国際・外交 ロシア
あのプーチンが米軍基地に降り立ったら…官僚がいま頭を抱える難題
日露首脳会談をめぐる不安

プーチンは米軍基地を利用できるか

安倍晋三首相は12月15日、地元・山口県長門市の高級温泉旅館「大谷山荘」にプーチン・ロシア大統領を迎え、日露首脳会談を行う。

だが、首脳会談のロジを担う外務省と警察庁が現在、頭を抱えている問題がある。まず、ロシア大統領専用機IL(イリューシン)96の離着陸の空港をどこにするのかということである。

候補空港は、山口宇部空港と北九州空港の2つである。両空港共に滑走路は2500m。だが、厳密に言えば、3つある。

オバマ米大統領は先の伊勢志摩サミット出席後、広島を訪問した。その際、米大統領専用機エアフォース・ワンは中部国際空港経由で米海兵隊岩国航空基地を離着陸に使った。

そしてオバマ大統領は同基地から大統領専用ヘリコプター、マリーン・ワンで広島入りした。ちなみに米海兵隊岩国航空基地の滑走路は2440m。

この米海兵隊岩国航空基地は海上自衛隊も使用しており、海上自衛隊岩国航空基地と称している。さらにANA(全日空)も使っており、岩国錦帯橋空港という愛称で知られる。要は、軍民共同空港なのだ。

プーチン大統領が乗るIL96はエアフォース・ワンよりやや軽量なので山口宇部空港、北九州空港に離着陸できないはずがない。

ただ、航空関係者は次のように説明する。ロシア製旅客機の性能に関するデータが不十分としたうえで、例えば、プーチン大統領が山口宇部空港からロシアに直帰するためには燃料を満タンにする必要があり、重すぎて離陸できないと言うのだ。滑走路が短いということである。

オバマ大統領を乗せたエアフォース・ワンは岩国航空基地を発ち、実は東京・横田米空軍基地で給油してワシントンに直行した。

プーチン大統領の12月訪日は公式訪問である。そこで今、急浮上したのが東京立ち寄り案である。だが、同大統領が東京に立ち寄るとなると天皇陛下主催の晩餐会出席という公式行事の日程調整も必要である。

しかし、山口宇部空港から羽田国際空港に向かうのであれば、燃料を満タンにする必要がなくなる。プーチン大統領の山口・東京訪問ということであれば、その心配は解消する。

もちろん、ロシア大統領専用機が岩国錦帯橋空港(米海兵隊岩国航空基地)に飛来し、帰国は羽田国際空港経由でモスクワに戻ることになれば、飛行プラン上問題はない。ただし、プーチン大統領が果たして米軍基地を利用する“勇気”を持ち合わせているのかということに外交当局は不安を覚えている。

〔PHOTO〕gettyimages

自衛隊のヘリには乗れる?

次に、長門市入りは陸路どのルートを使うのかである。山口宇部空港からは国道316号を一直線だ。北九州空港からは関門海峡を経て中国自動車道を突っ走り、美祢西ICを降りて316号で長門市へ。岩国錦帯橋空港からは山陽自動車道を経て316号を利用することになる。

警察サイドは、2県警本部が関わることになるが、警備の観点から北九州空港を求めているとされる。

ヘリ使用説もある。その場合、2800m滑走路の福岡空港を離着陸にして、同空港から一気にヘリで長門市に降り立つ。では、ロシア側が大統領専用ヘリを準備できるのか、そしてプーチン大統領が日本の自衛隊ヘリに乗ることに同意するのかという問題がある。

いずれにしても、外国元首の地方訪問はクリアすべき難題が多いのだ。最後に、なぜ日露首脳会談の会場が下関市の「春帆楼」ではなく、長門市の「大谷山荘」になったのか、である。

当初、外務省が「春帆楼」を検討・準備していたのは事実である。しかし、以下3つの理由で「大谷山荘」になった。

①プーチン大統領が強く温泉を希望した(「春帆楼」は温泉が出ない)
②「大谷山荘」のオーナーが安倍晋三首相後援会の有力者(山口県観光協会会長)である
③「春帆楼」の地主が林芳正元農水相一族である――。安倍晋太郎元外相・晋三父子と林義郎元厚相・芳正父子は中選挙区時代の因縁のライバル。

歴史的会談になるかもしれない安倍・プーチン会談の会場は、こうして決められたのである。