巨大自動車企業の内幕を暴いた!?『トヨトミの野望』はヤバイ一冊

覆面作家・梶山三郎を直撃!

「このままではいずれ日本は沈没する。電機、機械が軒並みダウンしたいま、トヨトミが潰れたら日本は終わりです」

「トヨトミ自動車は狙い撃ちにされ崩壊に追い込まれるか、欧米メーカーに買収されるか、IT企業の傘下となるか……」

                  (『トヨトミの野望』作中より)

あまりに生々しい

<本当のことを伝えたかったら、小説を書くしかない>

ベストセラー『ホテル』(1965)の作者で、数多くの社会派作品を世に送り出した小説家アーサー・ヘイリーのこの言葉は、いまこそ見直されるべきだろう。

広告主や時の政権に配慮したメディアが、粉飾決算を「不適切な会計処理」、集団的自衛権を認める法律を「平和安全法制」という生ぬるいフレーズに言い換えてしまう昨今、報じられるニュースに、真実味、説得力を感じられないのは当然のことだ。

そんな中、まさにヘイリーの言葉を具現化するかのように、タブーに斬り込み、本当のことを伝えようとする小説が誕生した。

『トヨトミの野望』である。

 

著者の名前は、梶山三郎。プロフィールには「覆面作家」、とあるのみだ。その素性には後ほど迫るが、本書で梶山が取り上げるのは、日本の自動車産業の「これまで」と「いま」である。

世界一の売り上げ規模を誇る巨大自動車企業「トヨトミ」を舞台に、経理畑から叩き上げで社長に就任した武田剛平と、創業一族で社長の座を狙う豊臣統一(作品後半で社長に就任)という二人の登場人物の物語が展開する。

1995年、社長に就任した武田は、海外市場への進出と技術革新に資源を投入し、トヨトミを世界一の自動車メーカーに成長させる。そして、創業以来続く豊臣家支配に終止符を打つべく、ある謀略に走る。

この目論見に気づいた創業一族は、武田に引導を渡し、創業者の孫・豊臣統一をトップに就かせようと画策する。二つの勢力の思惑が渦巻くその裏で、トヨトミ社はリーマンショック、アメリカでのリコール運動という、創業以来の危機を迎える。

「トヨトミ自動車は狙い撃ちにされ崩壊に追い込まれるか、欧米メーカーに買収されるか、IT企業の傘下となるか……」

「いいかげんになさらないと、そのうち殺されますよ、豊臣家に」
「黙れっ、企業は決算こそがすべてなんだよっ、赤字なんかに転落したらおわりだぞっ、きさま責任とれるのかっ」

危機を面前にして飛び交う、激しく、そして過激な言葉の数々。はたして、トヨトミを待つのは天国か地獄か――。

これは小説なのか、ノンフィクションなのか…。答えは各々が探すしかない(amazonはこちらから

「書き下ろしのフィクション」と付記されてはいるものの、トヨトミ自動車が直面する問題は、極めて現実的だ。いや、そもそも愛知県に本社を構える「トヨトミ自動車」と聞けば、おのずと「あの企業」が浮かんでくる。

本書はフィクションなのか、それとも……。すでに「その企業」の内部では、「これはウチがモデルじゃないのか!」と騒然となり、問題作として受け止められているという。覆面作家・梶山三郎に接触し、話を聞いた。

「まず、世間を騒がせるような小説を書いておきながら、その素性を明かしていないことをお詫びいたします。

私の本業は、記者です。特定の業界に限らず、自動車も含めて幅広く経済問題を取材しています。ジャーナリストとして活動するときは本名を名乗っていますが、今回はあくまでフィクションということで、ペンネームである梶山三郎名義で執筆いたしました。

おそらく本書をお読みになられた方は、トヨトミ自動車を『あの企業』だと思われるでしょう。ご想像されるのは自由ですが、トヨトミはあくまでも空想上の企業です。

もちろん、日本の自動車メーカーのトップである企業のことも大いに参考にしましたが、他の自動車メーカーの内情も取材したうえで、それらを混ぜ合わせて書いています。特定の一社をモデルにした、ということはありません」

本書の冒頭では、暴力団のフロント企業に創業家一族が「拉致」されるシーンが登場する。また、アメリカで活躍する堤という社員が、有名女優と浮名を流したといった記述もある。本作を読んだ読者は『フィクションにしては、あまりに生々しい描写が多い』との感想をいだくだろう。はたして、それらもすべてフィクションなのか。