選挙 メディア・マスコミ
日本人は改革のアイコンを「坂本龍馬」にしないほうがいい
「違和感」を大事にしてみよう

「結局、社会って変えられるんですか?」

ブロガー議員として舛添元都知事を追及した都議会議員のおときた駿さんと、長年待機児童問題に取り組むNPO法人フローレンス代表理事の駒崎弘樹さんの対談。

「溺れる赤ん坊のメタファー」「社会を変えるきっかけ」「現実的なネゴシエーションの必要性」などが語られた前編に続き、一人ひとりが「社会を変える」ためには何が必要なのか、具体的なヒントが共有された。

前編【「結局、社会なんて変わらない」という私たちの思い込みをまず壊そう】はこちら。

文・構成/朽木誠一郎(有限会社ノオト)
都議会議員のおときた駿さん(左)と、NPO法人フローレンス代表理事の駒崎弘樹さん(右)

とりあえず飛び込んだ普通の人がヒーローに

望月:ここまでお話を聞いていて、やっぱりおときたさんや駒崎さんはすごい人だと思ってしまうんですが、僕のように普通の人でも社会を変えることはできるのでしょうか。

駒崎:日本の歴史をつぶさに見ていくと、民間からのボトムアップで社会を変えた事例は多々あります。例えば沖縄返還だって、末次一郎という社会変革家がいなかったら成し遂げられていないかもしれないんですよね。沖縄会議(注:沖縄返還に決定的な役割を果たしたとされる「沖縄およびアジアに関する日米京都会議」)をセットアップした民間人です。

でも、それは歴史上忘れ去られていて、ノーベル平和賞は当時首相だった佐藤栄作になっている。政治家だけが社会を変えられるわけじゃなくて、名もなきヒーローたちがあちこちに骨を埋めている。それを我々は知ったほうがいいし、知るだけでも勇気づけられると思います。

おときた:日本人は改革のアイコンを坂本龍馬にしがちですけど、あれ、マジで止めた方がいいですよ(笑)。到底届かなくて、そこで諦めちゃうから。

駒崎:むしろファースト・ペンギンを目指してほしい。ファースト・ペンギン、つまり氷山から海に一番先に飛び込むペンギンは、トドに襲われる確率が一番高いと言われているんですね。でも、行かないとみんなエサがなくなって困る。「どうしよう」となったときに、「じゃあ最初、オレ行くわ」と言って飛び込むヤツが必要なんです。

おときた:しかもこのネットの時代だからこそ、僕のように、これまでなら世に出られなかったような人間でも地殻変動を起こせるようになっている。これはチャンスだと思うんですよね。

駒崎:うん。みんながヒーローになれる社会であってほしいですね。

望月:「何かいいことをしたいけれど、それが見つからない」ということもあります。問題意識の対象って、漠然と「見つけたい」と思っていて見つかるものですか?

駒崎:それは「違和感」が大事だと思います。僕は最初、保育園事情に詳しくなかったし、そもそも子どももいなかった。

でも、うちの母親から「子どもが熱を出しても、あそこの保育園では預かってくれないんだよね。だから、仕事を休みすぎてクビになったお母さんがいるんだ」と聞いたときに、「え!?」と思ったんです。

「そんなバカなことが、この21世紀にあるわけ!?」という違和感。言い換えれば怒りの感情なんですが、実はこれがすごい財産であり、幸運でもあるんです。

おときた:その違和感を大事にするという意味で、僕は生煮えの状態でも世の中に問うてみるのがいいと思っています。「これはおかしいんじゃないか」とブログで発信すると、親切な誰かが「いや、それはこういうことだよ」と教えてくれる。そうすると自分の中で知識が形成されてきて、やがては概ね正しい解にたどり着く。

駒崎:あとは、「ライフワークを絶対に見つけなきゃいけない」と気を張る必要もなくて、ちょっと町内会やPTAに参加してみようかな、というレベルでいいと思います。

とりあえず飛び込んで、経験してみるということを積み重ねるうちに、自分はやっぱりこれが気になるんだなというのが、ぼんやりとながら浮かび上がってくる感覚です。自分の気の赴くまま、その方向に進めばいいのではないでしょうか。

おときた:そういうときは、なるべく1人とか2人、少人数で飛び込むといいですよ。大人数で行くと甘えちゃうので。もちろん、最初から仲間がいればいいですけれども、それが見つからないから一歩を踏み出しにくいわけじゃないですか。

駒崎:さすが1人で都議会に飛び込んでいって、奥さんをゲットしただけのことはありますね。

(会場笑)

イシュー・レイジングのすすめ

望月:おときたさんや駒崎さんみたいに、「大きな声で正しいことを言っていこう」とする人たちがいる業界は恵まれていて、やっぱりそれ以外の業界では問題がなかなか表に出づらいなんて事情はあると思います。社会に問題を提起するには、どうすればいいのでしょうか。

駒崎:僕らの前の世代でいう「環境問題」が参考になると思うんです。みなさん今、「エコ」って当たり前の言葉だと思っているじゃないですか。でも、エコという言葉は、人工的に作られた、ある意味ではマーケティング用語なんです。

こういうの、イシュー・レイジングと言うんですけれども。イシュー、つまり環境問題を一般に知らしめるには、こういうとっつきやすい言葉がないと、広がりは生まれません。「エコ」の前はどう問題提起されていたか、みなさん知っていますか?

望月:なんでしょうか。

駒崎:「公害」だったんですよ。そうすると、やっぱりみんなちょっと引いちゃって、一部の人しか取り組めない。そういう回路って、実は社会変革家の人たちが一生懸命用意したものなんです。そうすることによって、いろんな企業も政府も乗っかりやすい。だから、いかにみんなが乗っかれる形でイシューを表に出すかが大事だと思いますね。