映画版監督と漫画版作者の共演!『海賊とよばれた男』はココがスゴい
紙と映像、こんなに違うから面白い

「女子目線」の重要性

総計400万部超えのベストセラ―『海賊とよばれた男』の映画が12月10日に公開される。映画のクランクアップを記念して、監督を務めた山崎貴さんと、漫画版『海賊~』の作者・須本壮一さんの対談を特別公開!

須本 先日、早速『海賊』のラッシュ(※音楽やCGが完全な状態で入っていない未完成の映像)を観させていただきました。とても感動しました。『海賊』の映画化の依頼が来たとき、どのシーンを重点的に作ろうと考えたんですか?

山崎 すごく悩んだんですけど、あの時代にイランに行く日章丸(※映画では日承丸)っていうのを観たかったんです。ちょうど今漫画でも描かれている所ですね。

須本 はい、そうです。

山崎 あの時代のあの状況の中で、どういう気持ちで、国岡商店虎の子のタンカーをイランに送り出したのか。やっぱり、そこに魅かれまして。映画を作るという事で追体験できるんじゃないかなっていう思いはありました。この映画を作る上で、それが一番大きなコアでしたね。

須本 なるほど。僕も今ちょうど日章丸のシーンを描いていて、ここがクライマックスだと思ってるものですから、どんどん日章丸編のボリュームが増えていって…(笑)。

山崎 でも、漫画では日章丸だけじゃなく、いろんなキャラクターたちにもドラマがあって、感情が入って盛り上がりますよ。東雲とか長谷川(※映画では長谷部)とか。新田(※映画では盛田)船長もかっこよく登場してましたし。

須本 あ、あれはちょうど映画のキャスティングが決まった後で、新田さんのビジュアルを決める段階だったので、「あ、堤真一さんがモデルでいいよね」と(笑)。

山崎 (爆笑)。それでいうと、岡田君を60代の店主にしたら、漫画の店主に似ちゃって、「真似してるって思われたらどうしよう」と。たまたまなんですよ。似せようと思ったわけじゃないんですけど、「これいくらなんでも須本さんの漫画に似すぎちゃってるよな、やばいやばい、髪型だけでも何とかしよう」と思いました。

須本 (笑)。漫画の方はキャラクター担当の女性編集者がいまして。内容以外にキャラデザでNGを出されるんですよ。

山崎 ああ、女子目線ですね。すっごい大事です。

須本 (笑)。店主も最初は実在の人物に似せて描いたんですけど、ダメ出しが。

山崎 これじゃ萌えないと。

須本 (笑)。「かっこよく描いてくれ」と言われまして、さんざん描きなおした結果、あの店主になったんですよ。

山崎 なるほど。映画だと逆で、店主を岡田君でやるとなった時に、かっこよくなっちゃうなという心配が大きかったんですよね。鐡造は、けっこう泥臭い人なんですけど、岡田君が演じるとすごく立派で、かっこよすぎる人になっちゃうんじゃないかと。すごく立派な人っていうのは、あんまり映画にならないんですよ。

須本 そうなんですね。

山崎 立派すぎて隙がないというか。だから何か弱みとかダメさとか、そういうものを入れていかないとなとは思うんですよ。でもみんなが、特に女子が思う鐡造さんのイメージってこういう感じなんでしょうね(単行本を持ちながら)。

撮影/大坪尚人

須本 確かに映画の鐡造は見ていてかっこいい、立派なだけじゃなかったですよね。たとえば門司の国岡商店での食事のシーン。ユキがお嫁さんにきて朝食を作って皆で食べるじゃないですか。皆が「おかわりおかわり!」て言ってる所に、鐡造が割って入って「俺の方が先だ」みたいな、ああいうやんちゃな人間臭いシーンはいいですよね。あれを漫画で描くとNGが出る可能性があります(笑)。

山崎 でも、やっぱり女子の意見は大事ですよ。『海賊』は、ビジネスマンの方たちには、わりと興味を持ってもらいやすいと思うし、そういう方たちはおそらく観に来てくださると思うんですけど、やっぱり女子にも観てほしい。そういう時に女子の意見っていうのは、すごく大事だなぁと思うんです。実は僕、(鐡造の後妻の)多津子の扱いに関して女子スタッフ全員に取り囲まれて「脚本変えろ!」って言われたんですよ。

須本 ええ! そうなんですか!?

山崎 記録係の方を筆頭に女子皆から「ちょっとお話があるんですけど」と言われて話を聞いたんです。そしたら、あるシーンの鐡造の言葉が多津子に対してあまりにひどすぎると。「こんな発言はありえない!」って言われて。女子が皆言うんだから、きっと正しいんだろうなと思って。「わかりました、変えます」と。

須本 (笑)。

山崎 だから女子のキャラチェックシステムがあるのは羨ましいですよ。