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「神奈川県民のプライド」はなぜこうも鼻持ちならないのか?
ずっと我慢してきた東京人の本音

遠くから眺めているだけなら、非の打ちどころのないハンサムボーイかもしれない。でも、すぐ隣にいるからこそ見えてくるものもある。ずっと我慢していた本音を、そろそろ言わせてもらいたい。

サザンに頼るな

「横浜って言っても、ほとんどただの住宅街ですよ。県外の人は、横浜=港、海って思ってるかもしれないけど、けっこう畑なんかもありますし。東京の人に向かって『オレ、ハマっ子だから』って自信満々な人もたまにいますが、その感覚は正直よくわかんないなあ。

でも、僕は大学が東京だったんですが、やっぱり地方出身の同級生はみんな『生まれも育ちも横浜なんだ、すごいね』『シティボーイだね』なんて言ってくれましたね。あれは気持ちよかった。

それまでは、横浜ブランドの力をあまり意識したことがなかったんですよ。でも、その時『あ、みんなそんなに横浜に憧れているのか』って気付いたんです」(横浜市出身の30代男性)

悠然とカモメが舞う港に、建ち並ぶ赤レンガの倉庫群。その向こう側で、富士山をバックにそびえるのは、みなとみらいの高層ビルだ。東京都庁より50m高い横浜ランドマークタワーが、陽の光に白く輝いている。沖合に浮かぶ貨物船の汽笛がボォォ……と聞こえてくる。

神奈川県と聞いてまず多くの人が想像するのは、こんな横浜の洗練された街並みだろう。

あるいは、湘南・江の島の風景かもしれない。抜けるような青い空に、どこまでも広がる太平洋。波打ち際にはサーファーたちが集い、砂浜で愛犬と戯れる人の姿も見える。思わず、サザンオールスターズのあの曲を口ずさみたくなる……。

爽やかで、お洒落で、かっこいい。知的だけど、ガリ勉じゃない。スポーティなのに、暑苦しくない。そんなポジティブなイメージばかり出てくる都道府県は、日本中を探しても、神奈川県をおいて他にない。

 

毎年発表されている「都道府県魅力度ランキング」でも、神奈川は、いわば「別格」とされる北海道・京都・東京・沖縄に次ぐ不動の5位。首都東京と一大観光地を除いた「普通の県」の中では、事実上のトップと言っていいだろう。

さらに、あまり知られていないが、神奈川県の人口は今や900万人を誇り、約880万人の大阪をしのいでいる。日本第二の大都市は神奈川なのである。

ある横浜市民はこうも言う。

「神奈川は、日本のカリフォルニア。湘南は、日本のサンタモニカ」

一番じゃない。あくまで二番手。でもそれでいい。神奈川は、他がどれだけ頑張っても決して手に入れられないものを持っているから―ー。

大阪人のようにむき出しにせずとも、また京都人のようにひけらかさずとも、神奈川県民、とりわけ横浜市民が、そんな強いプライドを秘めているのは紛れもない事実だ。

しかし、東京は足立区に生まれ育った40代の男性はこう話す。

「茅ヶ崎出身で横浜在住の会社の同僚が、『足立区なんて一度も行ったことがないし、行く用事もないじゃん?』と言って笑っていた。自虐のつもりでその時は肯定しておきましたが、彼らは完全に東京、特に東側をバカにしてますよ。最近は足立区もけっこう人気が出てきたのにね。

私からすれば、あっちこそただの田舎。なんで都心の会社まで1時間以上かかるのに、横浜に住み続けたいんですかね。そんなに海が見たいなら、千葉に行けばいいじゃないですか。サザンがいなかったら、神奈川代表は横浜銀蝿になるところだったんですよ? それでも横浜に住みたいのか、と言いたい」

「だべ?」とか言うな

確かに東京を除く関東6県の中で、神奈川が突出した「ブランド力」を持っていることは前述した通りである。残りの埼玉、千葉、茨城、群馬、栃木は、神奈川と張り合おうとはハナから考えていない。

前出の30代男性も「千葉県民と埼玉県民が『どっちが都会か』で争っていると、『またやってるよ』と思う」と、あくまで高見の見物を決め込んでいる。

また、東京に関しても、神奈川県民の常套句は、「東京はしょせん、田舎者の集まり」である(大阪人や京都人もよく同じようなことを言うが)。しかし、当の「東京に集まってきた田舎者」の中にも、神奈川に対しては何とも言えない違和感を抱く人が少なくない。

広島県出身、東京在住の30代女性が言う。

「上京したばかりの頃、知り合った男友達に『オレ、実家横浜だべ?』とか言われても、『だから?』としか思えませんでしたね。だって私の地元では、神奈川とか横浜は『東京の隣のベッドタウン』『埼玉と似たような感じ?』『中華街?』くらいの認識しかない。上京して初めて『ああ、そんなところもあったね』と思い出す程度の存在です。

知り合いの横浜出身の男の人で、地方出身の後輩の女の子を誘ってドライブに出かけては、いつも最後に、必ず横浜港の夜景が見える丘に連れて行くという人がいました。『田舎者は、横浜に連れて行けばみんな落ちる』とでも思ってるのかな。まあ、横浜はキレイなところだと思うし、それで成功したことがあるから何回も同じことやってるんでしょうけど」

神奈川、そして横浜がある種のブランドであることは誰もが認めるところだ。だが、それに溺れてしまっている県民が決して少なくないところが、「元・田舎者」も含めた東京都民が、神奈川をどうしても好きになれない最大の理由である。

東京を風除けにする卑怯者

都内の大手不動産会社に勤務する40代男性は、ある部下に手を焼いた経験があるという。神奈川県内の名門男子校から一流大学に進み、入社してきた中堅だ。

「ルックスも身なりも爽やかな印象で、社交的だから他社の人には可愛がられていました。業績の面でも確かに優秀です。でも、こちらが何か仕事を振ると『それ、僕のやることなんですかね?』と堂々と逃げようとするし、『じゃあ、○○(後輩)にやらせますね』と、まだ若いのに他人を使うことばかり考えるんです。

自分では『オレはできる社員だ、文句あるか』と思っているんでしょう。でも、こっちは彼自身に汗をかいてほしいんだ。スマートにこなそうとするんじゃなくて、まず体を動かせと言いたい」

この部下が神奈川の県民性を体現している―ーと断言するのは言い過ぎだとしても、彼が青春を過ごした神奈川の名門男子校の校風が、東京のそれとかなり違っていることは確かだ。

「神奈川には鎌倉の栄光学園、横浜の聖光学院、浅野中学・高校の『御三家』がありますが、生徒自身も、また学校近隣の住民も『東京の開成高校や麻布高校と比べても全然負けてない』、『生徒の雰囲気は垢抜けてるし、ガリ勉の校風でもないから、神奈川の名門のほうが総合点ではむしろ上』と思っている節がありますね。

女子校も、フェリス女学院や横浜雙葉には、何代にもわたって子供を入れる家族もある。それほどプライドが高いし、『東京の学校に行くなんてダサい』と思っている」(鎌倉市在住の40代女性)