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フリーダイビングの世界大会を日本に誘致した「ロマンティックな愚か者」
島地勝彦×篠宮龍三【第3回】

撮影:立木義浩

第2回【 偶然出会った師匠はあの人の弟子だった

シマジ 先ほどもお聞きしましたが、篠宮さんはただ潜ってじっとしているときは8分くらいいられるそうですね。

篠宮 そうですね。じっと動かない状態ですと8分ですね。でも動いてしまうと4分くらいになってしまいます。

シマジ 肺活量はいったいどれくらいあるんですか?

篠宮 最初は5000ぐらいだったんですが、トレーニングを積んで9000ぐらいまで伸ばしました。

シマジ 9000ですか! 凄いですね。

篠宮 海外の選手たちはもっと多くて、1万を超えて1万2000ぐらいある人がいます。

シマジ 一般人には考えられない世界だ。ジャック・マイヨールもそのぐらいあったんでしょうね。

篠宮 彼は意外に少なかったみたいですよ。

シマジ へえ、少なかったんですか。そうか、けっこう小柄な人だったんですものね。

篠宮 ですから、フリーダイビングにはもっとちがう要素が重要です。たとえば海中で何かあったときにパニックになると、頭を使ってすぐに酸素がなくなってしまう。だから、まずは落ち着いたメンタリティが必要になってくるんです。ジャック・マイヨールはそのためにヨガをやっていたそうです。

シマジ ああ、そうか。脳を使うと酸素を消費するんですね。

篠宮 そうなんです。ですからこのスポーツは考えちゃいけないんです。

シマジ なるほど。出来るだけ無になって潜っていって、戻ってくるんですね。

篠宮 球技などでは常に考えながら動けと教わりますが、ぼくらは何も考えてはいけないんです。陸上にいるうちにあらゆる戦略を立てておいて、水中ではいかに無になれるかが重要なスポーツです。いずれにしても、ぼくの人生はジャック・マイヨールの『グランブルー』の影響で大きく変わりました。

立木 シマジだって『甘い生活』のマストロヤンニを見て、編集者になろうと思ったんだろう。

シマジ そうですね。編集者ってあんなに女にモテるのかと思ったんですね。

立木 それは大いなる誤解だな。マストロヤンニだから女にモテるんであって、編集者だからじゃない。そこまで冷静に理解しなかったんだね。

シマジ でも編集者になろうという動機は『甘い生活』が作ってくれたんですよ。ですから感謝しています。

篠宮 『グランブルー』のなかではジャック・マイヨールはそのまま本名ですが、映画のなかのライバルのエンゾは実在の人物でエンゾ・マイオルカといいます。劇中名はエンゾ・モリナーリですが、エンゾ役はジャン・レノが演じていました。

ヒノ いまはクルマのCMでドラえもんの役をやっていますよね。

シマジ 篠宮さんはフリーダイビングはとてもマイナーなスポーツだといっていますが、そのうちなにかのきっかけで火がつくように思います。

篠宮 本当にそう願うところですが、まずはとにかく若い世代の競技人口が増えて欲しいと思っています。女子はわりと若くて強い選手が沢山いて、世界大会で金メダルを取ったり、世界記録を出したりする子がいるんですが、男子はまだもう少しというところなんです。

ですからそこをなんとかレベルアップさせて、プロとしてやっていけるようにしてあげたいなと思っているんです。男子は会社勤めで忙しいというのもありますが、会社勤めと同じぐらいの収入が得られるようになったらいいなあと。

シマジ 中学生や高校生でフリーダイビングに魅せられて、この道に入ってきたら、凄い選手が誕生するんじゃないですかね。タッチャンもわたしも親しい青木功プロも、中学生のときにキャディをやりながらゴルフの愉しさを覚えたといっています。

篠宮 そうですね。小さいころから海にふれあう子供が増えるといいですね。

シマジ 篠宮さん自身、埼玉生まれの埼玉育ちですから、海がなかったんですよね。

篠宮 はい。ぼくは海なし県の出身です。だからこそ海への憧れは人一倍ありました。

シマジ そういうものですか。

篠宮 やっぱり制限されているなかにいますと、どうしてもそれを知りたくなるというか、みたくなるというか……。ですから埼玉県はもちろん、山梨県、群馬県にも海が大好きという方はけっこういまして、沖縄にたくさん移住してきていますね。

シマジ やっぱり、フリーダイビングは沖縄がいちばんいい環境なんですね。

篠宮 日本で海のスポーツをやるには、沖縄がいちばんだと思います。ですからフリーダイビングの世界大会も沖縄に誘致させていただいたんです。

シマジ そうそう、世界大会をやったお話を聞かせてください。その苦労話を是非教えてください。