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北方領土交渉、進展のカギは「日ロ擬似同盟関係」にあり!
米中も巻き込む大変革が起きる

本題に入る前に

北方領土問題がいよいよ動き始めた。先の日ロ首脳会談について、安倍晋三首相が「手応えを強く感じた」と述べた一方、プーチン大統領も「我々はきっと問題を解決する」と評価している。何が起きようとしているのか。

本題に入る前に、先週のコラムを休載した事情を一言、述べておきたい。お気づきのように先週水曜日、8月31日に「現代ビジネス」のデザインが一新された。常連の読者にとっては記事の休載もさることながら、デザイン変更のほうが驚きだったのではないか。

私もそうだ。朝、サイトを開いて、どれほど読みやすくなったのかと思ったら、残念ながら見当違いだった。読者は中身を読めたと思うが、私は当初、まったく読めなかったのである。

なぜかといえば、私のようなコラム筆者はサイトに初めてアクセスするとき独自のIDとパスワードを使っている。普通の読者はアクセスできても、そんなIDとパスワードをサイトに「染み込ませていた」筆者のアクセスは受け付けない設計になっていたのだ。

なんとも不思議な話だが、編集部も事情を承知していなかったらしい。私の問い合わせに対して担当者は「そちらのブラウザの問題ではないか」と言っていた。ところが、そのうち別の筆者(高橋洋一さん)からも問い合わせがあり、結局、設計ミスと判明した。

それで問題解決かと思いきや、中を開いてみると、今度はコラムのバックナンバーが読めない。検索すれば出てくるのだが、いちいち手間がかかる。バックナンバーが読めないのは、私にとって大打撃である。

「バックナンバーがそんなに大事か」と思われるかもしれないが、なぜかといえば、書き手である私の思考は連続しているからだ。

たとえば中国問題について、前回はどこまで議論を展開したのか、私はバックナンバーを参照して確かめる。そのうえで次の論点を考えていく。そういう積み重ねで思考が流れていき、新しい視点がひらめくのだ。何もない無から有が生まれるわけではない。

私がコラムでバックナンバーの参照を求める例が多いのは、そういう事情である。私自身が常に過去コラムを参照しながら書いている。おそらく高橋洋一さんもそうではないか。彼も毎回のようにバックナンバーの参照を求めている。

公開当初の新サイトは、私や高橋さんのバックナンバーを掲載していなかった。それでは考えが進まず、コラムを書きにくい事情を説明したら「いずれ、なんとかします」といった頼りない返事だった。残念ながら、書き手の立場を理解していないと言わざるを得ない。強くバックナンバーの掲載を求めると、夕方になってなんとか読めるようにはなった。だが、時すでに遅し。

さらなる改善を求む

私は毎日、多くの仕事を抱えており、コラム執筆に割ける時間は限られている。仕事の順番は動かせない。その時点で私の持ち時間は時間切れになり、休載せざるを得なくなってしまった。朝のドタバタ以来、半日以上が経過していた。

金曜公開のコラムを水曜の昼間に書く段取りにしたのは、木曜は深夜まで私がMCを務めるTOKYO MXのテレビ番組『ニュース女子』の収録があったからだ。テレビ番組は見ている方が1時間でも、出演する側はその何倍も事前に準備している。

その後、サイトのデザインはさらに修正が加えられ、現在の形になっている。編集部によれば「ネットの世界では完成版でなくても、とりあえず出来た形で走り始め、後から少しずつ修正を繰り返すのは普通」なのだそうだ。

それは読者に不親切と思う。なんだか中途半端な商品を買わされた感じではないか。タダで読んでいる人だって、時間は消費させられるのだ。

たとえば当初、政治や経済、国際といった分野別のタブだけが表示され、筆者別のタブはなかった。私が「現代ビジネスはニュースの分野別で読まれているのではなく、筆者単位で読まれているはずだ」と指摘したら、数日経って「連載タブ」が新設された。

私が指摘しなかったら、いまでも連載タブはなかっただろう。政治や経済といったグループ分けは新聞のような発想だ。編集部は読者がそんなグループ分けで記事を読んでいると思っていたのだろうか。

それは、政治が好きな読者は筆者が誰だろうと政治を読むし、私のコラムも分野別に読者が付いている、という想定である。はっきり言わせてもらえば、それは間違いだ。高橋洋一さんの読者は高橋さんが中国を扱おうが、財政問題を扱おうが読んでいるだろう。

これは単にデザインの問題ではない。「読者を惹きつけるジャーナリズムとは何か」の問題である。編集部には猛省を促したい。「何をエラそうに」と思われるかもしれないが、こんなことは原稿料をもらう立場のライターは普通、書きにくい。

私は「現代ビジネス」発足当初からの付き合いだから、あえて苦言を呈させていただいた。ついでに言えば、携帯サイトはまだ読みにくいし、筆者プロフィールも出てこない。携帯で読んでいる読者も多いのだから、早急に改善してほしい(ランキングの場所も)。

北方領土、返ってくるのか来ないのか

前置きのつもりが、つい長くなった。本題に入ろう。安倍首相とプーチン大統領の言葉だけでなく、日本側は交渉加速に向けて具体的に動いている。

【PHOTO】gettyimages

世耕弘成経済産業相を「ロシア経済分野協力担当相」に任命したのが象徴的だ。ロシア相手の経済協力を専門に扱う大臣とは聞いたことがない。それくらい安倍政権が本気になっている証拠である。

安倍首相は、首脳会談後に開かれた東方経済フォーラムの講演で「ウラジオストクで毎年1回の首脳会談定例化」を提案した。これも異例である。プーチン大統領の訪日は12月と決まった。12月までに相当、事態は動くとみていい。

いったい北方領土は帰ってくるのか、こないのか。

いまから即断できないが、9月1日付の毎日新聞が1面トップで興味深い記事を掲載している。「政府は北方領土が日本に帰属するとの合意が実現すれば、すでに北方領土で暮らすロシア人の居住権を容認すると提案する方針を固めた」というのだ(http://mainichi.jp/articles/20160901/k00/00m/010/168000c)。

ジャーナリストの須田慎一郎さんは、9月5日に放送された『ニュース女子』で「この話は一定期間、ロシアの国境警備隊の常駐を認めるというところがミソ」と解説してくれた。沖縄が日本に返還された後、米軍基地が残ったのと同じ「沖縄方式」なのだそうだ。

ロシアの国境警備隊が北方領土に残るのを、どう評価するか。

国境警備隊であれロシア軍の日本駐留を認めるなら、それはロシアが日本にとって脅威でなくなるという話にほかならない。同じ番組で国際問題の専門家、藤井厳喜さんは「日本とロシアが日米と同じような関係になる」と解説した。

「擬似同盟関係」?

ずばり言えば、日本とロシアが「擬似同盟関係」に入ると考えればいい。他国軍隊の駐留というのは、それくらい重たい話なのだ。藤井さんが指摘したが、ロシア軍の駐留となれば、同盟国である米国の了解がなければ話が進まないだろうし、もしかしたら、すでに内諾を得ているかもしれない。

そうなると、追い込まれるのは中国だ。軍事評論家の井上和彦さんは番組で「『日本とロシアが中国を共通の敵にしよう』というロシア人もいる」と指摘した。日米同盟に加えて、日ロの擬似同盟関係で中国の脅威を抑えこむ形になるのだ。

日本とロシアの交渉は単に北方領土の帰属問題のみならず、米国や中国も巻き込んで東アジアの国際関係を一変させる可能性を秘めている。大変な衝撃である。

ちなみに番組は毎回、後日ネットで公開されている(https://www.dhctheater.com/season/23/)。ぜひご覧いただきたい。