野球
イチローとマーリンズはプレーオフ進出できるのか
熾烈なナ・リーグのWC争いを占う

9月に入り、MLBのレギュラーシーズンも大詰めにさしかかっている。

ナ・リーグでは中地区で独走態勢を築くカブス、東地区で2位以下を引き離すナショナルズの優勝はすでに当確。西地区でジャイアンツに2ゲーム差をつけたドジャースも、4年連続で地区制覇を果たす可能性が高い。

残りの2つのワイルドカードの座席を、ジャイアンツ、カージナルス、メッツ、パイレーツ、マーリンズの5チームが争うことになりそうだ。

この中で9月に勝ち星を稼ぎ、プレーオフの椅子取りゲームに勝利するのはどのチームか。それぞれの戦力、現状を分析し、今後の戦いを占っていきたい。

ジャイアンツ 72勝61敗 ゲーム差
カージナルス 70勝62敗  1.5
メッツ    69勝64敗  2.0
パイレーツ  67勝64敗  0.5
マーリンズ  67勝66敗  1.0
(順位は9月1日終了、以下の選手の記録はすべて8月終了時点)

好投手そろえるジャイアンツ

2010、2012、2014年に世界一になった“偶数年の王者”が、後半戦はここまでなんと15勝28敗と失速してリーグ全体を驚かせてきた。完全に勢いを失った今、ドジャースを捉えての地区制覇は難しそう。それどころか、このペースではワイルドカード確保ですらも楽観はできまい。

とは言っても、マディソン・バムガーナー(13勝8敗、防御率2.49)、ジョニー・クエト(14勝5敗、防御率2.98)、ジェフ・サマージャ(11勝9敗、防御率4.00)といった好投手を擁するジャイアンツが沈み続けることはないと見る関係者は多い。

昨季はロイヤルズの世界一に貢献したクエトの投球も重要になる〔PHOTO〕Gemini Keez

新加入のマット・ムーア(移籍後2勝3敗、防御率3.16)が8月最後の2度の登板で好投したのも好材料。打線はパンチに欠けるが、実績あるバスター・ポージー(打率.296、12本塁打)、エンジェル・パガン(打率.293、9本塁打)らを中心に必要な得点は挙げてくるのではないか。

そんなジャイアンツにとって、9月1日からのロードでの10連戦がポイントになる。この10戦を勝率5割以上で乗り切れれば、今年もプレーオフに向けて怖いチームになるだろう。しかし、もしもここで崩れることがあれば、一時代の終わりを感じさせる意外な結末を迎えることもあり得る。

名門カージナルスの底力

名門を支えてきたヤディアー・モリーナ(打率.289、5本塁打)、ジョニー・ペラルタ(打率.248、6本塁打)、アダム・ウェインライト(9勝8敗、防御率4.53)といった重鎮たちに、もはや全盛期の力はない。

現時点でマット・ホリデイ(打率.242、19本塁打)、マット・アダムス(打率.249、12本塁打)、アレドミス・ディアス(打率.312、14本塁打)、マイケル・ワカ(7勝7敗、防御率4.55)ら複数の主力が故障者リスト入り。

一発のあるアダムスの復帰も待たれるところだ〔PHOTO〕Gemini Keez

しかし、それらすべての誤算の後で、ワイルドカード圏内にいることがカージナルスの底力を物語っているのだろう。

マット・カーペンター(打率.283、17本塁打)、ブランドン・モス(打率.261、25本塁打)というベテランを軸に、スティーブン・ピスコッティ(打率.276、20本塁打)、ランドル・グリチャック(打率.230、19本塁打)、ジェッド・ジャーコ(打率.246、24本塁打)のような無名の実力派たちが周囲を取り囲む。

26本塁打以上の選手は不在にも関わらず、本塁打数はナ・リーグ1位。投手陣では元阪神タイガースの呉昇垣(14セーブ、防御率1.70)がクローザーとしての地位を確立するなど、多くの選手を登用してサバイブを続けてきた。

先発投手陣は駒不足だけに、今後はカルロス・マルチネス(12勝7敗、防御率3.07)、ウェインライトという2人の柱の働きが重要になる。層が厚く、勝ち方を知ったチームだけに、終盤に大きく崩れる姿は想像し難い。

アダムス、ディアスらが復帰予定の9月に再びペースを上げ、カージナルスが6年連続のプレーオフ進出を果たす可能性は高いのではないか。

スーパースターの復活が待たれるパイレーツ

7月末のトレード期限時点でワイルドカードまで4ゲーム差につけていたにもかかわらず、パイレーツはフランシスコ・リリアーノ(ブルージェイズ)、マーク・メランサン(ナショナルズ)、ジョナサン・ニース(メッツ)を次々と放出した。経費削減が主目的であり、今季のプレーオフ争いは諦めたと取られても仕方あるまい。

7月は14勝10敗、8月は15勝12敗とパイレーツは健闘を続けている。エースのゲリット・コール(7勝9敗、防御率3.55)が右肘を痛めて故障離脱したが、ヤンキースでは影の薄い存在だったイバン・ノバが移籍後の5試合で4勝0敗、防御率2.87と活躍。

チームで10勝以上を挙げた投手がゼロ、打線も本塁打数ではリーグ12位とパンチ不足ながら、しぶとく戦線に残ってきた。

今後、ポイントになるのはミステリアスな不振を囲ってきたアンドリュー・マッカチェンの状態だろう。今季は打率.248、18本塁打と低調だが、8月は14打点、OPS.810と向上気配。過去4年は常にMVP候補となる働きを続けてきたスーパースターが9月中に完全復活しない限り、パイレーツの逆転でのポストシーズン進出は想像し難い。

マッカチェンの不振はパイレーツの誤算だった〔PHOTO〕Gemini Keez

野戦病院からの“ミラクル・メッツ”なるか

昨季はワールドシリーズに進んだメッツだったが、今年は春先から故障者に悩まされてきた。開幕戦に先発した9人のうち、デビッド・ライト、ルーカス・デューダ、ニール・ウォーカー、ファン・ラガレス、マット・ハービーの5人はすでにケガで今季終了。

9月突入時点でスティーブン・マッツ、ザック・ウィーラーという先発投手たちも故障者リスト入りしており、“史上最高のローテーション誕生か”という期待もすでに吹き飛んでしまった。

さらにトレード期限に獲得したジェイ・ブルースも移籍後は打率.183、2本塁打と極度の不振。これほどの誤算を経験しながら、主砲ヨエネス・セスペデス(打率.298、27本塁打)が故障者リストから戻ってきた8月19日以降、メッツは9勝3敗と意外にも上り調子で8月を戦い終えた。

今季もMVP級の働きを続けるセスペデスはメッツをミラクルランに導けるか〔PHOTO〕Gemini Keez

「多くの故障者と苦難に見舞われながら、ここまで粘ってきたことを誇りに思うと選手たちに伝えたよ」

テリー・コリンズ監督はそう胸を張ったが、実際に昨季のナ・リーグ王者は必死のやりくりを続けてきた感がある。

先発ローテーションにルーキーを2人も登用している状況下で、9月も苦しい戦いを余儀なくされるだろう。セスペデス、復帰したホゼ・レイエス(打率.292、4本塁打)を中心とした打線がどれだけ援護できるか。

救いは今季最後の25試合中19戦は低迷中のフィリーズ、ブレーブス、レッズ、ツインズと対戦すること。そして、通称“ミラクル・メッツ”は伝統的に苦境時に良いプレーをするチームだけに、あるいは……。

起爆剤がほしいマーリンズ

今季は近年最高の勝率で健闘していたマーリンズだったが、8月13日に主砲ジャンカルロ・スタントン(打率.244、25本塁打)が故障者リスト入りして以降は打撃不振に陥った。8月は平均3.5得点のみ。おかげでこの月は10勝18敗と崩れ、ワイルドカード圏外まで転落してしまった。

9月1日までのメッツとの大事な4連戦中には、先発投手のデビッド・フェルプス(7勝6敗3セーブ、防御率2.52)、マルセル・オズーナ(打率.268、22本塁打)も故障離脱。不運の連鎖はもうとどまるところを知らない。

「(8月は)上手くいかなかった。気持ちを切り替えて、先に進むしかない。今は良い気分ではないが、3~5日後には変わっているかもしれない。物事はすばやく変わり得るんだ」

ドン・マッティングリー監督はそう語っているが、42歳のイチロー(打率.294、0本塁打)、ジャーニーマンのジェフ・フランコーア(打率.255、7本塁打)らを先発起用しなければいけない状況では苦しい。

オールスターまでは規定打席不足ながらチーム最高の打率.335を残していたイチローも、8月は打率.209(67打数14安打)と失速気味。個人としては2012年以来となるプレーオフでのプレーに赤信号が灯っている。

現役最年長野手のイチローは今秋に力を振り絞れるか〔PHOTO〕Gemini Keez

マーリンズにとっての希望は、ホセ・フェルナンデス(13勝7敗、防御率2.79)というリーグ屈指のエースを擁していること。その大黒柱以外に投手陣からあと1、2人のラッキーボーイでも出現しない限り、逆転でのポストシーズン進出は極めて難しいのが現実だ。