中国 青島
中国有数の「美女」の産地は大連か、青島か? お国自慢の真相
近藤大介の青島レポート【前編】

「北京や上海ばかりを見ていても、中国は分からない」――北京で中国人から、よくこう言われるが、本当にその通りだ。

そこで私は毎年、最低一回は、中国の地方を見て歩くことにしている。今夏は山東省の青島と威海を訪れた。今週はまず青島レポートをお届けしよう。

高速鉄道「和諧号」〔PHOTO〕gettyimages

習近平政権の功績

いまは中国国内のどこへ行くにも、高速鉄道が便利だ。中国は首都・北京から、8時間以内で国内の主要都市へ行けることを目標に、高速鉄道網の整備を進めている。青島までは、北京南駅から約5時間の旅だ。

北京南駅へは、4年ぶりにやって来た。南駅は北京の主要駅の中では一番新しい駅で、2008年8月の北京オリンピックに合わせて、北京-天津間の高速鉄道を開通させるために建設された。

東京ドーム10個分に近い42万㎡と、アジア最大の駅舎で、高速鉄道「和諧号」は、上海虹橋駅まで1318㎞の距離を、4時間48分で結んでいる。青島へ行くには、途中の済南西駅で、山東省の沿海部に向かう支線に折れる。

北京の中心部から南駅までは、昨年末、地下鉄14号線が開通した。今回初めて乗ってみて知ったが、14号線は、車両のドアが閉まってから走り出すまでに、15秒もかかる。ドアの安全を確認するための装置なのだろう。多少の違和感を感じるが、この国において安全第一は悪いことではない。

地下鉄のホームで列車の到着を待っている間、プラットホームに多数設置されたテレビ画面で、オリンピックの名場面中継を見られるのもありがたい。もっとも中国人は皆、自分のスマホをいじるのに夢中で、テレビ画面に見入っているのは私くらいのものだったが。

懐かしい北京南駅に着くと、内外のファスト・フード店の看板が目に飛び込んでくる。吉野家、星巴克(スタバ)、肯徳基(ケンタッキー)、麦当労(マック)、慶豊包子、李先生、稲香村……。

それらの巨大な店舗群の中を進んで行くと、1階で荷物検査に並ばされた。両手を広げて、帽子から靴まで綿密に調べられる。トランクのX線検査で、女性検査官が「この中に刃物が入っている!」と叫び、周囲がどよめいた。

彼らの視線を一身に浴びながら私がトランクを全開すると、中から小さな果物ナイフが出てきた。地方へ行くと市場で買う果物がおいしいが、安ホテルでは部屋にナイフが備え付けられていないので、朝出がけに果物ナイフを忍ばせたのだ。

「これを放棄しないならば、ここから先は通さない!」――愛くるしい顔をした女性検査官に、再び鋭い言葉を吐かれ、「放棄します」と言って通される。

愉快な気分はしなかったが、思えばそれだけ水も漏らさぬ検査をしているのだから、たいしたものだ。もしかしたら、晴れてナイフを発見した彼女は、ささやかなボーナスがもらえるのかもしれない。

私が北京に住んでいた胡錦濤時代には、この手の検査は形骸化していて、検査官たちは白昼堂々と寝ているか、おしゃべりに夢中になっていた。だから胡錦濤政権下ならば、果物ナイフを車内に持ち込めたことは確実だ。

だが、どちらがよいかと問われれば、それはナイフを没収されても安全な方がいい。こうしたところは、習近平政権の評価できる点だろう。

それから、南駅に着いてから思い出したが、この国では電車のチケット一枚買うにも、中国人なら身分証を、外国人ならパスポートを提示しなければならない。切符には、私の漢字名とパスポートナンバーが印字される。そして2階へ上がって改札口を通る時に、駅員がパスポートと切符を照合し、さらにパスポートの顔写真と私の顔とを照合する。このように何段階も経ないと、プラットホームには行きつけない。

わずか10分で時速302㎞!

11時53分発青島行きC183号は、すでに15番ホームに着いていた。

切符に印字された3号車(一等車)に乗ると、私の9番D席には、長髪の女の子が座っていて、隣席の彼氏と思しき男性と手を絡めてイチャイチャしていた。邪魔して申し訳ないと思いつつも、私が切符を掲げて指摘すると、彼氏が「チェッ」と舌打ちして、カップルは二等車の方へ移動していった。

かつて網棚にまで人が乗っかっていた中国の列車は、真っ赤な左右2席ずつのモダンな車両に生まれ変わった。だが、「隙あらば入り込む」という中国人の習慣は変わっていない。

列車が定刻に発車すると、わずか10分で時速302㎞(!)の電光表示が出た。そして12時11分、最初の停車駅である廊坊駅着。廊坊は、北京と天津の間に位置する人口500万人ほどの都市だが、北京からわずか18分で着いてしまう時代になったのだ。

車窓から外を眺めると、先ほどのカップルが降りていた。今どきの若者は、東京と横浜くらいの距離を、新幹線で通うのだ。