政局 ロシア
北方領土問題進展で弾みがついた安倍「総裁任期延長論」
すでに流れはできた!?

「自民党の党則で総裁の任期は『1期3年、2期まで』と決まっている。憲法改正をやるために任期延長というのは無理だろう。そこは、ロシアだと思います」

安倍官邸の幹部から、ロシアとの北方領土返還交渉が自民党総裁任期延長の大義名分になるというシナリオを聞いたのは今年4月下旬だった。

9月2日のウラジオストクにおける日ロ首脳会談で、首相・安倍晋三とロシア大統領・プーチンは11月19、20の両日にペルーで開かれるアジア太平洋経済協力会議( APEC)首脳会議で、続いて12月15日に安倍の地元、山口県長門市で会談することで合意。

自民党の「政治制度改革実行本部」(本部長・高村正彦党副総裁)における総裁任期延長論議と日ロ交渉が、この幹部の目論見通り並行して進む見通しとなった。

昭恵夫人と二人で「下見」をした安倍首相

ウラジオストク会談での北方領土交渉の進展具合を推し量るために、今年5月6日、ロシア南部のソチで行われた首脳会談と比較してみたい。両方とも全体の会談時間は食事を含め3時間10分と同じだ。しかし、ソチでは昼食、ウラジオストクでは夕食。通訳のみが同席するテ・タテ(さし)の会談はソチが35分、今回が55分だった。

さし会談のやりとりは一切、公表されていない。ただ、会談後、安倍が記者団に発した言葉は大きく違った。ウラジオストクでは次の通りだった。

「とくに平和条約については、2人だけでかなり突っ込んだ議論を行うことができたと思います。新しいアプローチに基づく交渉を今後具体的に進めていく。その道筋が見えてきた、その手応えを強く感じ取ることができた会談だった」(首相官邸ホームページより引用)

安倍は平和条約、つまり北方領土について「突っ込んだ議論」、「道筋が見えてきた」、「手応えを強く感じ取ることができた」と、強い表現を並べた。これに対し、ソチ会談後はこう語っただけだった。

「平和条約については、今までの停滞を打破する突破口を開く、という手応えを得ることができたと思います。(中略)今までの発想にとらわれない、新しいアプローチで交渉を進めていく」(同)

言葉を比較すると、相当進展があったことをうかがわせる。「新しいアプローチ」に触れるくだりで、今回は「具体的に」という表現が加わった。「東方経済フォーラム」における安倍のスピーチもなかなかの出来だった。

「プーチン大統領は、議会に報告する年次教書で毎年、国家発展のため最も重要なのは、ロシア極東地域の開発だと指摘しています。(中略)プーチン大統領のそんな夢は、私の夢でもあります。プーチン大統領、このウラジオストクを、ユーラシアと太平洋とを結ぶ、ゲートウェイにしようではありませんか」(同)

【PHOTO】gettyimages

プーチンの土俵に乗る形で、こう呼び掛けた。プーチンもスピーチで「日ロの一方が負けたと感じることがないよう信頼のレベルを高める必要がある。解決策を探すことは難しいが可能であり、安倍総理大臣の8項目の提案は唯一の正しい方法だ」と述べ、日本政府がさきに提案した協力プランを高く評価した。

安倍とプーチンの歯車はしっかりとかみ合っている。戦後最大の外交懸案と言える北方領土問題はそう簡単に解決しない。だが、おそらく長門市の旅館「大谷山荘」で開かれる会談は大きなヤマ場となろう。

この旅館に安倍は8月12日に夫人・昭恵と一緒に泊まった。この旅館にネットで会談当日に予約を申し込もうとすると、ほかの日は予約できるのに12月15日だけは、日帰りプランを含め「選択された条件でご予約できるプランがございません」と表示される。全館貸し切りになっているのだろう。

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