高齢童貞、派遣切り…『逃げるは恥だが役に立つ』は、実は社会派漫画
ドラマが好調だが、原作をご存じか?

愛がなければ結婚してはいけないのか

夫を「雇用主」として、契約結婚をする――そんな奇妙な生活を描いたマンガ『逃げるは恥だが役に立つ』。新垣結衣主演でドラマ化され、話題になっている。一体、どんな漫画なのかご存じだろうか?

主人公のみくりは25歳。院卒という高学歴ながら内定がとれず、派遣社員になるも派遣切りにあって現在休職中の身だ。そんな時、父親の紹介で36歳の独身男・津崎の家事代行を請け負うことになる。津崎の信頼を得、仕事にやりがいを感じたのもつかの間、同居する両親の引越しで仕事を辞めざるを得なくなる。

ハウスキーパーが欲しい津崎、収入と住むところが欲しいみくり。現状を維持したい2人が導き出したのは“契約結婚”というビジネスとしての結婚だった。

仕事としての結婚をするにあたり、夫と妻それぞれの役割を明確にし、業務内容、給料、休暇など待遇を決めていく様子はまさに雇用契約だ。

いったいなぜこんな「特殊な関係」を描こうと思ったのか。

作者の海野つなみさん曰く、「触られるのが嫌な相手でなければ一緒に暮らせるのではないか」と思ったことがこのマンガの始まりだという。

「マンガやドラマでハードルを上げ過ぎて『本当に相手を好きなのか、愛しているのか?』とか考えてしまうと結婚はすごく難しいことのように感じました。愛していると相手の気持ちを考えて自分の言いたいことを言えなかったりしますが、お見合い結婚でうまくいった夫婦もたくさんいます。『そこそこ好き』くらいの方が、相手への期待もそんなにないからうまくいくのではと思ったんです」(同氏)

戦前には約7割を占めていたお見合い結婚は、1960年代に恋愛結婚に逆転され、その後現象の一途をたどっている。現在、見合い結婚の割合は全体の5.5%だ。

「契約結婚自体はマンガやドラマでは昔からあるモチーフですが、ほとんどがお金持ちと愛のない結婚から愛が生まれる玉の輿物です。

それとはちょっと違う切り口でビジネス物のようなテイストを入れてみたところ、女性からは『こういう仕事だけの結婚をしたいけれど相手がいない』、男性からは『こんなの男に都合がよすぎないか、そんな女性が現実にいるのか』といった感想をたくさんいただきました。予想外に希望がマッチングしていたんです」(同氏)

主人公みくりの考え方も面白い。仮面夫婦を続けるうち、次第に恋愛感情がわいてきた2人。事実婚ではなく入籍したいと言い出した津崎は将来のために小遣い制を提案する。しかし、みくりはその条件にどうしても納得できず、入籍を先延ばしにしてしまう。

同じだけ家事をやっても結婚前と同じだけ給料をもらえなくなる。それを「当然」と思うか「理不尽」と思うか。数値化しにくい、専業主婦の労働へ問題を提起する。

「みくりは保守的な人には『がめつい』『小賢しい』と思われそうなキャラクターですが、『小賢しくってすみません、えへ』と言える素直さと愛嬌を持っています。今は彼女のような考えを持つことを許容してくれる時代だと思うんです」(同氏)