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映画『グランブルー』に魅せられた私が、偶然出会った師匠はなんと…
島地勝彦×篠宮龍三【第2回】

撮影:立木義浩

第1回【 ジャック・マイヨールを超えた日本人

シマジ たとえば篠宮さんが100メートル素潜りで潜るとして、耳はどうなるんですか。わたしも海が大好きで若いときはよく海に潜りましたが、せいぜい5、6メートルが限界でした。そのときでも耳抜きはしましたが、100メートル潜るときも1回耳抜きすれば大丈夫なんですか?

篠宮 いえいえ、何度も抜いて潜っていかないと水圧の変化で鼓膜が破れてしまいます。やはりちゃんと耳が抜けることと、どう息を保つかということ、この2つが凄く大事なポイントです。一度も鼓膜を破ったことがないのが、私の自慢でもあります。

シマジ なるほどね。あと、篠宮さんはみるからに長身ですね。

篠宮 身長は181センチあります。

シマジ フリーダイビングには長身のほうが有利ということはあるんでしょうか?

篠宮 陸上のスポーツと違って身長はほとんど関係ないと思います。ジャック・マイヨールさんはけっこう小柄だったと聞いています。

シマジ 篠宮さんはフリーダイビングはマイナースポーツだと仰っていますが、競技人口は日本全国で何人ぐらいなんですか?

篠宮 そうですね、日本で競技として真剣にやっているのは100人くらいじゃないでしょうか。でも面白いことに、どの国をみてもだいたいそれくらいなんです。まだまだこれからのスポーツです。

シマジ 大会がテレビで実況中継なんてされたりするんですか?

篠宮 残念ながらまだまだそういうレベルではないんです。

シマジ どこかのテレビ局がスキューバダイバーのカメラマンかロボットカメラを潜らせて実況中継すれば受けると思いますがね。潜って行くときの海のなかの美しさを言葉で表すとどういうことになりますか?

篠宮 水面付近はまだまだ光が溢れ、ライトブルーの世界が広がっています。そこには海の生き物が沢山いまして、水深20メートルくらいまでは、プランクトンとそれを食べる魚とで、食物連鎖がとても濃い状態です。

けれども20メートルを過ぎて、30メートル、40メートルと潜って行きますと、だんだん太陽の光が薄れてきます。プランクトンも少なくなり、魚も減ってきて、ライトブルーからどんどん色が濃くなって、ダークブルーになってきます。

それからさらに潜って行きますと、ディープブルーになっていき、100メートル近くでは映画のタイトルにもなりましたけど、"グランブルー"と呼ばれる世界が広がります。上をみると太陽がどこにあるのかまったくわからない。下をみても横をみても全部同じで、なんとも言えない深い青色に全身が包まれます。

シマジ でも一応なにかみえるんですか?

篠宮 真っ白いロープがあって、それに沿って潜って行くんですけど、その白いロープが影のように真っ黒になってみえるだけです。

シマジ もっともっと潜ると真っ暗闇になるんでしょうね。

篠宮 ほぼ暗黒に近い世界になっていくと思います。

シマジ あなたの場合、フリーダイビングはほとんど独学で学んだんですか?

篠宮 当時はいまのようにインターネットも発達していませんでしたから、情報をどうやって集めたらいいのかよくわからなかったんですね。ダイビングを教えてくれるところがどこにあるのかもわからない状態でした。

ところが、偶然にも大学のキャンパスのすぐそばに、ジャック・マイヨールさんに薫陶を受けた方が経営されているダイビングスクールがあったんです。

シマジ それは幸運でしたね。しかも篠宮さんが感動した映画『グランブルー』のモデル、ジャック・マイヨールの教え子に会えたということですね。

篠宮 その通りです。大学から歩いて行けるところにそのダイニングスクールがありましたので、本当にラッキーでした。大学の帰りや授業をサボって、ぼくはその店に入り浸りました。そこでお話を聞いたり、トレーニングをさせていただいたり、というところから全てがスタートしたんです。

ヒノ そのインストラクターは有名な方だったんですか?

篠宮 女性なんですが、日本の競技者のなかではパイオニアとして有名な方です。お名前は松元恵さんといいます。

ヒノ その方は当時何歳ぐらいだったんですか?

篠宮 ジャック・マイヨールさんに出会われたのは、おそらく30過ぎなんでしょうが、いまはもうすぐ還暦という方です。

ヒノ では篠宮さんと20歳くらいちがうんですね。

シマジ もちろん、松元さんと一緒に潜ったこともあるんでしょう?

篠宮 はい、松元さんとは何度も一緒に潜ったことはありますよ。

シマジ 篠宮さんは松元さんのお弟子さんなんだ。

篠宮 そうです。松元さんにジャック・マイヨールが泳いでいる写真をみせていただいたり、練習風景のビデオをみせてもらったりしているうちに、まるで映画『グランブルー』の世界に自分も入っていくかのような気持ちになって、それから加速度的にのめり込んでいきました。

立木 やっぱりシマジがよくいっているように、人生は出会いなんだろうね。

篠宮 本当にそう思いますね。