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ご存じですか? 実は箸の「置き方」にも作法があったんです!
間違うと流刑になった時代も…

日本と中国での違い

箸のルーツは、紀元前3世紀頃の中国といわれている。とはいえ、当初は、食事には匙を使うのが主流で、箸はあくまで補助的な物であった。

箸が一躍脚光を浴びたのは、唐以後のこと。この頃、中国で「合食制」と呼ばれる、食卓を囲んで皆が椅子にすわり、並んだ皿から好みの料理をつまむ食事様式が確立する。

それまでは床に座って一人単位で食べるほうが手間いらずと好まれたが、床を這い回って給仕する様があまりに不格好だったため、椅子と食卓を使う合食制が提案されたという。その際、中央の大皿から料理をつまむのに長い箸が便利だからと重宝されるようになった。

さらに箸を普及させたのが、「鍋もの」の流行だった。元を建国したジンギスカンの孫フビライハンが考案したとされる「涮羊肉」(羊肉のしゃぶしゃぶ)が人気となると、薄くスライスした肉や刻んだ野菜をつまむ動作が必要になり、そこでも箸が活躍したという。

 

さて、この合食制では、自分の席から食卓の中央に置かれた料理へ向けて箸を運ぶことになる。そこで、箸をあらかじめ料理に向かって垂直に置くほうが取りやすいと中国では考えられるようになった。

さらに明の初代皇帝・朱元璋がこの垂直な箸の置き方を部下に厳命し、平行な置き方を「田舎の風習」として認めなかった。当時の資料によれば、宴の席で箸を平行に置いた文人を流刑に処したという徹底ぶりだ。こうして中国では、箸を垂直に置く習慣が根付いたとされている。

ではなぜ日本では平行に箸を置くのか。それは、箸が中国から伝来した時にはすでに「銘々膳」と呼ばれる個別に小さな食卓が用意される習慣があったためだ。個人用の膳だから、個人用の箸がつく。日本で箸を「一膳」と数えるのも、このため。また大皿料理には必ず「取り箸」がついてくるが、これも実は日本だけの箸の使い方なのだ。

ただし、日本でも例外はある。同じ日本料理でも、しゃぶしゃぶやすき焼きの場合は合食方式なので、箸を垂直に置く店もあるそうだ。(栗)

『週刊現代』2016年10月29日号より