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60すぎたら「やってはいけない手術」「飲んではいけない薬」

第1回 目の病気

病気が見つかって手術をするべきか、薬を飲むべきか悩む患者にとって、本当に有用な情報をお届けする医療特集の新シリーズ。第1回は白内障、緑内障、加齢黄斑変性など「目の病気」に注目する。

視力が落ちると認知症が進む

「目の治療に来られる患者さんの中には片目がほとんど失明しているのに、それに気が付いていない方がいます。人間は両目があるので、片方の目で悪いほうの目の不足を補ってしまうのです。

とりわけ働き盛りの人だと、目の病気は命に直結するものではないと軽く考えがちです。しかし、高齢になると、新聞や本を読んだり、テレビを見たり、家族の顔を見るといった楽しみの多くが視覚に関係していると気付くはずです。だから、きちんと目を守らないと後悔しますよ」

こう語るのは彩の国東大宮メディカルセンター眼科部長の平松類氏。誰しも目が大切だということはわかっているが、視力が落ちてきても「歳だから仕方がない」と考え、放ったらかしにしてしまう人は意外に多い。

 

しかし、視力の低下は思わぬ「副作用」を伴う場合がある。Rサイエンスクリニック広尾副院長の林田康隆氏が語る。

「白内障による視力の低下と認知症の進行に大きな関係があることがわかってきました。奈良県立医科大学や奈良県総合医療センター眼科の研究者たちの調査によると、白内障の手術を行うことで、軽度の認知機能の低下が緩和される可能性があると判明したのです。

そもそも脳に入ってくる五感情報のうち、視覚情報は全体の8割以上とも言われ、とびぬけて多い。視力が低下して目の機能が落ちれば、脳への刺激は激減するのです。逆に白内障の手術を受けて、劇的に視力が回復すれば、目だけでなく脳までも大幅に回復することもありえます」

このように、目の状態は生活の質を大きく左右する。それだけに、衰えてきた視力をどう回復させるか、手術や治療の方法を選ぶのには十分に注意が必要だ。白内障、緑内障、加齢黄斑変性など、高齢者のかかりやすい目の病気別に、どのような手術が有効か、あるいは危険なのかを見て行こう。

〔PHOTO〕gettyimages

まずは最もメジャーな病気である白内障。

「高齢になればなるほど白内障になるリスクは高まります。よく目をこする人、戸外で活動することが多く紫外線をよく浴びている人などのリスクが高い。またステロイドが含まれた薬を飲み続けている人、食生活が偏って極端に太り過ぎや痩せ過ぎの人にも多い病気ですね」(前出の平松氏)

白内障は目のレンズに当たる水晶体という部分が白く濁ってしまう病気だ。紫外線や薬の飲みすぎ、偏った栄養バランスなどが原因で、水晶体にダメージが蓄積した結果、白く濁る。

これを治療する手術は、濁ったレンズを除去して、人工の新しいレンズと入れ替えるというもの。目の手術というと、抵抗のある人も多いだろうが、白内障の場合、ハードルは高くない。医療法人弘鳳会おぐりクリニック理事長の小栗章弘氏が解説する。

「実は白内障、緑内障、黄斑変性症のなかで、手術によって機能回復を望めるのは白内障だけです。9割以上の確率で視力回復ができますし、合併症もごくわずかです。

眼内炎が数千人に1人くらいの割合で起こる確率がありますが、白内障の手術で失明するという例は、21世紀に入ってからは私の知る範囲で聞いたことがありません。白内障の手術は年間100万件以上行われていますが、あらゆる外科手術の中でも最もリスクの低いものの部類に入るでしょう」

このように目の病気の手術の中で白内障は、最も安全に視力回復が望めるものだ。ただし、リスクがゼロの外科手術はありえない。

「外科手術がうまく行われたとしても、術後に患部がうずいたり、不具合を感じる人はいます。目がゴロゴロする、シバシバする、調子がよくないといった数値化のできない感覚による不具合は、たとえ視力が戻ったとしても一定数はあるものです」(前出の平松氏)

手術を受けるに当たって、後悔しないためには、まずは医者選びが大切だ。手術の巧拙は素人にはなかなかわかりにくいが、信頼できる医者か、コミュニケーションが取れているかは、診察の過程でわかるだろう。

「高齢の患者さんになると、自分の不調について説明がうまく伝わらなかったり、言葉が足りなかったりすることもあると思います。患者さんに寄り添おうという姿勢のある医者が、望ましいでしょう」(平松氏)

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