金融・投資・マーケット ライフ
「長期金利上昇」はこう考えよ! 投資家が気にするべき2つのこと
日米における影響の違い

長期金利は経済の体温計?

お金の運用の入門書やセミナーなどで、筆者は、「毎日一回、日経平均、為替レート、NYダウ、に加えて長期金利をチェックして下さい。毎日、10秒くらいでも、どうして動いたのか、今後どう動くのかを考えると、マーケットと経済を考える思考のスイッチが入るようになります」と言ってきた。

長期金利とは、通常10年国債の市場での流通利回りを指す。

内外の株価と為替レートに加えて、長期金利を付け加えた理由は、債券市場が大きな市場でお金の運用に大きな影響を与えることに加えて、長期金利が経済の状況をよく映す、経済の体温計のような役割を果たしているからだった。

日銀が長らく短期金融市場におけるゼロ金利政策をとる中でも、長期金利は、短期金利に影響されつつも、市場で形成されていた。十数年にわたって、2%を超えられなかった日本の長期金利は、デフレ状況の日本経済がいわば「低体温症」にあることをよく表していたが、それでも、経済状況に応じて変動していた。

ところが、黒田東彦氏の日銀総裁就任以来、いわゆる「異次元緩和」で日銀が長期国債を大量に買い入れるようになり、長期金利が自然な形で形成されなくなり、やがて、日銀の買いに「制圧」されるような形で、超低水準となった。

加えて、今年に入って導入されたマイナス金利政策の影響で、ここ数ヵ月は、長期金利はマイナスゾーンで推移するようになった。

さて、この長期金利だが、実は、ここのところ内外共に上昇気味に推移している。この状況をどう考えるべきか。

米国は、FRBの利上げに対する予想から長期金利が上昇気味に推移していて目下1.7%台だ(現地13日)。ドイツでは、英国のEU離脱依頼マイナスゾーンだった長期金利が陽転し0.07%程度(現地13日)である。ちなみに、わが国の長期金利も、9月12日には-0.015%と、プラズゾーン目前まで迫り、13日は-0.025%だった。

予想困難な日銀の「次の一手」

目下、長期金利の形成要因として、どうしても各国の中央銀行の動向ばかりが注目されやすいが、日本を含む各国の景気が「まあまあ良好」に見える点が、いくらか影響していることは考慮の中に入れておきたい。

米国では、9月にFRBが利上げを決めるほどではないとの観測もあるが、年内には利上げがあるだろうと思われる程度には十分景気は強く、EU離脱の影響が心配された英国も景気指標は総じて良好で、イングランド銀行による年内の追加緩和実施の観測が後退している。

わが国も、例えば、財務省と内閣府が13日に発表した7〜9月期の法人企業景気予測調査によると、大企業の景況感を示す景況判断指数(BSI)は3期ぶりに1.9のプラスに転じた。昨年末から今年前半にかけての「ミニ景気後退」的ムードからの回復が見られる。

もっとも、各国いずれにあっても、長期金利を決める要因として最大のものが中央銀行の次の一手に対する憶測だ。それは、平時にあっても大きな要因にはちがいないのだが、現状では「特別に大きな要因」となっている。

わが国の特に投資家が気にするべきは、米国の利上げの有無とタイミング、加えて日銀の次の一手だ。

米国FRBの利上げは「9月には行われないだろうが、年内には行われる」というくらいが目下の市場関係者の平均的な予想であるように思われるが、この場合、米国の長期金利は、景況に素直に反応することと、将来の短期金利の上昇を見込んで、緩やかに上昇する公算が大きい。

より、要因が多く複雑なのは、日銀の次の一手だ。黒田総裁の発言で、マイナス金利政策が銀行の収益にマイナスの影響を与えている面もあることの認識が示されたことをどう解釈するかが問題だ。

長短の金利差がフラット化あるいは逆転して、貸し出し金利のベースとなる長期金利が下がり、銀行の利ざやが縮小ないし陰転していることが、金融機関の収益を悪化させていることは事実だ。また、利ざやの悪化には、デフレ脱却に必要な貸し出しの拡大を抑制する側面もある。

そこで、国債の買い入れ枠を現在の年間80兆円から、70兆円〜90兆円のように弾力化して(意味があるのは下限方向の拡大だ)、事実上国債の買い入れを縮小し、同時にマイナス金利の「深掘り」を止めるのではないか、といった憶測を持つ向きもある。

一方、マイナス金利の深掘りは、今後円高が進行した時に確保しておきたいカードであり、また、国債買い入れ枠の弾力化は、「量的緩和の後退」と解釈されかねないので避けるのではないかとの見方もある。

来週に行われる金融政策決定会合は特に注目度が高い。