金融・投資・マーケット
日米の金融政策はどうなる? マイナス金利の深堀りに効果はあるか
日銀がとる選択肢はこれだ

FRBは腹をくくるか?

このところの経済の話題は、もっぱら9月20、21日開催予定の日銀金融政策決定会合とFRBによるFOMC(連邦市場公開委員会)という日米の金融政策に集中している。

そこで、今回の日米の金融政策がどうなるかについて考えてみよう(「べき論」ではない点に注意)。

このうち、まず、FOMCからいえば、筆者は、8月26日のイエレンFRB議長のタカ派的な発言、そして、それをサポートするようなフィッシャー副議長のタカ派的な発言を受けて、9月前半は、利上げ実施に向けてFRB高官らによる「地ならし」が行われるのではないかと考えていた。

イエレンFRB議長とフィッシャー副議長〔PHOTO〕gettyimages

しかし、実際はハト派的な発言もそれなりにあったことから、マーケットは9月のFOMCでの利上げをそれほど織り込んでいないようである(どちらかといえば、9月利上げ派は少数のようだ)。

各種報道によれば、ハト派は、「米国の中長期的な成長力の低下が低インフレの要因であるため、特段、利上げを急ぐ理由はない」というロジックから利上げに反対のようである。

最近の「長期停滞論(Secular Stagnation)」が提示する停滞脱出の処方箋は、「財政支出の拡大と金融緩和の継続」というポリシーミックスである。そのため、今回のFOMCで、もし、ハト派の意見が多数派になるのであれば、次期大統領の下で、財政支出の拡大が実施され、本格的な成長率の回復とそれにともなうインフレ率の上昇がなければ、利上げの機会はなかなか訪れないことになる。

逆にいえば、「利上げの環境は整いつつあるが、経済指標の中に心配なものがあるので今回も利上げ見送り」という選択肢はないのではなかろうか(それを言っていると永遠に利上げできないことになり、そのような「臆病」な政策決定を阻止するために、フィッシャー副議長はあえて「利上げの決定は、FRBが腹をくくれるかどうか」をいう表現をしたのではないかと考えている)。

すなわち、今回のFOMCでは、利上げに対し、喧々諤々の議論が展開されるのではなかろうか。

もし、筆者がFRB議長の立場で、いずれの時期に利上げをすべきと考えているのであれば(すなわち、「長期停滞」の立場に立っていない)、9月利上げを主張すると思うが、利上げに慎重なイエレン議長がどのようにFOMCをリードしていくかは、現時点では全くわからない。

日銀のロジック

一方、日銀の金融政策決定会合だが、今回は、「総括的検証」によるこれまでの「マイナス金利付量的質的緩和政策」の評価だけで、追加緩和は次回(10月31日、11月1日)以降に先送りにするという見方もあるようだ。

筆者は、前回(7月28、29日)に決定されたETFの買い増しは、その前の安倍首相による予想外の景気対策の発表に歩調を合わせた印象が強く、本来であれば、その時に発表すべき追加緩和策を先送りした印象が強いので、今回は何らかの追加緩和策が発表されるのではないかと考える。

具体的な追加緩和策については、「マイナス金利の深堀り」(といっても0.1~0.2%程度の引き下げに過ぎないと思うが)と、場合によっては、中期ゾーンの国債の買い入れ額の増額(「ツイスト・オペレーション」)が組み合わされる可能性が高まってきたと思われる。

最近の日銀の金融緩和のロジックは、「均衡イールドカーブ」の考え方に沿っているようだ。「均衡イールドカーブ」とは、経済に対し中立的な実質金利ベースのイールドカーブであり、金融緩和によって、この「均衡イールドカーブ」を下回るイールドカーブを実現すれば、経済にとってはプラスの効果が出ることが見込まれると考えるものである。

特に、日銀が目標とする2%のインフレ目標を実現するためには、均衡イールドカーブの中でも特に「中期ゾーン」の部分をより引き下げることが重要で、それができれば、設備投資等を刺激し、「需給ギャップ」のマイナス幅を縮小させることができるというインプリケーションがあるようだ。

また、「総括的検証」で、日銀がこれまでの金融緩和を「効果が小さい」と結論づける可能性は皆無に近いと考えるが、1月28、29日に導入が決定されたマイナス金利政策によって、確かに名目金利でみた通常のイールドカーブは全体的に大きく低下したものの、長期ゾーンの金利の低下幅がより大きかったことの副作用を指摘する可能性はある(保険、年金等の運用利回りの低下等の副作用)。

そこで、日銀は、イールドカーブをスティープ化する目的で、マイナス金利の深堀りと、場合によっては、同時に、オペによる買い入れ対象をより中期ゾーンの国債に傾斜する「ツイストオペ」を実施する可能性がある。

「量の拡大」は可能だが…

一方、「量の拡大」の効果について、日銀は懐疑的であると思われる。

これは従来(2000年前後)から議論があったが、いわゆる「ポートフォリオリバランス効果」の観点からみれば、日銀が、ほぼゼロ金利に近い国債をいくら購入したところで、現金等価物である国債と現金を交換する行為に近いため、効果は極めて限定的であるという見方をとっていると想像される。

2000年前後の議論では、日銀は、当時はあまり購入していなかった長期国債を積極的に購入すべきという議論があった(当時は残存5年以内の国債が買い入れのメインであった)。

だが、この議論を現在の状況に当てはめると、すでに長期国債を大量に購入し、しかも、長期金利の水準がゼロ近傍で推移している現状、国債買い入れを中心とした量的緩和の効果は小さいという結論に至る可能性が高いと考える。

(もっとも、「量の拡大」によって予想インフレ率の上昇が見込まれるという議論もあるが、定量的な実証が困難であるし、「即効性」という観点から疑問符がついている模様だ。中長期的に量的緩和の効果があるとすれば、これまでの量的緩和政策の累積効果がこれから発現すると解釈になるため、追加的な量的緩和の拡大は不要という解釈になるのだろう。)

そこで、どうしても政策効果の高い「量の拡大」を行いたいというのであれば、国債以外の金融資産の買い入れを実施する必要がある。

例えば、米国では、2012年9月から実施されたQE3政策で、MBS(住宅ローン担保証券)の購入を、期限を定めずに、「雇用市場が改善するまで」継続することを決定した。そして、これをきっかけに米国は回復局面に入った。

リーマンショック後の米国では、FRBがQE1、QE2と、2度にわたる大胆な量的緩和を実施してきたが、本格的な回復には至らなかった。米国経済は、QE3の実施でようやく本格的な回復を実現させたことを考えると、「量的緩和」自体に全く効果がないということはないと思われる。

したがって、「ポートフォリオリバランス効果」が明確に出るような新たな資産があれば「量的緩和」の拡大は可能であるということであろう。筆者は、日銀がバスケット取引で日本株のインデックスを再現するような株式の購入をすればいいと思っているが、日銀は形式的にも株式の購入には消極的である。

そこで、最近、俎上に上がってきたのが外債である。この場合、例えば、ある程度利回りがある(ゼロ金利近傍ではないという意味)米国債の購入を実施できれば、緩和効果を上げることができる可能性はある。

だが、外債購入は財務省の為替介入に似た行為であるため、「役所の権限」という点から、財務省から強い反対を受けることが想像される。

そのため、現実的には「外債購入」によって量的緩和を拡大することは難しいと思われる(例えば、安倍首相の強いリーダーシップで日銀の外債購入を後押しするとか、日銀総裁と財務省の財務官が直接会談するなどの「交渉」があれば別だろうが)。