香港「裏ビジネス街道」を歩く~運び屋横丁、ボートピープル…
『クレイジージャーニー』裏日記⑧

「運び屋横丁」に潜入!

前回、香港のケージハウス・スラムに潜入した丸山ゴンザレス。次に向かったのは、中国本土とのヤミ取引が行われている「運び屋横丁」だ。

香港の底辺生活者たちを支えるアルバイトがあると聞いて訪れたのは、中国の広東省深圳との国境に近い「上水」という街だった。駅前にはショッピングセンターがあり、そのまわりに食堂や商店が並ぶ。行き交う人々も着飾っている様子はなく、中心部の洗練された都市感とは違って、中国本土の地方都市のような雰囲気であった。

なによりひときわ目を引くのは、大きなトランクやカバンを持った人が多いことだ。その光景を見ていると、私がこの場所を訪れたのが間違いでなかったことが証明されたようで、わずかに安堵したのだった。
 
ここには、通称「運び屋横丁」と呼ばれる通りがある。

香港から中国本土に様々な物品を手荷物として持ち込む人々が集まってくるという。以前は中国本土の人が多かったそうだが、最近では規制も厳しくなってきたので、香港人が増えているという。

運び屋横丁は、上水駅から10分ほど歩いたところにあった。細い路地を入ってそこで横に入ると、さらに細い路地がある。

そこにはカウンターが面してあり、奥には紙おむつなど様々な商品が置いてある。ドラッグストアに卸す問屋のような雰囲気だった。

カウンターの奥に中国語で殴り書きされたホワイトボードがあった。そこに「注意!!!」とあったのが気になったので写真を撮るためにスマホを向けた。

「カシャ」とシャッター音に店主が気づき、おそらく「写真を撮るな」的な意味合いの中国語で怒鳴られてしまった。トラブルを起こすわけにもいかず、すぐにその場を立ち去りはしたものの、店主はしばらくこちらを警戒して睨みつけていた。

離れた場所で撮影した写真を、すぐに中国語のできる知人にメールで送ってみる。「お金と荷物に関しての返金は受け付けないから注意して」というような内容が書いてあると教えてくれた。どうやら「運び屋横丁」はここで間違いないようだ。

儲かるの?危なくないの?

詳細が知りたいと思って、先ほど怒鳴ってきたオヤジから離れた場所をうろつくことにした。すると大学生っぽい若い男の子がいたので、アホな観光客が迷い込みましたという感じで話しかけてみることにした。

「あの~ここって何なんですか?」
「いや、あなたは?」
「日本からの旅行者です。このあたりを歩いていたら大きなカバンを持っている人がいたので、ホテルでもあるのかなと思って」
 
頭の悪そうな感じで笑いながら言ってみた。男の子は警戒心を解いてくれたようで、ちょっとはにかみながら話を切り返してくれた。

「ここにはホテルなんてないよ。商品の販売をしているだけだよ」
「お店には見えないけど?」
「ここでは、カバンいっぱいに商品を買ってもらって中国に行ってもらう。向こうの業者が買い取ってくれるんだ」

「へえ、儲かるのかな?」
「どうかな。君は日本人だろ?そんなにいい仕事だとは思わないけどね。それでも一回で250とか300 HKドル(約3200円~3900円)ぐらいの利益になるから、やりたいっていう香港人も多いんだ」
「危なくはないの?」
「よっぽど変なことしなければ大丈夫だよ。香港と中国を行き来する人は多いから」

聞きたいことが聞けたので、お礼を言って立ち去った。その後も注意して見て回ると、やはりトランクを持っている人が本当に多い。横丁の入口の路上では、トランクの中身を堂々と詰め直している人もいた。関税を回避して中国国内で販売する。れっきとした違法行為の片棒を担いでいるにしては、罪の意識が感じられない。

彼らはこのハンドキャリーを多い時で一日2~3回繰り返すそうだ。10000円ほどの収入になる計算だ。屋上スラムのようなところであればこれぐらいの収入でも暮らしていけなくはないし、夫婦で共働きならば十分な収入になるだろう。

余計な想像をしてしまったものの、この仕事には国境を越えるのでリスクがないわけではない。いまはまだお手軽な裏バイトではあるが、ある日突如として重罪に問われないとも限らない。そういう国を相手にしているのだということを、牧歌的な運び屋たちを見ているとつい忘れそうになってしまう。