経済・財政
ドイツ銀行の株価急落は何を意味しているか? ユーロ圏を覆った暗雲
金融緩和と銀行経営の関係

ユーロ圏の景気は依然として不安定

9月16日、欧州株式市場で、世界有数の金融機関であるドイツ銀行の株価は8%超下落した。これは、米国の司法省が巨額の賠償を同行に要求したことを受けた株価下落だ。

この日、不良債権問題の動向に関心が集まるイタリアの銀行モンテ・デイ・パスキ・ディ・シエナも取引の序盤から大幅に下落し、年初来の最安値を更新した。

それぞれの銀行の経営状態に加え、ユーロ圏の銀行セクターの株価は欧州中央銀行(ECB)の金融政策にも影響されてきた。本年2月には、マイナス金利の影響によって収益が低下し、債券利払いへの懸念が高まったことからドイツ銀行の株価が急落した。それが世界同時株安につながったことは記憶に新しい。

今後の景気、金融政策の動向次第では、再度、欧州地域の金融機関を巡るショックが発生する懸念は払拭しきれない。9月の理事会でECBは様子見姿勢を取っているが、ユーロ圏の景気は不安定であり、追加緩和観測は高まるだろう。

さらに金利低下が進んだ場合、ユーロ圏の銀行株に対する売り圧力は高まりやすく、それが先行きへの懸念に波及する可能性がある。

9月8日のECB理事会ではドラギ総裁は追加緩和に対する明確な指針を示さなかった。 〔PHOTO〕gettyimages

不安定な動向を示すユーロ圏の銀行株

6月23日、予想外に英国のEU離脱が決定した後、ユーロ圏の銀行株は急落し、年初来の安値を付けた。その後、市場の混乱が短期間で収束すると世界的な株価の上昇に支えられて、ドイツ、イタリアなどの銀行株も持ち直した。おおむね8月下旬まではユーロ圏の銀行株は堅調に推移してきた。

9月に入ると状況は一転し、銀行株は下落基調で推移している。その一因は、2月の利払い懸念に続き、ドイツ銀行の経営に対する不安が高まったことだ。

8月31日、ドイツ銀行が独大手行のコメルツ銀行との合併の可能性を検証していたことが報道された。ドイツ銀行の経営陣はこの報道への言及を避けたものの、経営規模の縮小を検討していると説明した。

市場に大きなショックには至らなかったものの、この報道を境にユーロ圏の銀行セクターの株価は下落し始めた。その背景には、ドイツ銀行が自力で経営を再建することが困難になっているとの懸念がある。2008年9月15日に経営破綻したリーマンブラザーズが、他行との合併交渉に失敗し、最終的に破綻したことを思い出した投資家もいたのではないか。

世界の大手行の中でも、ドイツ銀行はシステミックリスクに与える影響が最も大きいと指摘されている。それだけに、合併をも含む事業再編が検討されていたことは、ユーロ圏全体の銀行システムの再編が迫っているとの不安を高めたとも考えられる。

そして16日、米司法省は過去にドイツ銀行が取り扱った証券化商品の販売に不正があったとして140億ドル(約1.4兆円)の和解金を要求した。この問題がどう解決するかは不透明だが、一部アナリストの予想に比べ、請求された額は3倍程度多かったとみられている。これを受けて、投資家はドイツ銀行の業績悪化を懸念し、株価が大きく下落した。

このように考えると、ドイツ銀行の株価下落は同行固有の要因に影響されていると思われるかもしれない。しかし、銀行株の下落に影響しているのは個別要因だけではないはずだ。