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退職金に手をつけたら…その先に待つのは地獄です!

投信のプロが教える、正しい資産運用術

資産運用の最大のリスクは、退職金受給のタイミングにあった!設立10年の投信会社社長が、50歳から資産を殖やす人、沈む人の違いを記した『退職金バカ』が注目を集めている。

本書の中から、資産運用を考える際に、なぜ50歳が最も重要なポイントとなるのかを示したパートを特別公開する。

一歩間違えれば「老後破産」が待っている

50歳というのは非常に大きな人生のターニングポイントです。周りを見ても、ますます意気盛んな人もいれば、なにか「定年」というゴールを待っているだけに見える人もいます。

私自身、50歳を超えてハッと気づいたのですが、同年代の友人と集まると、誰からともなく病気自慢が始まるんですね。仕事の話も、それまで前向きであったものが、急に後ろ向きの話に変わります。「おまえはいいよなあ、オレなんて……」と不幸自慢が始まります。

定年まで残り10年程度。65歳定年制が定着したとしても、残り15年です。出世コースに乗っている人は別にして、給料の伸びは落ちます。ここで、「人生消化試合」といった雰囲気を醸し出す人が出てきます。それも、少なくない数が。気持ちはわかります。

私は仕事上、全国津々浦々を回り、さまざまなバックグラウンドの方と会う機会が多いのですが、「定年がゴール」「退職金をもらうまで」と、“その後”の人生を思い描けていない人が多いことに驚かされます。

思い込みで思考停止してしまうことを「バカの壁」と名づけたのは養老孟司先生ですが、定年や退職金にもやはり、「バカの壁」というべきものがあります。なにか、そこで人生が一段落して、あとは「余生」となってしまうかのような思い込み――ある種の「思考停止」です。

そのため、60代以降の生活やお金の問題について具体的に思い描けない人がたくさん出現することになっているのではないか、と私は睨んでいます。

しかし、人生においておそらく、最もまとまったお金を手にする退職金受給のタイミングは、資産を守り育てるという観点からは「最大のリスク」。このとき不要な散財をしたり、間違った選択をしたりすれば、老後破産への道を進んでしまいかねません。

 

普通の50代はいくら持っている?

「人生、金がすべてじゃないよ」などと言っていられるのは、若いうちの話です。

これからの時代、自分よりも若い世代の人口はどんどん少なくなります。つまり、今の70代、80代以上の人たちが受けているのと同等の社会保障は、もはや受けられないと考えたほうがよい状況です。年金ひとつとっても、なくなることはないにしても、今後減額される可能性は否定できません。

50代を迎えたみなさんは今、どのくらいの金融資産(預貯金、生命保険、有価証券など)を持っていますか。

金融広報中央委員会の調査(平成27年)によると、全体のちょうど真ん中に位置する、50代の金融資産額の「中央値」は、1100万円。

それでは、1100万円で老後の生活は満足いくものになるでしょうか。

仮に年金として受け取れるお金が、夫婦2人で毎月20万円だとしましょう。「毎月30万円は欲しい」というのであれば、毎月10万円ずつ取り崩し、生活費に回していかなければなりません。中にはただちに現金化できない金融資産もありますが、とりあえずは最大で考えて、1100万円から10万円ずつ取り崩していった場合、どれだけ持つでしょうか(金利等は無視するものとします)。

1100万円÷10万円=110ヵ月
110ヵ月÷12ヵ月=9.16年=約9年と2ヵ月

60歳で1100万円の資産を保有し、それを毎月10万円ずつ取り崩していったとしたら、70歳の手前で貯蓄が底を突きます。今は男性でも80歳、女性に至っては87歳まで長生きする時代ですから、1100万円あってもとても足りないことになります。

しかも、フィデリティ退職・投資教育研究所が3万人の勤労者を対象に退職後の生活準備額(貯蓄と考えていいでしょう)について調査したところ、50代で「ゼロ」という男性が、なんと3割超もいたそうです。50代にもなって退職後の準備資金がゼロでは、もはや老後の生活設計は立ち行きません。

したがって、今からなんとしてでも、定年までに一定の老後資金をつくる努力をしなければなりません。50代は、老後の資産形成をする「ラスト10~15年」だと心得るべきでしょう。

退職金は当てにならない

「退職金があるから、なんとかなるんじゃない?」と思った人もいるかもしれません。定年になったときに支給される退職金。いったい、いくらもらえるのか考えてみたことはあるでしょうか。

メディアなどでは、よく「2000万円」などという数字が出てきます。

日本経済団体連合会(経団連)・東京経営者協会が2015年4月に公表した「2014年9月度退職金・年金に関する実態調査結果」を見てみると、「管理・事務・技術労働者(総合職)」の60歳で、大学卒業者が2357万7000円、高校卒業者が2154万9000円の退職金が支給されていることになります。

ただ、これは経団連の調査ですから、対象は経団連所属企業、つまり大企業が中心です。日本の大企業の会社数はたったの0.3%に過ぎず、中小企業が99.7%を占めています。退職金がいくらなのかを現実に即して把握するには、やはり、中小企業の退職金の平均額も併せて見ておく必要があります。

東京都が従業員10人~300人未満の都内中小企業だけを対象にした賃金に関する実態調査を見ると、定年まで勤めた場合のモデル退職金の額は、次の通りです。

大学卒    1383万9000円
高専・短大卒    1234万5000円
高校卒    1219万1000円

経団連企業の退職金と比較してみてください。いかに退職金の格差が大きいかが、おわかりいただけると思います。