医療・健康・食
有名医師が実名で語りあう「日本のタブー手術と薬の真実」
手術も薬も、本来アブないものなんです

なぜ無駄な薬が処方され続け、危ない手術がなくならないのか?『不要なクスリ 無用な手術』(講談社現代新書)を上梓する富家孝氏と、心臓外科のトップドクター南淵明宏氏が、医療界のタブーに切り込む。

薬は本来、危ないものです

南淵 週刊現代の一連の医療特集が、大きな反響を呼んでいます。他のメディアも追随していて、最近もラジオ番組で薬が多すぎたり、重複していたりする問題を取り上げていました。

富家 医療に対する不信感の高まりがあるのでしょう。

医療の現場では、一種のパニックも引き起こしています。記事を読んだ患者さんが「私が飲んでいる薬は危険ではないのか」と、医者に詰め寄ることが増えたようです。

南淵 これまで、日本人は「薬は本来、危ないものだ」という大前提をまったく意識してきませんでした。医者に言われたら、そのまま飲む。保険が効くから薬代も安く、財布も傷まない。だから、危険性や経済性を意識しないで適当に飲んでいる人が本当に多い。

そういう姿勢を問い直す意味で、週刊現代の特集には大きな意義があったと思います。

富家 その通りですね。薬を飲むにあたっては、まずは次の3つを認識すべきです。

(1)どんな薬にも副作用があること。(2)ほとんどの薬は病気の症状を緩和するもので、疾患そのものを治すものではないこと。そして、(3)製薬会社が薬を作って売るということは、慈善でもなんでもなく厳然たるビジネスだということです。

南淵 薬は副作用がほとんどない、便利なものと信じている人がいますからね。人間がこれまで体内に入れたことがないような化学物質を飲むわけですから、体調や脳の働きに影響するのは当たり前でしょう。

5種類以上も薬を飲んでいると、どんなに几帳面な人でも、たいてい飲み忘れが出てくるものです。「いつも赤い薬だけ余るんですけれど……」なんて言ってくる患者さんが、よくいますね。

富家 これだけ薬をたくさん飲んでいるのは日本人だけじゃないですか?

 

南淵 私が心臓手術をした患者さんたちの中には、アメリカやオーストラリアなど海外で生活している人がいますが、向こうで処方されている薬の種類はせいぜい1~2種類ですよ。

それが日本だと降圧剤、糖尿病の薬、血液をサラサラにする薬、コレステロールの薬、胃薬、睡眠薬に痛み止めとどんどん種類が増えていく。

処方箋の使われ方も違います。日本だと処方箋が出たら4日以内に薬局に持っていかないと無効になってしまう。しかし、海外だと同じ処方箋を何度も使えるから、生活習慣病の薬などをもらうためにくり返し受診する必要がない。しかも、その処方箋は他の国でも使える国際パスです。

患者を「収入源」にする医者

富家 私自身は、心臓の手術を2回もやっているので、降圧剤や血液サラサラの薬、そして糖尿病の薬は飲み続けていますが、そのような病気をしたことがない人が、ただ血圧が高いというだけで薬を飲み続ける意味があるのかは大いに疑問です。

そもそも年を取ったら誰でも血圧は上がるものです。私が若い頃は、患者の年齢に90を足した数ぐらいまでは、血圧は高くてもいいと教わりました。それが時代と共に、どんどん基準値が厳しくなってきた。私は昔の基準値くらいが適当だと思いますよ。

南淵 ほとんどの人が間違っているのは、高血圧自体がなにかの「病気」だと考えていることです。本当は、高血圧は血管が詰まっている、血管が硬くなっているという状態に引き起こされた二次的な「結果」なのです。

それを降圧剤で下げたところで、血管の状態がよくなるわけではない。病気の根本は放ったらかしにされているのです。

富家 生活習慣病というのは、病気というより老化現象なんですよ。

しかも本当に高齢者にとって怖いのは、高血圧や高血糖よりも低血圧や低血糖です。実は私も、今年の1月に低血糖で倒れかけました。風呂に入ろうとして、足に力が入らなくなったのです。そこで急いで簡易測定器で空腹時血糖値を測ったところ、35mg/dlと出ました。あきらかに低血糖です。そこであわててチョコレートやクッキー、焼きそばを食べて糖質を摂りました。

もし何もしなかったら、そのまま風呂で意識を失っていたかもしれません。

南淵 開業医にとって、生活習慣病の薬を飲んでいる患者は、定期的に受診してくれる収入源です。だからなかには、患者を「飼い殺し」にする悪い医者も出てくる。

このあいだも、「医者に狭心症だと言われ、10年薬を飲み続けている」という患者さんが来ました。その人が「先生、私は本当に狭心症なんでしょうか?」と聞くので、カテーテル検査をしたところ、どこも悪いところがない。結局その患者は、無駄な薬をずっと飲まされていたんです。

一方で、本当に病気の人も抱え込んでしまうケースもある。医者が「任せておきなさい」と自信満々に薬を出すので、それを信じた患者が薬だけを飲んでいて、手遅れになるわけです。

富家 そういう医者は、たいてい紹介状を書きたがりませんね。開業医は、自分の病院の患者が減ることをものすごく気にする人が多いですから。大学病院に紹介したら、もう患者が戻ってこないと思っている。

南淵 実際はそんなことはありませんよ。手術が終わったら、患者さんは街のクリニックに帰っていきます。

富家 病院経営の面から、一度来た患者は離したくない。悪質な開業医のなかには、患者さんから「紹介状を出してほしい」と言われても、「あなたの病気はうちでも治療できます。紹介状を持って大病院に行っても、やることは同じですよ」と言って引きとめようとする者もいます。

しかし、医者は患者に言われたら紹介状を書く義務があるんです。その際には、検査の結果をすべて添付する必要があります。それすら拒もうとする医者は信用できませんね。