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男の評価は「正義感」で決まる!? 渡辺謙、孫正義、宮崎駿…
大震災が変えた日本人の本質
〔PHOTO〕gettyimages

ベストセラー『されど“服”で人生は変わる』の著者・齋藤薫さんが初めて男について書いた新刊『されど“男”は愛おしい』が話題だ。本作の中から「男の正義感」について触れたエッセイを特別公開!

○か×か、有無を言わせぬ男の評価は正義感で決まる

米同時多発テロのあと、結婚を急ぐカップルが急増した。でも同時に〝離婚も増えた〟と言われる理由が、当時はよくわからずにいた。しかし、日本の3・11のあと、その理由がハッキリ見えたのだ。〝正義感〟である。正義感の有無が明らかになったことなのだ。

あの時、受け入れ難い過酷な現実から逃れるため、多くの人がしがみついたのが、ちょっと意外なことに〝絆〟という言葉だった。日本人が〝他者との関係〟にここまですがるのは、初めてのことだろう。

ましてや〝絆〟のような形のないものをリアルに感じとろうとするのも初めてのこと。だから逆に、夫婦が今まで目を背けてきた〝本質的な相性〟というものを問わざるを得なくなった。

単純に〝愛情の有無〟ではなく、図らずも見えてしまったお互いの人間性。とりわけ〝正義感〟の量や質の違いに、決定的な価値観の違いを暴かれてしまうことになったのだ。ともに生きていく上で決して目をつぶれないのが、こういう場面における正義感の違いなのだ。

平和で、安全で、衣食足りている時代には、とても見えにくくなっている、人としての正義感。根っこの部分に博愛慈愛があるかどうか……。おそらく、戦争中は残酷なまでに丸見えになっていたもの。

しかし今の日常では、それこそ目の前で誰かが暴漢に襲われていたりしないと、自分自身の中に真の正義感があるのかないのかさえわからなくなっている。だからあるふりをすることも、さして難しくない。それがあの未曾有の出来事で、ホントのところが見え、少なくとも夫婦の間では露わになったはずなのだ。

 

焦って国外脱出を考える者。取るものもとりあえず被災地へ行かなくてはと思う者。子供の未来を最優先させる者。やっぱり仕事を最優先させる者。親との同居を考える者。逆に親が眼中になくなる者。そして〝妻との絆〟を深めようとする者。逆に愛がないこと、情がないことを露見させる者……。

あの当時、誰もが一種の錯乱状態にあったからこそ、20年30年連れ添った夫婦でも、今まで見せなかった色んなものを、一度に見せてしまう。だから本当の相性が問われ、離婚に発展したケースが少なくなかったのだ。

問題は今、ピュアな正義感をより多くもっているのが、むしろ女の方だったりすること。女は、身近な男の正義感を「もっと自分のことを考えて」と、泣きながら抑えるような立場でいたい生き物なのに、本当は。

どちらにしても、多くの妻はおそらく初めて考えた。自分の夫は、人として正しいか正しくないか? 正否を決めるのは、言うまでもなく、正義感をその気質としてもっているかどうか。あの時期、夫がまるで〝人が変わったように〟正しく見えなくなり、だから、突然〝嫌気〟がさしたりした。離婚の充分な動機になるほどに。