医療・健康・食 ライフ

まずは10種類の薬を3種類に「減らす」その方法を教えます

飲まずにすむなら飲まないほうがいい

高齢者の3割が「薬漬け」

「うちの病院で診ていた患者さんが、調子が悪くなって大きな病院に入院してから帰ってくる。すると毎日飲む薬がドンと増えているということがよくあるんです。

どこか具合が悪くなって大病院に入院し、そこで治療してもらってから帰ってくるので、患者さんも大病院のことを信じてしまいがちです。だから薬の量が多くてもなかなか減らそうとしない。

こちらが『こんなにたくさんの薬を飲んでどうするんですか』と説得しても、『いや、出してください』と処方を強く希望するのです。特に退院直後の患者さんにはそういう人が多い」

こう語るのは、全国でも珍しい「薬やめる科」を設けている松田医院和漢堂の松田史彦氏だ。

本誌でもたびたび指摘してきたように、高齢者の多剤併用(ポリファーマシー)が大きな社会問題になっている。

厚生労働省が'14年12月の診療記録を集計したところ、75歳以上の高齢者で10種類以上の薬を服用していた人は27・3%。3割近くが10種以上の「薬漬け」状態になっていたことが、わかった。

 

薬の量が増えると、飲み合わせによる副作用も複雑で予測するのが難しくなる。

「薬には配合禁忌とか併用禁忌という、合わせて飲んだら危険な状態になったり薬効が失われたりするという薬の組み合わせがあるのですが、これは2種類の組み合わせまでは色々と調べられています。

薬剤師も代表的な禁忌は把握していますし、調剤薬局のコンピュータにも入っている。しかし、3つ以上の組み合わせになるとわかりません。ましてや10種類以上となると、組み合わせも無限大です。なにが起きるか誰にも把握できないのです」(松田氏)

また、これだけの量になると、薬の成分を体内で分解する肝臓への負担も軽視できない。加えて、とりわけ高齢者の場合は薬の効果が強く出過ぎて、血圧や血糖値が下がり過ぎた結果、意識があいまいになったり、ふらついたりして、転倒する危険性も増す。

「歳をとればとるほど、薬を分解する力は弱まっていきます。口から飲んだ薬というのは、基本的に肝臓を通る。肝臓には解毒の作用があるので、人体にとって異物である薬も『解毒』する。そして肝臓が解毒しきれなかった分が全身に回って、薬効として働くわけです。

だから多量の薬を飲むと肝臓の機能は限界になる。年齢による衰えを加味すればなおさらです」

では、自分や家族が明らかに多すぎる薬を処方されている場合、どのように減らせばいいか。冒頭の松田氏のような減薬を積極的に勧めてくれる医者が近くにいればいいが、そのような専門の診療科を設けている病院は非常に珍しい。

まずは自分の薬手帳をよく見て、重なっている効果の薬はないか、思い当たる副作用はないか確認し、減らせる薬を探してみよう。

ただし、患者が自分で急な減薬を進めると、症状が思わぬ形で悪化したり、離脱症状(禁断症状)に悩まされることがある。薬をやめるには、信頼できるかかりつけ医に必ず相談したい。

まずは降圧剤を見直す

「理想としては薬の数はゼロにしたい。10種類の薬をすべてやめるのは難しいとしても、できれば3種類くらいには減らしたいところです」

こう語るのはサン松本クリニックの松本光正医師だ。

「多剤併用をしている患者さんのなかには、降圧剤を3種類も飲んでいる人がいますが、そのような人にはまず降圧剤を減らしなさいとアドバイスしています。安静時の血圧が200を超えているようであれば、飲んだほうがいいですが、そんな人はめったにいません。

先日来た高齢の患者さんも、上の血圧が110なのに降圧剤のオルメテックを飲まされていました。高齢者の場合は、逆に頭に血が回らないと脳梗塞を起こすこともありますから、血圧の下げ過ぎに気を付けるべきです。

血圧の基準値のガイドラインは、ここ十数年のあいだに何度も引き下げられました。その結果、血圧の基準値を超えている人の数は'87年には230万人だったのが'11年には5500万人と急増している。いまの日本人は明らかに高血圧を気にしすぎています」

東京慈恵会医科大学循環器内科の川井真准教授は、降圧剤を減らすときの順番を次のように説明する。

「例えば、(1)RAS系阻害薬(ARBとACE阻害薬。前者はミカルディス、オルメテックなど。後者はアデカット、コバシルなど)、(2)カルシウム拮抗薬(アムロジン、アダラートなど)、(3)利尿剤(フルイトランなど)といった3種類の降圧剤を併用している人が、減薬したいときには、まず(3)からやめるのがいいでしょう。

利尿剤は塩分摂取が多い人には効果が高いのですが、血液濃縮作用がありますし、その結果、尿酸値も高くなり、腎臓にも負担がかかる。

高齢者なら、その次にやめるのは(1)のRAS系阻害薬です。(2)は降圧作用が安定していますし、一種類残すとしたらこれでしょう。ただし若い人が長期間飲むとすれば、臓器保護の観点からRAS系を残してもいい」