科学
結局、本当に「地球温暖化」って起きているんですか?
未来からの警告に迫る!
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臨界点は超えている?

観測史上初めて――最近しょっちゅう耳にする気象に関するフレーズだ。事実、この夏は、これまで台風被害とはあまり縁のなかった北海道や東北でも、大きな災害が立て続けに発生した。これはやはり、地球温暖化が原因に違いない。ニュースで気象予報士もそう言っているし……。

いや、温暖化などという生易しいものではなく、気候は暴走に向かおうとしている。そう警告を発しているのが『気候の暴走』だ。読み始めてすぐ、本書で紹介されている未来予測に、めまいがしそうになった。熱波や干ばつ、台風の巨大化や洪水といった気象災害の頻発はもちろんのこと、水や食料の不足、感染症の蔓延、海面と海水温の上昇、海洋の酸性化等々、挙げていけばきりがない。

このままだと、やがては数億人規模の気候難民が出現するという。しかも、気候変動は徐々に進むのではなく、臨界点に達すると急激に変わる。まさに気候の暴走だ。もしかしたらすでに臨界点を超えているのではないか。

そんな不安を覚えつつ本書を読み進めている中で、気になる言葉が何度か出てきた。いわゆる「温暖化懐疑論」がそれ。

本書は単に気候暴走への警告を発しているだけでなく、地球におけるこれまでの気候変動の歴史や今後の取り組みへの展望も述べられているのだが、基本的には、現在の急激な温暖化の原因は人為的CO2の排出にあり、温暖化懐疑論が入り込む余地はない、というスタンスを取っている。

温暖化は太陽のせい?

それはよいとして、根強く存在する温暖化懐疑論とはどういうものか、気になるのは確かである。そちらの主張にも耳を傾けておこうと思い、できるだけ新しい本(地球温暖化に関する議論は時間の経過とともに目まぐるしく変わっているようなので)を探してまずは手にしたのが『地球はもう温暖化していない』であった。

タイトル通り、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)の報告書が依拠している気候モデルへの疑問―現実の観測結果が気候モデルの予測から乖離している等―を示した上で、CO2が温室効果を持つのは事実であるものの、人為的CO2排出が温暖化の直接的な原因ではなく、そもそもCO2と気候変動は関係がない、と述べている。では、何が気候変動をもたらすのか。その主役は、CO2ではなく太陽活動だというのだ。

本書によれば、太陽の磁場が地球に届く宇宙線の量を決定し、それが地球上の雲の発生量を左右して気候変動をもたらすとのこと。そして現在、太陽活動は弱まる傾向にあり、結果的に雲の量が増え、今後の地球は、むしろ寒冷化する恐れがあるらしい。

地球温暖化論とは真っ向から対立する主張ではあるものの、たいへん説得力のある話だったので、さらに詳しく知りたくなって読んでみたのが『“不機嫌な”太陽』である。

宇宙線が雲の生成に影響を与えるという仮説を提唱したデンマークの研究者、スベンスマルクの著書なのだが、温暖化論争の枠を超えて純粋に面白い本だった。スベンスマルクの仮説が正しいならば、地球が誕生してからこれまで何度も繰り返されてきた温暖期と寒冷期の原因を、超新星の爆発や銀河系内における太陽系の軌道にまで求められることになる。

それはさらに、生命の誕生や進化にも関係してくるわけで、実に壮大な物語だ。ただし、この仮説が正しいという確証はまだ得られておらず、IPCCの報告書にも取り上げられていないようなのだが、何が真実なのか、残念ながら、一般読者である私たちには知りようがない。

少々混乱気味(私だけかもしれないが)の温暖化論争の背景にはエネルギー問題があるのは確かだ。そこで次に読んでみたのが『エネルギー問題入門』である。

本書はカリフォルニア大学バークレー校の物理学教授、リチャード・ムラーが行った科学講義をベースに、エネルギー問題に絞ってまとめられたものである。

「もしもあなたが将来一国の指導者になるなら、エネルギーがどういうものかを理解していなければなりません」という印象的な書き出しで始まる本書は、元になった講義が「学生が投票で選ぶベスト講義」に選出されただけあり、非常にわかりやすく、しかも偏りのない公平な内容になっていて、地球温暖化と気候変動についても一章が割かれている。その章自体もよく整理されているのだが、それにとどまらず、エネルギー問題全般について学ぶことができる、現状ではベストの一冊だろう。

実は、今回紹介した本を含め、この1ヵ月間で十冊以上地球温暖化に関連する本を読んでみた。しかし何が正しいのか未だにわからず、迷宮に踏み入ったような気分だ。ともあれ、科学的事実は民主主義や多数決で決まるものではない。おかげで、私の困惑はいっそう深まるばかりである。

熊谷達也(くまがい・たつや)
'58年、宮城県生まれ。東京電機大学理工学部卒業。'97年『ウエンカムイの爪』で小説すばる新人賞を受賞。'00年『漂泊の牙』で新田次郎文学賞、'04年『邂逅の森』で山本周五郎賞、直木賞を同時受賞。最新刊『揺らぐ街』(光文社)が発売中

『週刊現代』2016年10月8日号より