知的実用
山中伸弥教授の「人生を変えるプレゼン術」〜とにかくココを意識せよ
ノーベル賞のかげに「プレゼン」力あり
山中 伸弥

スライドは、文字でなく絵が主役

私は、スライドの発表は、紙芝居だと思っています。見せるのはあくまで「絵」であって、「文字」ではない。

今は紙芝居って本当に少なくなりましたが、子供は、まず絵を見て興味を持たないと、もう見てくれません。同じように、オーディエンスがスライドの絵を見て「何だ、何だ?」と思ったところで、その絵に合った話をするのがプレゼンテーションだと思うのです。

でも多くの場合、文字だけ羅列してあったり、一枚のスライドに図が10個ぐらい貼ってあったりして、一目どころか、よくよく見ても何が書かれているのかわからないものが多い。

パッと見たときにわかりにくいと、興味を持ってもらえない。みんな見なくなりますよね。いくら内容自体が良いものであったとしても、見てもらえなければ意味がないのです。逆説的に言えば、そうしたわかりにくいスライドにすることが、プレゼンを失敗するための一番の「良い」方法になるわけです。

大先生と言われる方の中にも、ものすごく複雑怪奇なスライドを使っておられることがあります。おそらく入れ込む内容に気をとられて、「どう見えるか」という点に気付いておられないのだと思います。

ですから、自分のスライドづくりの際には、自戒を込めてその点を常に心掛けるようにしています。

絵にしたことをしゃべる

スライドを使ったプレゼンテーションで、次に大切にしていることは、これも紙芝居と一緒で、絵に示したことをきちんと話す。 スライドに「描いてあることをしゃべる」ということです。

そして、「スライドにないことは、しゃべらない」。また、逆に「しゃべらないことは描かない」。

当たり前のことのようですが、絵に描いてないことを一生懸命しゃべったり、逆に絵に描いていることを説明しなかったりするプレゼンテーションが、案外多いのです。 

目から入ってくる情報と、耳から入ってくる情報が異なると、プレゼンを受けている側は、「今、何が説明されているのか?」とわからなくなって、頭の中が混乱してしまうものです。それならむしろ、絵なんかない方が良くなってしまう。

絵と言葉の一致。

この点を徹底するだけで、ずいぶんわかりやすい、伝わりやすいプレゼンになるはずです。

 

スライドは「連続性」を意識しろ

これも紙芝居のテクニックと同じなのですが、スライドの一枚一枚に「つながりをつくる」ことも重要です。

これは、アメリカの授業で指摘されたことです。

「こういう結果となった」だから「次にこういう実験をした」と、一枚ずつのスライドが「連続性」を持ったような説明の仕方をしろというのです。

確かに、こうした説明の仕方だと、聞き手は頭の中が整理しやすい。受けている説明をとても理解しやすいのです。

そして、このプレゼン方法を導入したことが、私自身の研究にも意外な効果をもたらしてくれました。

自分が今、取り組んでいる実験と、次にやるべき実験は何か。ふだんからそのことを意識する必要に迫られ、思考方法や実験手法を見直すことにつながったのです。

その結果、プレゼンだけでなく論文の書き方、研究方法まで変わり、その後の私の人生まで変えていくことになるのです。