ラグビー
「準備がすべて」エディ・ジョーンズが明かす"勝者の哲学"
敗者のメンタリティを捨てよ!

「常にいい準備をしようとしていれば、プレッシャーを感じることはない」。毎朝5時には行動をはじめる名将に、勝者の哲学を訊いた。

敗者のメンタリティを捨てる

昨秋、そして今夏と日本のラグビーは2度にわたって世界を驚かせた。

昨秋のW杯では2度の優勝経験がある南アフリカを撃破。世界中のメディアやファンから「世紀の大金星」と称賛された。さらにリオデジャネイロ五輪では今大会から正式種目となった7人制ラグビーで絶対王者・ニュージーランド代表も破り、4強に食い込んだ。

日本ラグビーが世界で勝つための意識革命を起こしたのは、W杯でヘッドコーチ(HC)だったエディ・ジョーンズ(56歳)だ。

〔PHOTO〕gettyimages

「7人制のチームも、昨年のW杯でも、準備が自信を作りだした。『自分たちは勝つ』と信じて挑んでいました。自信とは自分たちを信じること。そこが際立っていました」

エディがHC就任前の日本代表は、W杯に7大会連続で出場していたが通算1勝21敗2分。'91年大会以降、24年間、白星はなかった。

'80年代こそ大学ラグビー人気の絶頂にあったが、勝てない日本代表を見離すようにファンの足も遠のき、'90年代から人気は低迷した。'19年W杯の日本開催が決まっても、世界に勝つ策が見当たらない……。

'03年W杯で母国・豪州をW杯準優勝に導き、その4年後には戦術コーチとして南アフリカを優勝させた名将の起用は、日本ラグビーを救う最後の砦だった。就任直後、エディは日本代表の印象を、こう明かした。

「敗者のメンタリティでした。『一生懸命、やったんだから負けてもいいじゃないか』『頑張った結果だからいいじゃないか』というハッピールーザー(幸福な敗者)でした」

体をぶつけ合う競技なのに、日本は世界と比べて体格面で劣り、ファンも「太刀打ちできない」と半分あきらめていた。

 

エディはそんな先入観を変えるため、日本人の強みである走力を猛練習で徹底的に鍛え、体を当てながらボールをパスとランでスペースに運ぶ「ジャパンウェイ」の完成に心血を注いだ。

「日本人は勤勉です。もともと農耕民族だったことも影響し、物事に対して受け身で、自分で意思決定ができない。でも要求すればするほど、それに応えようという意識は高い。だから、世界でも類を見ないハードワークを求めたのです」

そう語るエディは、実は日本とのかかわりが深い。

父は豪州出身の軍人だが、母は日系アメリカ人。また豪州で教師をしていたときに出会った妻も、群馬県出身の日本人だ。彼が名将への道を歩むことになったのも、日本がきっかけだった。ラグビーがプロ化した翌年の'96年のことだ。

「豪州遠征に来ていた東海大からコーチのオファーをもらった。当時の東海大は今ほど強くなかったですが、経験を積める素晴らしい機会でした。日本でプロコーチを始めたから、その後、豪州や英国でコーチができた。だからいつか、日本に恩返しがしたかった。

日本代表HCになった時、最初に選手に話したのは『日本ラグビーにプライドを取り戻す』『国民が誇りに思うチームを築きたい』ということです。W杯の結果をみるとそれ以上のことができたし、新しい歴史を作ることができたと思う」