不動産

都心でマンション「大暴落」、売れ残り続出…要注意エリアはここだ!

2020年まで持たなかった
週刊現代 プロフィール

オラガ総研代表の牧野知弘氏が言う。

「実際、湾岸エリアに詳しい不動産業者に聞いてみると『在庫の囁き売り』が始まっているそうです。新築マンションは表向きには値下げはできませんから、見込み客に対して直接、『300万円価格を下げますので買いませんか』と交渉するわけです。すでに豊洲の有名タワマンでは売りが散見され、中古相場も今年6月あたりから下落し始めた」

やはり「バブル」だった

※不動産経済研究所のデータをもとに作成。いずれも前年同月比での増減率の推移

ここでグラフをご覧いただきたい。

これは首都圏マンションの販売価格と発売数の直近の推移を示したものだが、ここへきて市況は急激に悪化。発売戸数にいたっては前年同月比で30%以上も激減しており、売れ行きが急減速していることがわかる。

実は、首都圏マンションは7月の販売在庫数も6498戸に増えていて、「これは不動産ミニバブルが崩壊した'09年頃に近づく水準です。マンションバブルの崩壊を予兆するデータが出揃ってきたと言えます」と指摘するのは、みずほ証券市場情報戦略部上級研究員の石澤卓志氏である。

「マンションが売れなくなってきた理由のひとつは、価格が異常高騰しすぎたから。住宅は各世帯の年収の4倍が手頃、5倍が上限とされているが、現状は山の手エリアだと日本人の平均年収の15倍、下町エリアで10倍、都下でも8~9倍の水準。世帯年収が1000万円超でないと、都内にマンションを買うのは難しい。バブルがこれほど大きく膨らんだ結果、ついにマンションが売れなくなってきたわけです」

これまでは一部の富裕層や海外投資家などが、資産運用先や相続対策としてこうした高級物件を購入。それが「高値」を支えてきたが、そうした投資マネーも不動産市場から逃げ始めた。

ニッセイ基礎研究所不動産投資チーム主任研究員の増宮守氏は、「海外投資家による大規模不動産の取得は昨年後半に勢いが止まり、今年に入ってからも大きく落ち込んでいる」と明かす。

「中国経済の失速懸念からリスク意識が高まり、今年の上半期は昨年比で『ほぼ半減』という水準です。海外富裕層は湾岸エリアのタワーマンションのほか、赤坂、渋谷、新宿などの大規模物件の購入も目立っていましたが、年初からの円高もあってこれも失速したとみられます。

国内の富裕層による相続税の『タワマン節税』に対する課税強化も警戒されている。都心部の高額マンション市場への影響は避けられないでしょう」

目黒、杉並、二子玉川が危険

一般家庭も富裕層も海外投資家も「買わない」のだから、市場が崩れていくのは当然である。

こうした事態を受けて、いま業界内ではデベロッパーたちが「経営危機リスク」に怯え始めた。

「ある大手デベロッパーがマンション事業から撤退するという話がすでに広まっています。実際、日本橋エリアでは坪単価400万円ほどが水準だったのに、最近の新築マンションは坪単価300万円前半で売られている。これはデベロッパー側が儲けられる販売価格ではない」(前出・榊氏)

とにかく早く売り逃げて、いますぐ「撤退」したいという魂胆が透けて見えるというわけだ。前出の石澤氏も言う。

「マンション業者の中には、かなりの高額でマンション用地を取得したところも少なくありません。それが予定した価格で売れないとなれば、デベロッパーは経営危機にさらされる危険性が出てくる。そうした中堅デベが在庫を早くはけさせるためにさらに価格を下げれば、マンション価格の下落傾向に拍車がかかることになります」

それがまた業者の経営を苦しめ、「安売り競争」が加速して……そんな「負の暴落スパイラル」が、2020年を待たずに幕を開けたわけだ。

では、これからマンションはどこまで下がってしまうのか。特に危険なエリアはどこか。

「まず、注意しなければならないのは有明や豊洲のエリアでしょう。すでに売りが出ているのに、今後も大規模開発案件があるので、在庫が膨れ上がるリスクが高い。もう坪単価300万円を切るほどまで下がっているが、これが数年かけて最低2割、最悪の場合は半値まで暴落する可能性はある」(前出・榊氏)

元大京取締役で不動産ジャーナリストの大越武氏も言う。

「世田谷、目黒などの城南エリア、中央線沿線の杉並などの城西エリアは、これまで価格が上がり過ぎた分、下がる時は大きく下げるリスクがあります。現在の坪単価は300万円以上ですが、すでに売れ残りが出ている。サラリーマンが買えるような価格になるには、これが200万円まで下がらないといけない」

こうして都心部の価格下落が起き始めると、これまで都心には住めなかった周辺住民が一気に流入。連鎖するように、今度は周辺部が暴落していく。不動産エコノミストの吉崎誠二氏が言う。

「過剰にブランド化している二子玉川などは下落幅が大きく、2~3割下がってもおかしくありません。こうした連鎖現象は次々に起こり、たとえば世田谷でも環七通りの外側の用賀や経堂などは厳しくなってくるでしょう。すでにこのエリアではある新築マンションが売り出しから数ヵ月にして、2割しか売れていないと聞いています」

東京都心から始まった大暴落劇場は、もう止まりそうにない。

「週刊現代」2016年9月17日号より