気をつけろ!60すぎたら、歯をみがいてはいけない
ゴシゴシやると、なんと寝たきりの原因に

長寿大国ニッポン。しかし他国に比べ、「歯」がボロボロな高齢者が多いという。人生を最後まで楽しく過ごすためには、歯の健康が必要不可欠。臨床歯科の第一人者が正しいケアの方法を語る。

アルツハイマーも進行する

「寝たきり」になる原因が、実は「歯」にある。こう言うと驚かれるのですが、日本にいま100万人以上の寝たきりの人がいるのは、多くの人が誤った歯みがき習慣を身につけていることが大きな原因であると私は考えています。

実は、一日3回の「食後の歯みがき」が、歯や歯ぐきにダメージを与え続け、歯の喪失だけではなく、ひいては全身疾患のリスクを高め、深刻化すれば寝たきりになってしまうのです。

「歯みがきをまめにする」というのは、子どもの頃から教え込まれてきた「大常識」のように思える。口臭や虫歯を防ぐために、歯ブラシで歯や舌を丹念にブラッシングする。しかし、『歯はみがいてはいけない』(講談社+α新書)の著者である京都・竹屋町森歯科クリニックの森昭院長は、それは「大きな誤解」だと指摘する。

口の中には約100億もの細菌がいて、口内状態が悪い人だとその数は1兆を超えます。

そのなかのひとつがいわゆる「虫歯菌」で、歯の表面を溶かし、虫歯を作るものです。この虫歯菌以上に恐ろしいのは、歯と歯ぐきの間に入り込んで炎症を起こす「歯周病菌」です。

歯周病菌は口内の毛細血管を通じて血管内に侵入します。その一部は血管壁で炎症を引き起こし、最終的には血栓を作る原因となります。この血栓が、脳卒中や心筋梗塞といった、重篤な疾患を引き起こすのです。

さらに、歯周病菌は肥満や糖尿病と深い関係があることも明らかになっています。歯ぐきの炎症から産生される物質が、肝臓に脂肪を沈着させ、脂肪肝や肥満を引き起こす。また、血糖値を下げるインスリンの働きを阻害し、その結果糖尿病になるという仕組みです。

加えて、最近の研究では、歯周病菌がアルツハイマーの進行を早めるという結果もあります。歯の本数が減ると噛む力が弱くなり、認知能力が衰えることは以前から言われていますが、歯周病菌自体も認知能力に直接影響を与えるのです。

脳卒中に糖尿病、そしてアルツハイマーといえば、重篤化すれば寝たきりになるリスクが高くなる恐ろしい病である。歯周病菌を甘く見ると、人生を棒にふる可能性が高まるのだ。それならば一刻も早く歯ブラシでそれらを「除去」したいと思ってしまうが、そこが落とし穴。下手に歯をみがくと「命の危険に繋がるリスクすらある」と森氏は指摘する。

歯ブラシに歯みがき粉を付け、ゴシゴシと歯をみがく。できれば毎食後すぐ、1日3回する。これを「理想の歯みがき」と思っている人は多いでしょうが、これは「大間違い」なのです。

市販の歯みがき粉は使うな

歯や歯ぐきに粘着するプラーク(歯垢)と呼ばれる物質を除去することが、口内ケアではなによりも重要です。なぜなら、このプラークが、脳卒中などの重大な疾患の引き金となる歯周病の原因となるからです。

ところが、多くの人はこのプラークの存在をまったくと言っていいほど意識せず、「虫歯にならないために」、口内にこびりついた「食べかす」を歯みがきで落とすことに躍起になっています。

確かに、歯みがきで「食べかす」を落とすことはできますが、プラークの除去という意味では不十分です。それどころか、歯にとって恐ろしいデメリットもあるのです。

そのひとつは、歯みがきで「歯が削れてしまう」ことです。歯は食事をしたあと、リンやカルシウムが唾液に溶け出し「軟らかく」なります。そのとき歯ブラシの毛先が当たると、歯が削れて知覚過敏になります。

多くの人は、歯みがきの時にしみるような痛みを感じると、「虫歯なのでは」と疑い、より強く歯をみがくようになります。これは逆効果で、強くみがけばみがくほど、歯は削られていくのです。人によっては、歯の根元が楔状にえぐれてしまうこともあります。

さらに問題なのは、食後すぐの歯みがきにより、唾液が持つ効能を得られなくなることです。

実は唾液には、食後軟らかくなった歯の表面を修復する働きがあります。また、唾液には強い抗菌作用があり、歯周病菌をはじめとする口内細菌を除去する役割があります。

食後は、食物を消化するために最も多く唾液が分泌される瞬間です。それを、歯みがき粉とともに洗い流して吐き出してしまうのが「食後の歯みがき」なのです。

中高年から高齢者の人は、特に歯みがきには気を付けたほうがよいでしょう。というのも、年を取るにつれて、人の唾液の分泌量は少なくなっていくからです。また、歯や歯ぐきもかなり弱っているので、強いブラッシングで歯が傷つくリスクが高くなっているのです。