週刊現代
【探究者たちが真剣に選んだ】本当に旨いカップラーメンはこれだ!
カップ麺ほど趣向を凝らした「食」はない

定番商品になるのはわずか1%

大山 日本即席食品工業協会によると、カップ麺の新商品は毎年1000種類以上あるそうです。そのうち、定番商品になるのはわずか1%で、ほとんどが1ヵ月しないうちに店頭から消える。

石山 実店舗よりも厳しい世界です。カップ麺の第一号『カップヌードル』は'71年に日本で誕生しました。大山さんが最初に食べたのはやはり、カップヌードルですか?

大山 そうです。まだ子供だったのに、すぐに魅せられました。この「カップ」って、運搬器具であり、調理道具であり、食器でもあり、なによりデザインが素敵でしょ。発売の前年に開かれた大阪万国博覧会でもロゴを担当した大高猛さんによるもの。デザインも縦長の容器の形も、発売以来45年間、ほとんど変わっていない。奇跡ですよ。

石山 僕の少年時代といえば『スーパーカップ』。食べ盛りだからボリュームと『とんこつラーメン』は地元の青森にないクリーミーなとんこつスープが嬉しかった。

大山 スーパーカップなら『ブタキム』でしょう。ドライキムチを湯で戻すと、辛さの中にちゃんと旨みと甘みがあってね。韓流ブーム前にキムチの存在を世に知らしめ、日本の食文化すら変えたと言っても過言ではない。

石山 '00年には、「人気店の再現」がブームになりました。日清食品とセブン-イレブン・ジャパンが共同開発した名店仕込みシリーズ『すみれ 札幌濃厚味麺』は、今でもよく売れる商品です。

閉店したあの有名店のラーメンも!

大山 表面を覆う、コクのあるラードの層が再現されているところに両社と『すみれ』の熱意を感じました。ラードのおかげで、最後まで熱々が食べられるんですよね。

石山 店の味を見事に再現していたのに、今は無き商品もありますね。『評判の店主 ちゃぶ屋 とんこつ塩柳麺』は、蓋を開けたら魚粉入り出汁パックが付いていて驚きました。パックに湯を注ぐと、香りが広がり、塩スープは絶品だった。

大山 『たけちゃん にぼしらーめん』が無くなったのも残念。子供の頃は煮干しって貧乏臭いイメージだったけど、こんなに美味しいラーメンが作れることに驚きました。

石山 『ちゃぶ屋』は実店舗でもこだわりが多く、それゆえ経営難で閉店しましたが、『たけにぼ』は、今も店で味わえます。

大山 有名店ブームに続いて、寿がきやの『富山ブラック』や『台湾ラーメン』など、ご当地麺を再現した商品も作られるようになりました。

石山 僕の一押しは『青森味麺カレーミルクラーメン』。青森でこのラーメンを提供する5軒と比べても、このカップ麺は遜色ない(笑)。

大山 ローカルモノといえば、『やきそば弁当』は北海道や一部の東北の読者以外には馴染みがないでしょう。

石山 特徴は粉末の中華スープが付いているところ。これが焼きそばによく合います。

大山 北国の冬は寒いですからねぇ。湯切りで捨てるはずの湯でスープを作らせるなんて、思いついたメーカーが見事。フライ麺の油分や塩分も入った湯で粉末を溶くからこそ、コクが出てめっぽう旨くなる。僕は『U.F.O.』を食べるときも、粉末のコンソメを入れたカップを用意して、湯切りした湯を注いで飲んでいます。

石山 それは名案です。最近はノンフライ麺を使用した『カップヌードルライト』シリーズや脂質カット麺など健康志向の商品が目を惹きますね。その中でも糖質をカットした『低糖質麺 はじめ屋 糖質50%オフ こってり鶏白湯味』は美味い。

大山 麺にツルツル、シコシコとした食感があり、糖質カットの違和感はない。スープは薄味ではなく、鶏の旨みとコクがあります。チキンラーメンを発明した安藤百福さん(日清食品の創業者)は96歳で亡くなる直前まで毎朝、一袋のチキンラーメンを食べていたそうです。僕も安藤さんのように一生を終えたいから、健康麺の登場は大歓迎。

日清食品の創業者、安藤百福氏の銅像〔PHOTO〕gettyimages

薄っぺらい焼き豚はご免だ!

石山 麺の開発は随分進んで、食感も味わいも生麺と区別がつかないほどおいしい。そもそも生タイプ麺がなぜ増えないのか? と思っていたけど、麺を袋詰めするために原価が高くなる。水分量が多い分、重くなるから流通コストも高くなって、メーカーは頭を悩ましているようですね。

大山 昔は『ラ王』も生タイプ麺でしたが……、僕が納得できるのは『ごんぶと』くらい。うどんの太さ、モチモチとした食感も再現されている。

石山 『ラ王』、『ごんぶと』をはじめ、昔ながらの定番商品は今も強いです。

大山 エースコック『わかめラーメン』しかり、日清『どん兵衛』しかり、ファンの心の中には各々の「懐かしい味」があるんです。といっても、メーカーは味を変えていないわけではなく、時代に合わせて進化させ、少しずつ味を変えている。

石山 大山さんは今後のカップ麺業界に何を望みますか?

大山 麺やスープは飛躍的に進化しましたが、具が置き去りにされています。このご時世に円盤型の薄っぺらいチャーシューは勘弁してほしい。

石山 具にこだわった『GooTa』という、高級シリーズもありましたが定着しませんでしたね。

大山 やはり300円という値段が高すぎたのかな。

石山 カップ麺業界には、消費者に好まれる価格帯として「250円の壁」がありますが、

それを一気に飛び越えましたよね。僕はむしろ、300円の壁を突破してほしい。今の時代、プレミアムビールが中高年に人気だし、1000円以上の高級メニューで勝負するラーメン店もある。カップ麺も品質がよければ売れる。300円台なら、具もレトルトにできるし、開発の余地はあると思います。

大山即席斎(おおやま・そくせきさい)
'59年東京都生まれ。インスタントラーメン研究家。『TVチャンピオンインスタント麺通選手権』優勝。カップ、袋麺を年間700杯食す
石山勇人(いしやま・はやと)
'79年千葉県生まれ。ラーメン評論家。訪れる店は年間500店以上。ラーメン本の監修や店舗メニューの考案ほか、カップ麺の開発にも携わる

『週刊現代』2016年9月17日号より