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大人気!いま飲みたい新世代蔵元の絶品日本酒
ソムリエがオススメ銘柄教えます

飲み会ではビールやハイボールばかり? そんなのもったいない! おいしい料理をいただく特別な日には、ぴったりな日本酒をチョイスしませんか?

全国の酒蔵が買ったという『日本酒ドラマチック 進化と熱狂の時代』から、シーン別に楽しめるオススメの日本酒を一挙にご紹介します。きっとあなたに合う最高の日本酒に出会えるはず!

 

進化を遂げた日本酒

日本酒を楽しむシーン。どんなイメージを思い浮かべるだろうか。居酒屋、寿司屋、和風旅館……それだけ? たとえば、イタリア料理を楽しもうというとき、あるいは夏のビーチで仲間とバーベキューをしようというとき、日本酒はふさわしくないと考えていたらもったいない。

進化したいまどきの日本酒は、驚くほどバラエティ豊かだ。上質な酒米を使って醸し、管理も行き届いているので、飲んだ後のキレがすっきりと軽く、和食はもちろん、肉料理や揚げ物、スパイシーな料理まで幅広く合わせることができる。

たとえばシュワシュワと微発泡する爽快な日本酒で乾杯し、バルでピンチョス(一口料理)をつまみながら、爽やかな日本酒をワイングラスで楽しみ、酸の効いた日本酒で熟成肉をがっつりと堪能。

食後には、ソフトな甘みのある日本酒をチーズやフルーツと共に、ロマンチックに過ごす。あるいは、旨い干物をつまみながら、お燗酒を炬燵でゆるゆると晩酌……。こんな風にシーンや食に合わせる悦楽を、日本酒だけで体験できるのだ。

しかも値段は、4合(概ねワインのフルボトルサイズ)で、1000円代で手に入るものがほとんど。なんとも幸せな時代になったことか。

とかく日本酒ファンは、製造方法とか、使用酵母などスペックにこだわりがち。だが、多彩なタイプのお手頃価格の日本酒が目白押しのいま、食べたい料理や飲むシーン、その日の気分などで、もっと自由に、おおらかに日本酒選びを遊んでもいいのではないか。

そこで、以下、味やタイプを知るためのキーワードとともに、人気絶好調の新世代蔵元の作品を紹介する。また、気軽に参加できる日本酒の会に関する情報も記した。あなた好みの美酒に出会うために、参考にしていただければ幸いだ。

※2016年5月時点の情報です。価格はすべて税別の表記です。酒造年度により、内容や価格が変更される場合があります。地域により価格が変わる場合があります。

〔PHOTO〕iStock

甘さで攻める冩樂(福島県)

「冩樂」純米吟醸 播州愛山。甘さを軸としたきめ細かくバランスのいい味。チャーミング! 720ml 1850円 撮影/山同敦子

「甘みは冩樂の要です。いい甘さを出すために、攻めの姿勢を貫きます」

宮泉銘醸4代目蔵元、宮森義弘さんの酒造りである。

〝甘い〟が、日本酒をけなす言葉だったのは過去のこと。「冩樂」に代表される甘い酒は、トレンドの味であり、宮森さんはノリのいい愛されキャラとしてモテモテ。

福島県は全国新酒鑑評会における金賞受賞数で、ここ4年連続1位の4連覇。酒も、人も、郷土も絶好調!現代の日本酒人気を牽引する象徴的な存在だ。

「冩樂」と過去の甘い酒が違うのは、飲み心地の軽さと透明感にある。甘さを軸としているのだが、飲んだあとに甘さがべったりと重く残ることはない。すんなりと綺麗に収まる。

背景には透明感のある酸の存在を感じさせ、甘さとのバランスが極めて良い。それでいて人を突き放すような優等生的な冷たさはなく、愛嬌があるのだ。

めざす甘さを出すために、宮森さんは、ブドウ糖の一種であるグルコースがたくさん出る種麹を使っている。こういった種麹を使うと、もろみを搾ったあとの酒粕に黒いつぶつぶが入る。

宮泉銘醸 宮森義弘さん。 昭和51(1976)年生まれ。 撮影/山同敦子

酒粕の商品価値が下がるため、慎重になる蔵元は多いのだが、宮森さんは、甘さに対して攻めの姿勢を貫いている。黒くなった酒粕は、引き取ってくれる漬物店を必死で探したという。

透明感を出すためには、発酵の際に精密な温度管理をするのはもちろん、酸化による劣化を避けるため搾りも低温で行い、搾ったあとはすぐに火入れ殺菌して急冷することを徹底。

蔵の中の随所に仕込み水を使えるように水道を引き、ミクロン単位のフィルターを通し、すぐに洗い流せるようにしている。

甘くて、綺麗で、愛嬌のある「冩樂」は、これまで日本酒を敬遠していた人や、初めて日本酒を味わう人にも、抵抗なく受け入れられるだろう。

酸で切り込む仙禽(栃木県)

「クラシック仙禽」。 亀ノ尾と愛山。魅惑的な酸と緻密な味に魅了される。共に15度の原酒。 720ml 1500円、 1.8l 3000円 ※現在、愛山は終売 撮影/山同敦子

「食べ物と酒を繋ぐ役割をする酸。酸は、仙禽の生命線です」

せんきん専務で11代目継承予定の薄井一樹さんは、自らの酒質設計についてこう語る。

酸=酸っぱいと考えがちだが、必ずしもそうではない。酸には酒の味の骨格を形成したり、味を引き締める役割もある。

肉類を多く食べるようになった日本の食卓に、脂を切る酸が求められているとも言われている。

だが、かつて日本酒に酸があることは、悪とされてきた。冷蔵設備が整っていなかったころ、酸は酒造りに失敗したときに出る味だったのだ。

しかし現代の酒蔵では技術レベルも上がり、品質管理が行き届いている。出てしまう酸ではなく、精妙な酒質設計のもとに、あえて酸を出す醸造家がいる。その最右翼が薄井さんである。

文化3(1806)年創業の老舗蔵の長男として生まれるが、ソムリエの田崎真也さんに憧れ、ソムリエスクールへ入学。卒業後は講師として活躍したが、2003年、家業に就き、弟の真人さんと共に品質路線へと方向転換する。その際に、酸をテーマに設定した日本酒で切り込んでいった。「酸がある酒は駄酒と言われていたのを逆手に取り、一発逆転を狙ったんです」

日本酒の常識を覆すほど濃厚な甘酸っぱさに、賛否両論が渦巻いたが、結果的に存在を猛アピールする結果となる。薄井さんの戦略勝ちであった。

せんきん  薄井一樹さん。昭和55(1980)年生まれ。  撮影/山同敦子

その後リリースした、雄町や亀ノ尾など、地元で契約栽培した酒米で仕込んだ「クラシックシリーズ」は、旨みと酸が精妙に拮抗する佳品として、それまで「仙禽」をインパクト勝負の酒だと疎んじていた層も注目。

また原酒で15度という低アルコールで、緻密で奥深い味わいにしたことで、酒販店や飲食店などプロたちの間でも話題になった。

「酒が上質なのは当然。上質なだけの酒なんて誰も望んでいないはず。酸が基調なのは変わりませんが、毎年レシピは変え、新しい味を提案していきます」
さて、今年の「仙禽」は、どんな酸で切り込んでくるのだろう。