天才科学者をも苦しめる「ポスドク問題」のリアル
博士号をとっても40までは下働き
「クリスパー」開発者の一人、エマニュエル・シャルパンティエ氏〔PHOTO〕gettyimages

世紀の発明を成し遂げるまで

あらゆる生物の「ゲノム(DNAに書かれた全遺伝情報)」を自由自在に書き変える、驚異のゲノム編集技術「クリスパー(CRISPR)」。それは医学、製薬、農業、バイオなど、人類の存立に関わる様々な分野で、史上空前の産業革命を引き起こすと見られている。

この画期的技術の発明者として知られる3名の科学者の一人、フランス出身のエマニュエル・シャルパンティエ(Emmanuelle Charpentier)博士は、その功績が認められ、昨年、世界的に有名な独マックス・プランク感染生物学研究所の所長にまで上り詰めた。

が、現在の誉れ高いポジションを獲得するまでに、彼女は5つの国を跨いで9つの研究機関を渡り歩き、その間の大半において、いわゆる「ポスドク(postdoc:博士課程修了後に任期制の職についている研究者)」として、経済的には「その日暮らし」を強いられるほどの乏しい給与と不安定な雇用環境に甘んじてきた。その期間は実に25年にも及ぶ。

シャルパンティエ氏ほど才能に恵まれた科学者が、何故、それほど長期にわたって不遇の人生を歩まざるを得なかったのか?

背景には、年々、厳しさを増す基礎科学者の雇用環境がある。それは彼女が活躍する欧州のみならず、日本や米国などにも共通する世界的な傾向だ。

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