今日が人生最後の日と思えば、生きるのがこれだけ楽になる
三千人を看取った病院長が気づいたこと

2月に発売されるや、半年足らずで20万部を突破した『今日が人生最後の日だと思って生きなさい。』(アスコム刊)なぜ、これだけ多くの読者の心を掴んだのか。著者でめぐみ在宅クリニック院長の小澤竹俊氏に話を伺った。

苦しみとの向き合い方が変わる

この本は、当初40代から50代の女性を想定して作りました。自身の死について考えることはなくても、人生の折り返し点を迎え、これまでの人生に少なからず後悔の念を抱き、「今の生き方は正しいのか」「この先どう生きていけばいいのか」と悩んでいる方が多いと思ったからです。

しかし、読者からの手紙を見ると、80代以上の高齢者のものや10代の高校生のものもたくさんありました。いずれも小さな字でびっしり書き込まれていましてね。それらを読み、「このテーマは世代を問わず、苦しみを抱えているすべての人に共通のものなのだ」と、あらためて思いました。人生について思い悩んだり、苦しみを抱えたりしている方が、年代を問わずたくさんいらっしゃるということかもしれません。

本書のテーマを一言で言えば「今日が人生最後の日だと思うと、人生のとらえ方、苦しみとの向き合い方が変わってくる」ということです。

本にも書きましたが、私は20年ほど前から人生の最終段階の医療に携わり、これまで2800人以上の患者さんを看取ってきました。死を迎えることは人間にとって究極の苦しみであり、誰にも避けて通ることはできません。

しかし一方で、この苦しみは、さまざまな発見も与えてくれます。死を前に人生を振り返ったとき、一人で抱え込んでいたことを手放せるようになったり、「自分にとって本当に大切なものは何か」「自分がいかに多くの人に支えられてきたか」「つまらないと思っていた自分の人生に、どんな意味があったか」に気づいたりするからです。

そうした気づきを得ることで、苦しみが和らぎ、人は自分の人生や自分自身を肯定し、穏やかな最期を迎えられるようになります。

【PHOTO】gettyimages

私がこれまで自分の仕事を通して学んできたことは、もしかしたら、悩みや苦しみを抱えながら今を生きている方にとっても、何らかのヒントになるのではないかと思いました。それが、本書を書こうと思ったきっかけです。
 
タイトルだけを見ると、「死を意識しなさい」というかなり強いメッセージに聞こえるかも知れませんが、ここで言いたいのは、あくまでも「今日が人生最後の日だと思うことで、自分の人生や自分自身の価値、自分にとって大切なものに気づくかもしれない」ということです。

人は生まれてきただけで、存在しているだけで価値があります。自分の行きたいところに行けること、ご飯が食べられること、「明日がある」と思えること。それらはいずれも、当たり前のように見えて、実は奇跡のように幸せなことです。そして、人には「生きる支え」となっているものが必ずあります。それは家族かもしれないし、恋人や友だちかもしれない。もしかしたら、嫌々やっている仕事が、実は支えになっているかもしれません。

私たちはふだんこうしたことを、あまり意識せずに過ごしています。人生の最後が近づいたとき、初めて自分自身や人生、日常、周りの人たちのかけがえのなさに気づく人もたくさんいるでしょう。でも、もし、元気に生きている間に「今日が人生最後の日だったら」と考え、自分にとって大切なものを知ることができれば、人生のとらえ方、生き方が少しずつ変わっていくはずです。

発売から半年以上が経った今でも好調なセールスを維持している(amazonはこちらから)

もちろん、常に「今日が人生最後の日だったら」と考えながら生きることはできませんが、時折、そうした意識を持つことで、今までは平凡でつまらないと感じていた人生が輝いて見えたり、「絶対に譲れない」とこだわっていたことが、実はたいして重要ではないと気づいたりするのではないでしょうか。