不正・事件・犯罪
東芝の元社長らを刑事告発に追い込む、ある男の「意地と執念」
検察が動かないなら…

否認しても立件は可能、と判断

佐渡賢一・証券監視委員会委員長の「本気度」は、いくら検察が東芝3元社長の刑事告発を門前払いにしようと、揺るがなかった。

東芝の不正会計問題を調査している証券監視委は、西田厚聰、佐々木則夫、田中久雄の3元社長が、粉飾を認識していた疑いが濃厚だとする調査結果をまとめ、検察に伝えた。今後、3元社長の事情聴取を始め、検察との間で告発協議会を開き、刑事告発する。
 
検察は今年7月8日までに、「歴代社長の刑事責任を問うことは困難」とする見解を証券監視委に伝えた。普通ならそれで折れるところだが、「東芝粉飾決算を見逃せば、日本の企業社会は粉飾天国と見なされ、国際的な信用失墜につながる」という佐渡委員長の強い意志のもと、調査は継続してきた。
 
両者の水面下の争いを、私は本コラムで「『なぜ東芝不正会計を立件しないのか』証券監視委トップが検察に激怒でバトル勃発!」(http://gendai.ismedia.jp/articles/-/49296・7月28日配信)と題してお伝えした。
 
その後の粘り強い調査の結果、財務担当者などへの聴取を繰り返したことで、3元社長が主導して四半期ごとの決算期末に多額の利益をあらかじめ計上していたことが、会議を記録した音声データや証言から裏付けられた。つまり、証拠も証言もある。
 
それをもとに3元社長から聴取。たとえ3元社長が否認しても立件は可能というのが証券監視委の見解である。

昨年7月、「不正会計」を受けて謝罪をする東芝首脳陣【PHOTO】gettyimages

検察協議会は、事件化へ向け、刑事告発を前提に事前にすり合わせたうえで開くから、本来は形式的なものに過ぎない。今回のように見解が分かれたまま、ぶつかり合いの協議をするのは異例。

しかし佐渡委員長は、検察が受理せざるを得ない材料は整っているとしており、「(今年12月の)任期中までには受理させる!」と、豪語している。

ここまで佐渡委員長が意地になったのは、証券監視という職務以外に、捜査もせず受理もしない検察への根深い不信がある。

「腰抜け集団」

それは証券監視委だけでなく、「受理して起訴」してもらう立場の警察、国税、公正取引委員会などにも共通しており、そうした捜査・調査機関の動向を追うメディアの記者も同じ思いだ。

そんな気分を表したのが、会員制総合月刊誌『選択』(9月号)が報じた「無駄飯喰らいの『東京地検特捜部』 巨悪は『叩かない』腰抜け集団」という記事だろう。

この記事は、2010年の大阪地検特捜部の証拠改竄事件を機に「特捜改革」に踏み切った検察が、甘利明・元経済再生担当相の事務所が移転補償金増額目的のブローカーから現金を授受していた問題など、立件が当然と思える事件も不起訴にしてしまう末期症状を過不足なく描いていた。

そうした不満と不信は、検察当局にも伝わっている。

折りしも9月5日付け人事で、法務・検察の中枢は入れ替わった。トップの最高検検事総長には西川克行氏、東京高検検事長には田内正宏氏、東京地検検事正には堺徹氏が、それぞれ就いた。8月5日付けで東京地検特捜部長に吉田安志氏が就任しており、検察捜査を担う縦ラインは一新した。

記者会見に応じた西川、田内、境の3氏が、検察改革の必要性にふれ、成果はあがっていると自賛しながらも、「悪い犯罪者をのさばらせないことが必要。特捜部が本来の仕事を遂行し、成果を上げなければ検察改革は実現したとはいえない」という田内検事長の発言は、内外の厳しい目を意識してのことだろう。

問われる検察の存在意義

福岡高検検事長を最後に検事を退官、証券監視委委員長となった佐渡氏は、3期9年、委員長を務め、東芝事件を「最後の仕事」と考えている。

もっとも、最初から刑事事件化を考慮していたわけではない。