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「子育て支援」が日本を救う!統計分析が示す国家戦略の“正解”
これほど効率の良い投資は他にない

最強の学問「統計学」を政策に活かせ

統計学が最強の学問である』という本がベストセラーになって、3年が経った。

「ビジネス」の現場では、統計学はかなり普及しただろう。たとえば、「見かけ上の相関」や「逆の因果」といった基本概念は、ビジネスパーソンにはかなり「常識」になったのではないだろうか。

しかし、「政策」の現場ではどうだろうか。

「どの政策にどういう効果があるのか」「どちらの政策のほうが効果が大きいのか」といった統計学的な議論は、まだまだ足りていないのが現状なようだ。

「三世代同居の促進」は的外れ

たとえば、2016年1月20日に成立した2015年度補正予算では、「出生率を上げるために、三世代同居のための木造住宅整備などを促進する」という政策が組まれ、63億円の公共事業予算がついた。

しかし、出生率が低いのは都市部であり、都市部では土地が高いため、「三世代同居の木造住宅」を建てるのは非現実的だ。それよりも、都市部では「保育サービス」がまだまだ足りないのだから(厚労省の2016年全国調査によると潜在的なものも含めて待機児童は9万人)、「三世代同居」よりも「保育サービス」こそを、増やすべきではないのか。

実際に、日本リサーチセンターが2000年代の都道府県データを分析したところよれば、保育所利用率が上がった都道府県ほど、その「5年後の」有配偶出生率が上がる傾向にあった。

つまり、保育サービスは、出生率上昇に効果があると期待できるのだ。ここでは、この「5年後」というのがポイントだ。「出生率が上がると、(働く母親がさらに第二子や第三子を産むケースが増えるので)保育所利用率が上がる」というような「逆の因果」ではない、ということだ。

さらに、1990~2010年の都道府県データを使った別の分析によれば、「子育て世帯は、三世代同居ではなく保育サービスを求めている」ということが示唆されている。というのも、保育所定員が増えた都道府県では、三世代同居をやめて核家族になる世帯が増えたからである。

おそらく、「保育所に預けられるなら、三世代同居は(気疲れするから)やめたい」というのが、全国の子育て世帯の「本音」なのだろう。三世代同居の促進政策は、やはり的外れなのである。

 

たしかに、「三世代同居率が高い県ほど、出生率が高い」という相関関係は多少ある。たとえば福井・島根・鳥取などの日本海側は、両方とも高い。

しかし、相関関係と因果関係は、全く別物だ。因果関係がないにもかかわらず相関関係が見られることを、「見かけ上の相関」(あるいは「疑似相関」)という。

おそらく、「三世代同居率」と「出生率」の相関関係には、その両方を昔のまま高く維持しやすい何らかの背景要因(たとえば新幹線が通らず都市化が遅れていたことなど)が、影響しているのだろう。

つまり、その背景要因があると、「三世代同居率」と「出生率」の両方が高く維持されやすいため、両者のあいだに(因果関係がないにもかかわらず)相関関係が発生していたと考えられるのだ。

ちなみに、先に紹介した分析によると、2000年代では、保育所定員が増えた都道府県ほど、母親の就業率が上がる傾向にあったという。つまり保育サービスは、(出生率上昇だけでなく)女性活躍にも効果があるのだ。

このように、統計学を用いれば、「三世代同居よりも保育サービスのほうが、出生率上昇に有効だし、女性活躍にも有効だ」という推論が得られる。しかし、政府が打ち出す政策のなかには、こういった統計学的推論とは逆行してしまうものもありうるのだ。

おそらく、最強の学問「統計学」を、まだ十分に活用できていないからかもしれない。

〔photo〕iStock

「統計学」による政策論

では、「統計学」を活かすと、どのような政策論を展開できるのだろうか?

私は、先進28ヵ国の主に2000年代のデータを、統計学的に分析することにより、「財政が健全化した国は何をしたのか」を探った。その結果、得られた結論は、とてもシンプルなものだった。

保育サービスなどの子育て支援を充実させた国は、そのあと数年以内に、財政がより健全化しやすい」というのが答えだ(拙著『子育て支援が日本を救う』勁草書房、2016年)。