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一度は乗りたい! 心を洗濯できる「日本のローカル線」ベスト10
二人の鉄道マニアが勝手にランキング!

いまだ冷めないローカル線ブーム。全国津々浦々、ローカル線で行脚する大の鉄道マニア、大内学さんと吉川正洋さんが「心を洗濯できるローカル線」ベスト10を勝手にランキング

駅舎もまた「いい味」

大内 「日常を忘れる」という意味でオススメは、九州の日田彦山線です。特に、夜明駅の景色は最高。ホームを渡る跨線橋から辺りを眺めると、都会へと向かう久大本線と並走する日田彦山線の線路が山奥に吸い込まれるように右に折れていく。それがまるで非現実の入り口に見えます。

吉川 日田彦山線は錆だらけの大きな工場など、旧炭鉱地域の息吹を感じる、すすけた感じの田舎景色が広がっていて味わい深いですよね。

大内 中国地方だと、一畑電車の北松江線が素晴らしい。出雲大社前駅なのにステンドグラスがはめ込まれた洋館風情あふれる駅舎もミスマッチで面白いし、一畑口駅の平面スイッチバックもマニアにはたまりません。

吉川 その出雲大社前駅から乗車し、松江しんじ湖温泉駅に夕方到着するように合わせれば、宍道湖の先にある山間にオレンジ色の日の光が落ちていき、それが湖面に射して、とても美しいんです。

大内 関西本線の加茂から亀山の区間は、乗車している人がどっと減り、本線なのにローカル線の雰囲気そのもの。特に奈良に近い月ケ瀬口あたりは、渓流沿いに走るので本当に綺麗な景色が続くんですよ。

吉川 亀山駅も歴史を感じる趣のある構内ですよね。

大内 ひなびたその雰囲気にそぐわないほど構内が広い。というのも、昔特急列車が停まっていたから、とてつもなくホームが長いんです。そこに、3両程度の列車が停まる。さらに、ホームの先にある大きな留置線に、肝心の列車がない。鉄道黄金時代の名残を感じられる駅です。

様々な車両が走るごった煮感

1971年当時、東京駅で売られていた駅弁。〔PHOTO〕gettyimages

吉川 駅舎ならば、富山地方鉄道も見どころ満載。この私鉄の駅舎はどれもこれもレトロで、自分が昭和初期の日本にタイムスリップしたのかと錯覚しそうになるほどです。

大内 最近まで首都圏で活躍していた特急車両も走っているんですよね。

吉川 西武鉄道で「レッドアロー」として走っていた車両を再構築した「アルプスエキスプレス」や、京阪電鉄で走っていたテレビカー、それに自社発注の車両も走っています。この「ごった煮感」が地方私鉄の醍醐味のひとつだと思います。

大内 同じ北陸では、北越急行のほくほく線もいいですね。北陸新幹線金沢開業前、上越新幹線から接続していた時速160キロの「はくたか」が走っていた名残で、しっかりした規格の線路が敷かれているのですが、今はそこを優雅にローカル線が走っている。

吉川 かと思えば、「スノーラビット」という、新幹線に真っ向勝負を挑む速さの「超快速」が走っているのも面白い。

 

大内 ほくほく線には美佐島という珍しい駅があります。ここはトンネルの中にホームがあって、電車が来るまでホームに出られない。まるで秘密基地みたいな駅です。

吉川 東海地方では、静岡県の富士市を走る岳南電車を推したいですね。岳南電車は全駅のホームから富士山が見えるのが魅力。加えて、製紙工場群が作り出す、極上の工場夜景が感動的です。

大内 岳南電車は、鉄道では日本初の「夜景遺産」に登録されたほどです。

吉川 オレンジ色のあかりで輝く工場群のど真ん中を潜り抜けてたどり着く駅には、人はほとんどいない。白色灯だけが光っているだけのホームから、工場の夜景を独り占めすることができます。

大内 関東では、都心からもっとも近いローカル線の流鉄ですね。ハサミで切る「硬券」の切符がいまだに販売されています。まさに昭和の時代にタイムスリップした感じ。

吉川 僕も学生のころ、ローカル線に乗りたくなったら流鉄に行ってました。なにより「揺れ」がいい。最近の都心部の列車は揺れにくいのですが、流鉄はいまだにつり革が右に左に躍っている。

大内 流鉄は鶴見線とともに、都心からすぐに行ける鉄道ファンの2大ローカル路線でしょう。