週刊現代
60すぎたら「安く楽しく暮らせる町」へ引っ越しませんか?
東京の周辺にだって、選択肢はある

「老後は、どこか暖かい南の島で気楽に暮らしたい」。そんな願望はあっても、実際、遠方に移住をするのは、なかなか難しい。だが老後の生活は、近場に引っ越すだけでも楽しくなるかもしれない。

固定資産税が15万円減った!

かつてなら、私たちはこう考えただろう。

60歳は人生の節目。マイホームを手に入れ、子育ても終えた。仕事からもリタイアするいま、余生はあわてず、縁先で茶でも飲んで静かに暮らそう—。

だが、いまや日本人が80歳、90歳まで生きるのはごく普通のこと。100歳を目指すこととて夢ではない。

まだ20年、30年と続いていく人生。それなのに、定年を迎えて収入は大きく目減りする。

「年金をあてにしていたが、思っていたより生活は苦しいですね。現役時代は気にならなかった固定資産税、車検代、健康保険料から水道代、光熱費まで……これが本当にキツくなってくる。

年金をもらってみるまで、年金にさえ所得として税金がかかるなんて、想像もしませんでしたよ。厚生年金ももらっている私が死んで妻が残された場合はもちろん、基礎年金だけの妻に先立たれただけでも、収入が減ってあっという間に家計が崩壊、ということになりかねない。ゾッとします」(都内在住・64歳男性)

そんな不安もある中、少しでも生活のコストを下げられないかと、大都会を離れ地方都市に移住する人も増えている。

フィデリティ退職・投資教育研究所所長の野尻哲史氏は、こう話す。

「たとえば、私がお勧めしたいのは愛媛県松山市です。住宅費は東京の3分の1程度で、食料品などの物価は約10%も安い。気候が温暖で光熱費もおさえられます。しかも、路面電車が走っていて市内の交通の便がいい。路面電車ですから、階段の上り下りもなくて楽ですよ。全国を巡るコンサートツアーが来るようなホールもあり、路面電車に揺られれば、すぐに道後温泉につきます」

田舎過ぎず、病院や娯楽施設へも公共交通機関で行ける、コンパクトな地方都市。親類縁者がいるなど地縁があれば、思い切った移住も、なおしやすいだろう。

だが一方では、そこまで大胆な地方移住には踏み出しにくい、という人も多いのは事実。年齢を重ねて、住み慣れた地域から遠く離れるのは、何かと気が重いものだ。

また、定年後も再雇用などで働き続ける人が増える中、地方移住は「まだ難しい」ということも多いだろう。

そこで今回、考えるのは、生活圏を大きく変えることなく、先ほど挙げたような様々な生活コストを節約できる「プチ移住」だ。まずはこんな声を聞いてほしい。3年前に千葉県船橋市の総武線下総中山駅近くに転居した高橋利伸さん(65歳・仮名)は、こう話す。

「節約になったのは偶然で、気がついたのは引っ越した後なんです。以前は川(江戸川)の向こうの東京都江戸川区民でした。親の代からやってきた小さな工場兼住宅でね。あちこちガタが来て、建て替えも考えたんだが、息子はサラリーマンで、跡を継ぐわけじゃなし。娘が結婚して千葉の西船橋に住んでいたので、その近くの手ごろな中古住宅を探したんです。いまさら新築でローンを組むのはイヤだったからね」

元の住居はおよそ土地160m2、家屋の床面積は140m2。これを手取り約3500万円で売却し、千葉県船橋市の築5年、売値約2200万円の中古住宅を購入した。

その移動距離はというと、元の最寄り駅だったJR総武線新小岩駅からたったの4駅。乗車時間は10分に過ぎない。

新居の床面積は85m2程度だが、「もともと工場は居住空間じゃなかったから、広さが変わった印象はない」(高橋さん)。