と聞きました。これほどのモンスターコンテンツをほっておくのは、やはりもったいないですね。

例えば、ニューヨーク・ヤンキースには「YES」という専門チャンネルがあります。正しくはYankees Entertainment and Sportsで、これはヤンキースの全試合(一部、NBAのブルックリン・ネッツ)をほぼ独占中継しています。
 
シーズンのゲームはもちろん、球団公式ですから、ロッカーやダグアウト、時にはベンチの中や、練習場、オフショットまでカメラは入っていきます。そのインサイドストーリーであったり、独占インタビュー、密着ドキュメントなどのコンテンツなどが番組となって試合がない日も延々と流れている感じですね。

 

あとは過去の名場面やレジェンドのスーパープレーなども放送されます。これは、スタジアムなどで試合前に流されたりもします。実は番組の数そのものはそんなにたくさんあるわけではなく、再放送も多い。

それでも「このチャンネルつければヤンキースがらみの映像が流れる」というだけで、なんとなくテレビをつけるユーザーは多いですよね。「これ、この前、観たがな」と思いながらもやっぱりまた観てしまう。それは日本のファンも共通ではないでしょうか。

放映権が売れないのは、こういう時代ですから仕方ないと思い込んでしまいがちです。でも、実はそこにビジネスチャンスはある。まず球団は放映権を安値で売ってもいいから、どこかのチャンネルで中継をしてみてはどうでしょうか。2-3シーズンもあれば「やっぱり野球は面白いな」とファンは戻ってくると思います。
 
今のまま全国放送や地元局など、放映権が売れるところには売る一方で、「カープチャンネル」のような専門チャンネルを立ち上げる。専門チャンネルの設立と、放映権の一時的なダンピングを真剣に検討すべきではないでしょうか。