日本、わたしたちのパラリンピックへ向けて

160930ito リオで開催されたパラリンピックに行ってきました。閉会式に参加していると、いよいよ4年後は自分たちの国に来ることが、実感として湧いてきました。
 
 今回のリオパラリンピックで最もメダルを多く獲得したのは中国でした。金107個、銀81個、銅51個、計239個を獲得しています。2位のイギリスは金64個、銀39個、銅44個、計147個。この圧倒的な数字は中国の強化がうまくいった証左でしょう。
 
 しかし、会場に来ていた中国のメディア数が少ないと感じました。一部報道でも、国営メディアが中国選手の活躍を国内に伝えないことへの批判が取りあげられていました。
 
 選手は試合を終えるとミックスゾーンと呼ばれる場所を通って会場を後にします。ここはメディアが選手と接触してインタビューを行える場所です。ここで中国の選手を呼び止めてインタビューする中国メディアが極端に少ないと感じました。
 
 反対にメディアの数が多かったと感じたのはイギリスでした。メダルを獲得した自国の選手に、多くのイギリスメディアがインタビューしている光景を目にしました。
 
 メディアが取り上げるということは、国民がパラスポーツに関心があり、報道されるのを求めている。同時に選手が国民の期待に応えているということに他なりません。メディアが取り上げない、取材をしないのは、国民がパラスポーツに関心がないから。これも大きな要因のひとつです。
 
160930ito2 日本では2020年の東京パラリンピックが決まってから、パラスポーツへの関心、理解が劇的に進んでいます。今年のリオパラリンピックの露出もこれまでとは比べ物にならないほど多く、そして国民の関心も高いと感じました。
 
 2008年にパラリンピックを開催した中国では、8年後の今もパラ選手の強化がしっかり行われていて、結果を出しています。その一方で国民の関心は高いとは言えないのではないでしょうか。2016年にパラリンピックを開催したイギリスでは、強化を図ると同時に、国民の関心の高さがあり、国民の中に障がいのあるアスリートの存在が定着しています。
 
 2020年のパラリンピック開催の目的のひとつに共生社会の実現が掲げられています。選手を強化し、多くのメダルを獲得する。もちろんそれ自体に価値があります。しかしそれに対して国民が無関心では、共生社会を目指すという面からいうと、その一歩にはなりません。「パラ選手が強くなった。でも障がいのある人達の社会の中で起こっていること」と、別の世界での出来事、になりかねません。
 
 選手が活躍してパラリンピックが盛り上がり、それに関心のある人が増え、それによって障がいのある人への理解が広がり、共生社会へ向かう。このことを強く意識して、この後の4年間の活動をしていきたい。リオパラリンピックから教えられた大切なことだと感じています。
 
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伊藤数子(いとう・かずこ)プロフィール>

新潟県出身。パラスポーツサイト「挑戦者たち」編集長。NPO法人STAND代表理事。スポーツ庁スポーツ審議会委員。東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会顧問。STANDでは国や地域、年齢、性別、障害、職業の区別なく、誰もが皆明るく豊かに暮らす社会を実現するための「ユニバーサルコミュニケーション事業」を行なっている。その一環としてパラスポーツ事業を展開。2010年3月よりパラスポーツサイト「挑戦者たち」を開設。また、全国各地でパラスポーツ体験会を開催。2015年には「ボランティアアカデミー」を開講した。著書には『ようこそ! 障害者スポーツへ〜パラリンピックを目指すアスリートたち〜』(廣済堂出版)がある。