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医療・健康・食
がんの二大名医が明かす「医者の選び方・薬の飲み方・理想の逝き方」
本音のスクープ対談

医療技術が日々進歩しているのは事実。だが、それが本当に患者のためになっているのだろうか。がんの名医二人が「手術、薬、理想の逝き方」について語る。

医者選びは本当に難しい

赤池信 私は大腸がんが専門ですが、治療・手術の技術は着実に進歩してきました。

腹腔鏡の手術も広く行われるようになった。ただ腹腔鏡の手術が特に優れているというわけではなく、開腹手術が劣っているということでもありません。これは臨床試験の結果からもいえることです。

ただ、腹腔鏡の手術が広く認知され、そちらの症例数が増えてきていることは事実で、この傾向は続くでしょう。

中山治彦 私の専門は肺がんです。私の考えるよい手術とは、解剖がきちんときれいに視認できている安全確実な手術です。そのために、私自身がいちばん気を付けていることはよい視野を確保するために極力出血を抑える努力をしています。逆にいえば、それができていないと下手な手術になるわけです。

肺がんの手術では、根治性を保ちながら、肺機能の温存を目指すという流れが最近のトレンドです。

赤池 直腸がんの手術でも、人工肛門をつけないで済む手術が増えてきましたよ。

手術を腹腔鏡にするか、開腹手術にするかは、主治医の判断が大きい。そこには技量の差も関係してきます。この先生だと腹腔鏡ではできないが、別の先生だと可能だという、がんの部位もあります。

中山 患者さんの立場から、手術の上手い外科医を選ぶ方法はとても難しいですね。

赤池 私たち医者にしても家族や身内が病気になったら、誰に手術を頼もうかと迷うわけですから、患者さんから見ればなおさらでしょう。

 

ただ、病院も昔とはちがって情報公開が進んでいる面もあります。だから病院の選択という意味では、直近何年かの症例数を参考にするというのが、いちばん妥当な方法といえるでしょう。

ただし、症例数が多い施設は技術の平均値が高いことは間違いありませんが、10人外科医がいたら10人とも手術が上手いとは限りません。

中山 私もまずは症例数の多い病院を探すのが正解だと思います。問題は、患者さんがいちばん知りたいのは症例数の多い病院のどの医師が優秀かということですよね。

赤池 もちろん、それがわかればいい。ただ、症例数が多いほうが、平均的に見て手術の成功率も高いというデータもあります。アメリカの心臓外科手術の調査の裏付けがあるのです。

中山 情報の公開という意味では、最近は手術の様子がビデオで録画されるようになりましたね。

赤池 あれを見ると手術の上手い、下手が一目でわかります。

 実際、とある疾患のトップといわれている医師の手術のビデオを学会などで見て、愕然としたことがあります。その分野で先頭を走っている人の手技なのですが、とても上手いとは言えない。ただ、草分け的存在で症例数だけは重ねてきているので、学会で大きな顔はできるわけです。

一方、若手で学会での立場はまだまだ下っ端でも、上手い人は見ればわかります。

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「点数」稼ぎに走る医師

中山 一般の方はビデオを見る機会もないですし、仮にビデオを見たとしても何が何だかよくわからないでしょう。しかし、そのような情報が公開されることで少なくとも医師たちの間で、評価し合うことはできる。

患者さんも、手術の腕がいいかどうかはわからなくても、初診でコミュニケーションが取れているかどうかは、誰にでもわかります。コミュニケーションが取れなくても手術が上手い医者もなかにはいるかもしれませんが、やはり、不安感をもって手術に向かうか、信頼感をもって向かうかは大きく違ってきます。

赤池 疑問をもったまま手術に臨むと必ず後悔の種になりますからね。