日銀・黒田総裁の「最大の弱点」はこれだ!
株価1万9000円を目指す上での障害か

日銀周辺から聞こえる、「黒田孤立説」

『日本経済新聞』(9月8日付朝刊)は、日本経済研究センター(岩田一政理事長)が発表した民間エコノミストの経済見通し「EPSフォーキャスト調査」で、9月20~21日に開催される日本銀行の政策決定会合で決まる追加金融緩和の予想を報じている。
 
同紙によると、日銀の金融政策の次なる一手について「緩和」と答えた回答者が全体の4分の3を占め、その時期は6割が「9月頃」と予想したというのである。
 
平たく説明すると、緩和の具体策は日銀の国債購入額80兆円(年ベース)を90兆円に引き上げると見通すエコノミストが多数であり、現行のマイナス金利0.1%を0.2%へ深掘りすると予想する者が少数ということである。
 
では、黒田東彦総裁はどう判断するのか。最近、日銀周辺から聞こえてくるのは「黒田孤立説」である。事実、『産経新聞』(9月7日付朝刊)は一面トップに「日銀『総括検証』難航―政策委員の見解3分裂」の見出しを掲げ、黒田総裁を含む9人の日銀政策委員会審議委員が、以下の3グループに分裂していると報道した。

①マイナス金利を政策の柱に据える「マイナス金利支持派」、②国債の購入を重視する「リフレ派」、③追加の金融緩和を牽制する「追加緩和反対派」―というのだ。

日銀ウォッチャーによると、①は黒田総裁、中曽宏副総裁、布野幸利審議委員、②が岩田規久男副総裁、櫻井眞審議委員、政井貴子審議委員、③は佐藤健裕審議委員、木内登英審議委員、という。

実は孤立している?【PHOTO】gettyimages

そして、残る原田泰審議委員は金融機関のエコノミスト出身であり、本来ならば、マイナス金利政策反対のメガバンクと同じ立ち位置の「リフレ派」であるはずだが、黒田緩和路線堅持支持に回ると見られている。
 
というのも、8月26~27日に米ワイオミング州の観光都市ジャクソンホールで開催された経済政策シンポジウム(通称「ジャクソンホール会議」)でイエレン米連邦準備制度理事会(FRB)議長が「米景気の緩やかな回復と雇用の改善が続いているので年内利上げの環境が整いつつある」と発言したことが大きかったようだ。
 
同会議にはイエレンFRB議長、黒田日銀総裁、ドラギ欧州中央銀行(ECB)総裁を始め、各国の中銀総裁、有力経済学者が出席した。ところが、黒田総裁は帰国後の会見で初めてマイナス金利政策のデメリットにも言及した。このことがターニングポイントになったと思われる。
 
この黒田総裁の政策の軌道修正によって、原田日銀審議委員は引き続き黒田緩和路線支持派に踏みとどまることを決めたとされる。

「想像力の欠如」が心配 

ところが今、日銀ウォッチャーや金融市場関係者の間で黒田総裁のガバナンス(統治力)を問題視する向きが少なくない。曰く、黒田総裁は円滑かつ効果的な政策執行ができるよう市場の期待・センチメントを把握する「マーケット・マネージメント」能力に問題があるのではないか。
 
それは、いったい何なのか。

黒田氏は旧東京教育大学付属駒場高校から東京大学法学部に進み、1967年に旧大蔵省に入省した。高校の3年間と大学の4年間の計7年間に日比谷図書館の蔵書を、文学書を除いて全て読破したという伝説の持ち主だ。大秀才であり、努力家でもある。

しかし、実は小説を読んでいないことが、どうやら金融市場の期待・センチメントを把握できていない、市場とのコミュニケーションができていなことに繋がるのではないか。
 
一言でいえば、「想像力」の欠如である。次回の政策決定会合が「ゼロ回答」になることはないはずだ。そして、黒田日銀が中央銀行として市場の期待が高騰していることを把握しているのは当然だ。

であれば、「次の一手」が何であるのかを市場は注視しているだけに、先述の①と②を一体化した緩和策を打ち出せば、それこそ「サプライズ」になる。

それは直ちに、安倍官邸が期待するシナリオ「年末の株価1万9000円・対ドル円レート110円」を呼び起こすに違いない。

※最後に、前号で書いた12月の安倍・プーチン会談会場は、山口県下関市の「春帆楼」ではなく、長門市の「大谷山荘」でした。訂正します。その理由については、追って報告いたします。