ついにバラエティ復帰する古舘伊知郎の「覚悟と勝算」
挑むは各局しのぎを削る激戦区

古舘伊知郎がバラエティの世界に帰ってくる。それも、激戦区と呼ばれる日曜7時の枠で、だ。「冒険」「無茶」という声も聞こえる。しかし、スポーツ実況の風景を、そしてバラエティの風景を変えた男が帰ってくることに、ワクワクせずにはいられない。

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「無口な方」?

2016年6月2日。古舘伊知郎は『報道ステーション』降板後、初の公の場となったトークライブ「トーキングフルーツ」で、最近若いスタッフから衝撃的な一言を受けたことを明かした。

「古舘さんって無口な方ですね」

80~90年代の彼を知るものにとって、古舘は「おしゃべり」の権化のような人物ではあるが、確かに若い世代にとって古舘はキャスターのイメージが強いのだろう。スポーツ実況時代も、数々のバラエティ番組を司会していたことも、知らなくても無理はない。

「12年間ほとんどしゃべれなかったという思いもありますから」と、バラエティ復帰後はその鬱憤を晴らすように喋りまくっている古舘。松本人志はそれらの番組も見て「古舘さんの後は焼け野原が広がっていた」と評している。その松本が司会を務める『人志松本のすべらない話』にも出演し、見事「MVS(最優秀すべらない話)」を獲得した。

そんな古舘伊知郎が今期10月以降、いよいよ本格的にバラエティに帰ってくる。

長年にわたり高視聴率を維持する王者『鉄腕DASH』(日本テレビ)に対し、伊藤隆行による『モヤモヤさまぁ~ず2』(テレビ東京)、藤井健太郎の『クイズ☆スター名鑑』(TBS)、加地倫三の『アメトーーク!』(テレビ朝日)という各局のバラエティのエースプロデューサーが作る番組が挑む大激戦となった日曜19時台。そこにフジテレビは古舘伊知郎を司会に迎えた『フルタチさん』を開始させるのだ。また、古舘は同じくフジテレビで復帰ライブと同名の深夜番組『トーキングフルーツ』も開始する。

そもそも古舘伊知郎とはどのような人物なのか。「無口」というイメージを持つような若い世代のためにも振り返ってみたい。

 

はじまりはモスクワ五輪

古舘伊知郎がテレビ朝日に入社することができたのはひとつの偶然があった。それは1980年のモスクワオリンピックだった。

【PHOTO】gettyimages

テレビ朝日はこの五輪の独占中継権を獲得。その社運を賭けたプロジェクトのチーフアナウンサーに指名されたのが、プロレス実況で名を馳せた舟橋慶一だった。アントニオ猪木を「燃える闘魂」と初めて形容し、伝説の猪木vsモハメド・アリ戦を実況したアナウンサーだ。

舟橋はモスクワに連れて行く十数人のアナウンサーの選出や訓練も任された。だが、スポーツ実況のできるアナウンサーを上から十数人連れて行ってしまったら、他の番組が成り立たなくなってしまう。そこで舟橋は、局の上層部に「今度の採用試験で10人くらい採ってください」と頼み込んだ。新人に活路を見出すしかなかったのだ。

そこで採用されたのが古舘伊知郎を筆頭に吉澤一彦、渡辺宜嗣、佐々木正洋といった「花の77年組」と呼ばれる9人のアナウンサーだった。その中で舟橋がもっとも注目したのが古舘だった。