金融・投資・マーケット
ついにヨーロッパで「金融政策の限界」が見えてきた!?
さらなる円高が進む可能性も

「ECBは量的緩和策の修正を検討しているのではないか」――。

金融市場の参加者の間で、こうした懸念が広がっている。10月4日には、「ECBが2017年3月の量的緩和の終了よりも前の段階で、月額100億ユーロずつ債券の買い入れ額を減らすこと(テーパリング)を検討している」との報道すら出た。

真偽のほどは定かではないが、なぜ、こうした報道が出るかについて冷静に考えた方がよい。

 

現時点でユーロ圏の物価はECBが目標とする2%程度の水準には達していない。ECBの見通しでも、物価は目標水準を下回って推移する見込みだ。つまり、量的緩和の縮小が可能な状況ではなく、それを議論するのも時期尚早だ。

そうした中でECBの緩和策変更の観測が出始めたのは、過度な金融緩和の副作用が大きいからだ。9月の日銀決定会合は、世界のセントラルバンカー、市場関係者がこの問題を確認する重要な機会になった。それだけにECBの金融政策の動向には注意が必要だ。

金融政策の限界に直面するECB

9月の日銀決定会合は、多くの中央銀行にとって重要なインプリケーションを含んだ決定だった。

それは、金融の緩和だけで経済の回復を達成することには限界があるということだ。むしろ、マイナス金利や量的緩和が行き過ぎると、金融機関の収益に悪影響が及ぶなど経済を壊してしまう恐れがある。ユーロ圏各国は、早くからこの問題に直面してきた。

2014年6月からマイナス金利政策が導入されてきたユーロ圏では、銀行の収益悪化への懸念が高まってきた。ドラギ総裁をはじめECB関係者は、マイナス金利には効果があると主張し、マイナス金利の引き下げも実施してきた。

しかし、2016年2月、ドイツ銀行の利払い不安から世界の市場に混乱が及んだ。これは、ECB関係者がマイナス金利の副作用を確認する機会になったはずだ。

【PHOTO】gettyimages

3月のECB理事会でドラギ総裁はマイナス金利の深掘りに慎重な考えを示し、事実上、ECBは量的緩和を政策の軸に据えた。それ以降、複数のECB関係者がマイナス金利の副作用を警戒する発言を行っている。

しかし、量の買い入れにも限界がある。債券の発行残高という限界に加え、際限なく買い入れを強化すると、中央銀行が金融市場全体を管理することになる。その場合、中央銀行のバランスシートの毀損リスクは上昇する。

すでに、マイナス金利や量的緩和の影響によって貸出金利が低下し、ユーロ圏だけでなくスイスなどでも大手金融機関の増資は不可避な状況だ。金融緩和を強化すれば低金利に拍車がかかり、金融機関の経営が追加的に悪化する恐れがある。

このように考えると、ECBの政策は、金融緩和が経済を圧迫し始める臨界点を超えたと言えるだろう。

9月の理事会後の会見で、ドラギ総裁はドイツなどに財政出動を求めた。この発言の真意は、経済の再生には需要喚起が不可欠であり、それは財政出動を通した産業政策にかかっているということだ。これは、暗にECBの対応力が限界に達し、修正が迫っていることを示唆する発言とも読み取れる。

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