オリンピック
リオ五輪男子400mリレー歴史的快挙の裏にあった緻密な戦略と決断
神ワザ的なバトンパスの秘密とは?

「世界一のバトンパス」はあのボルトすら焦らせた。個人では勝てなくても、チームなら負けない。日の丸を背負った4人の侍は、リオで「一瞬の風」になった。

第一走者をつとめた山縣亮太選手が、二人の元100メートル日本記録保持者とともに、歴史的快挙の舞台裏を振り返る。

世界一も見えてきた

不破弘樹 今回リオ五輪で、日本は史上最多41個のメダルを獲得しましたが、陸上男子4×100mリレーの銀メダルはその中でも非常に価値が高いと思う。まさに歴史的快挙でした。

青戸慎司 思わず涙が出るくらい感動しましたよ。「日本人は短距離では勝てない」と言われ続けてきたけど、ずっとチャレンジをし続け、'08年の北京で銅メダルを取って、それをさらに今回一つ上げてくれた。日本のスプリントが世界で通用することを証明してくれました。

山縣亮太 先輩方にそう言っていただけると、ありがたいですね。僕は小さい頃から日本が北京でメダルを取るまでの過程をずっと見てきました。だから、そういう先輩たちの積み上げてきたものを今回、形にすることができてすごく嬉しいです。

青戸 私は銀メダルメンバー皆をジュニア時代に教えていましたけど、高校時代の山縣は「冬は夏のように体が動かないんです」なんて、かわいい質問をしていた。「そりゃそうだろ」って。そんな山縣が銀メダルを取るまでになるなんてなあ。

 

山縣 青戸さんにはジュニア合宿からずっとお世話になってきました。あの時代があったからこそ、今回の記録も出せたと感じています。

不破 リオでは皆素晴らしい走りだったけど、特に第1走者の山縣君が抜群のスタートを切って、いい流れを作ってくれたのが大きかった。

飯塚(翔太)、桐生(祥秀)とつないで、アンカーのケンブリッジ(飛鳥)にバトンが渡った瞬間はトップに立ったようにも見えた。さすがにボルト(金メダルのジャマイカ)には勝てなかったけど、あの瞬間「まさか世界一になっちゃうんじゃないか」と興奮したよ。

山縣 バトンを渡した後は、もう祈るような気持ちでしたね。

青戸 実は私は、前回のロンドン五輪が終わった頃、講演で「リオでは銀メダルを取る」って予想していたんですよ(笑)。

不破 まさに予想通りになったわけだ。

青戸 桐生が10秒01を出して、山縣もケンブリッジも10秒0~1台が当たり前の感じになっていた。それ以前の伊東(浩司)君とか、朝原(宣治)君の時代とは違って、複数人が9秒台に迫るのを見ていると、日本のスプリント技術や走力が相当上がっていると感じます。

山縣 僕たちも計算上、リレーなら37秒6台は出せると分かっていたので自信はありました。ただ、実際に本番でそのタイムを出せるかどうかは別問題。もちろん不安もありました。

バトンパスの秘密を明かそう

青戸 銀メダルの実感が湧いてきたのはどのあたりから?

山縣 表彰式でプレゼンターの方が「ビッグ・サプライズ!」と言ってメダルをかけてくれたんです。その時に、世界的にもすごいことをやったんだと、認められたような気がしましたね。

不破 日の丸の国旗を羽織ってのウイニングランは、日本中が快挙の余韻に浸ることができた時間だった。

山縣 レース後はみんなで抱き合って「これは夢じゃないよな」って喜びました。ウイニングランは初めての経験だったので、とにかく時間をかけて一周しようと。

青戸 ボルトから握手を求められていたシーンは、日本の男子短距離が世界と肩を並べた瞬間だった。彼からどんな言葉をかけられたの?